婚約破棄から始まる悪役貴族の冒険者生活~女性向けのゲームに転生して婚約破棄した俺は原作要素を全て無視して最強の冒険者を目指しますわ(関西弁)
にこん
第1話 婚約破棄ですわ
俺は前世の記憶を突然思い出した。
本当に唐突なことだった。
そして自分がよくあるような婚約破棄ざまぁをテーマにしたゲーム世界に転生した事もすぐに理解した。
しかも転生先が婚約破棄する側のラインハルトという貴族の男に転生したことも分かった。
俺はこの世界の原作の話を全然知らないはずなのに、なぜか理解できていた。
そして目の前にいる女が婚約破棄する相手の貴族令嬢で仮面を顔につけたカレリアという女。この女に言う言葉も理解していた。
それは
「婚約破棄、ですわ」
「は?」
理解していなさそうなカレリアに続ける。
もう一度ゆっくりと。
「カレリア。お前との婚約を破棄する」
俺はカレリアとの婚約を破棄した。
「な、なぜなのですか?!ラインハルト様?!」
「お前が醜いからだ。お前が仮面を外さないのはその仮面の下が醜いからだろう?そんな女とは婚約を破棄したいからだ」
用意されていた言葉を話した。
というより勝手に口が動いていた。
俺の意思と反して。
俺はこの世界の原作の話を細かくは知らないけどなんとなくわかる。
『仮面の下の顔が醜いなんて誰が言いましたか?』
最後にはそんなことを言われて俺は無様に没落するのだろう、ということはなんとなく分かったけど
俺の体は用意されていたセリフを勝手に読み上げてしまっていた。
まるでここまでは導入部分だから必ずやるように、と強制されているようだ。
「ラインハルト様、そのようなお方だったのですね……」
「好きに思え」
そこまで俺の体は勝手に喋ってしまった。
その時にピクリと指先が少し動くのを感じた。
(あれ……もしかして体が動く?)
俺は自分の指を自分の意思で動かせることを確認すると、このパーティ会場を後にすることにした。
パーティの途中で行われた婚約破棄に参加者は全員驚いているようだった。
もちろん、俺もそんなところに長居できるような肝の据わった男では無いので足早にパーティ会場を後にした。
今日は貴族が定期的に集まって開かれるパーティの日らしい。
開催地は王城だ。
「ぜぇ……はぁ……おいおい、どうなってやがる」
外に出て俺は庭園の噴水のフチに手を付き揺れる水面を見ていた。
仮面の下がどうとか心底どうでもいいんだけど。興味無いんですわ。
「ったく、何が婚約破棄、だよ。どうなってんだよ」
転生したのは理解出来たが、なんでこの男の俺が女向けの世界に転生してんだ。
俺はこんな世界にもっとも似合わない男だろうが。
生まれてから30年、乙女とは無縁の存在だったんだがな俺は。
「ってか、何してたっけ?俺。あぁ、たしか過労死したんだっけ?」
俺の前世はなんの変哲もないただの関西出身の太り気味の冴えないおっさん日本人だったんだが。
もう30も越していて若干メタボリックになっていた俺の腹は見る影もなく、ラインハルトという美形の体になっていた。
「イケメンなのは構わねぇがよ」
さっきから俺のことをジロジロと見てくる人々がいた。
途中でパーティを抜け出してきた俺が気になるのだろう。
そのどいつもこいつもがアニメや漫画で見掛けるような育ちの良さそうな貴族みたいな格好をしている。
なんだこれ。
めちゃくちゃ気持ち悪い。
自分が場違いなせいなのだろうなこの嫌悪感は。
それもそうか。
生まれてから乙女ゲーなんて触ったこともないし女向けの漫画とかも見たことねぇおっさんがいきなりこんなメルヘンな世界に来てるもんな。
「俺にはこの世界は合わねぇな。なにが婚約だよ。勝手にしてろ。俺を巻き込むな」
そう言い残して俺は自分の家に戻ることにする。
記憶を思い出す限りだが俺の家の執事が俺をここに連れてきたらしい。
そしてその執事はまだ王城の外で待っているそうだ。
「はぁ……帰って酒飲んで寝てぇ」
原作のラインハルトなら到底言わないであろうようなことを口にして俺は王城の外に出た。
するとそこには記憶通り馬車が一台止まっていた。
「ラインハルト様。パーティの方は?」
「あぁ、終わりだよ終わり」
俺の婚約破棄で終わったよ、とは言わないがそう言い残して馬車に乗り込もうとしたら、タッタッタッと走る音が聞こえた。
そちらを見ると金髪ツインテールのいかにも性格が悪そうな顔の女が立っていた。
はたから見たら俺も性格悪そうな顔なのかもだが。
あー。
それよりこいつはたしか……俺の不倫相手のアーククリーナーとかなんかそんな名前のやつだったっけ?
なんか掃除道具みたいな名前のやつだな。
「ら、ラインハルト様私のことを忘れないでくださいまし。今日は私を可愛がってくれるお約束でしたわよね?」
そう言ってくる女に目をやる。
たしか原作だと、俺はこいつと不倫していてその婚約の邪魔になったからカレリアとの婚約を破棄したらしいけど。
知らねぇんだわ、俺はそんなこと。
なにも言わずに馬車に乗り込むと、女も続いて乗ってこようとしたが
「誰が乗れ、言うた?」
「え?」
女と執事が俺を驚いたような目で見てくるが構わず続ける。
「今日はもう寝てぇんだよ俺は。とっとと自分の家に帰りな?」
「え?」
「出せや執事」
「で、ですがラインハルト様……」
「出せ。なんべんも言わせんでくれや。頼むで」
足を組んで癖で頭をガリガリ掻きむしるが、若さだろうか。フケが出てこない。
育ちの悪さが出ている気がするが、俺は一般日本人のおっさんだからこんなものだろう。
そんな俺を馬車の外から呆然と立ち尽くして見ている女。
金髪碧眼の文句なしのイケメンのラインハルトという男がこんな育ちの悪さを出しているから言葉が出ないように見える。
俺もこんな育ちの悪そうな貴族のイケメンなど創作でも見た事ないし。
「か、かしこまりました」
執事はそう言って馬車を走り出させた。
ポツンと取り残された浮気相手を横目に軽く見て俺は執事と二人自分の豪邸に向かった。
乙女ゲームーブしてください?
するわけないんだよなぁ。これが。
小さくなる女の影を見ながら俺は呟いてみた。
「ステータスオープン」
──────────────
名前:ラインハルト・フォン・アドミラル
年齢:12歳
レベル:1
攻撃力:1
防御力1
魔力:10
体力10
──────────────
確認した俺は決意する。
(この乙女ゲーのシナリオ思いっきり壊したりますか)
乙女ゲー展開?
もちろん!
全部笑ってお断りですわ!
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