第2話 アソコに白い粉
賢人は社会人になった先輩から「学生時代に付き合っていた者同士がゴールインするのは稀だ。お互い違った世界、生活リズム、話題、価値観が変わるからな。通常、学生時代より長い時間を就職先で過ごす。交際範囲も出会いも狭まる。玉の輿はないだろうけど、時間が合い、仕事の内容が互いに理解できる関係がこのましくなるからな」と言われたことが、今、身に染みて理解できた。
賢人と鳴海は、卒業と同時にお互いの道を進むこを選んだ。賢人は、仕事に馴染むことと仲間との交流に力を入れ、社会人一年生を謳歌していた。綺麗な花に蜜を求めて群がってきた蜂たちも輝かしい栄冠を失った鳴海の今は、既に過去の人であり、夢は醒め、またもや目的のない日々を過ごしていた。一人になって思う事。それは、堅実な賢人の生き方だった。身の程を誤って過ごしていた華やかな時間は今、質素で虚しく、孤独な時間となっていた。
「これが、失恋か…」。自炊に疲れ、コンビニの割引弁当か酒と肴で一人寂しく夜食を取り寝て、疲れが抜けきれないまま出勤。そして、また同じ夜を迎える。飲み会に誘ってくれる仲間はいたが乗り切れず消極的になり、その誘いも昨今、なくなっていた。失った代償は大きく、ふさぎ込む日々を繰り返していた。
「虚しい…」
失恋と目標を見失った鳴海。堅実にを小馬鹿にしていた自分への嫌悪感。寂しさを紛らわすために鳴海は、ワンナイトの相手を求めるためマッチングアプリに登録した。出会ったのは岩倉和馬、フリーターだ。金はないが時間はあった。男性の第一印象は、ミステリアスだった。無意味に刺激が欲しかった。単調な時間を変えたかったから。正常な感覚では、見向きもしないか警戒して遠ざける存在だった。ワンナイトの相手だ、気にしない。その男性が、鳴海の人生を大きく変えるとは、その時は想像もしなかった。
実際に遭うと陽気で自分を大切に扱う優しさを感じた。正しくは、寂しさの闇に差し込む一筋の光に思えた。彼の家に行き、肌と肌、体液を交えると、束の間でもひとりではない実感に懐かしさを覚えた。体を許し合う関係は、心の融和の錯覚を鳴海に見せていた。ことを済ませて暫くすると和馬は、落ち着きなく部屋をウロチョロしたり、鍵がないとゴミ箱をひっくり返して探す。その様子を鳴海は、悪戯好きの猫が戯れているように見ていた。心地よかった。
鳴海は、その男の家から会社に、そして和馬の家に。そうこうして、四日が過ぎた頃、酒を酌み交わしてセックスした後、男から煙草を勧められた。やけにむせるし変な匂いがするなと思っていると頭がクラクラとしてきた。最初は、いつもよりアルコールの周りが早いな、疲れのせいかな、と思っていた。気持ちが大きくなっていた。体がふわふわしてきた。和馬が望むままセックスに興じた。和馬は媚薬だと言って、鳴海の息づく鮑に白い粉を塗った。股間が疼くように熱くなりひくひく波打つ。肉棒が抜き差しされる摩擦感が異常に繊細且つ刺激的に感じられた。衰えることなく鳴海の秘境を抜き差ししする和馬の行為に、幾度となく絶頂感が脳天から突き抜けるような快楽を覚えていた。汗と体液の混じり合う行為は、四時間にも及んでいた。その後強烈な睡魔に襲われ、目覚めると善悪の判断力が明らかに落ちていた。
倦怠感が凄まじかった。和馬は「肉体疲労にいい薬がある」とテーブルの上に線を引くように置いた白い粉を「鼻で吸うんだ」と言われた時、「あ、これってヤバいやつだ」と思った。和馬がパイプを取り出して覚醒剤を炙りだしたときは、違法薬物だと感じつつも鳴海は、なすがままに吸ってしまった。大麻を吸わされ完全にキマッて、セックスに及ぶキメセク。毒を食らわば皿までではないが、薬物と快楽により、善悪の判断力は、既に崩壊していた。
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