Phase 01 夜の顔
「おい、薫、目を覚ませ。仕事の依頼だ」
僕は、
「薫、いいか。これが今回の依頼人だ」
拓実が僕に紹介した女性は、今にも死にそうな顔をしていた。拓実の話によると、どうやら彼女は違法薬物を使用している疑いがあるとのことである。
「あなたが、『歌舞伎町トラブルバスターズ』のリーダーである
「そうですか。確かに僕の名前は鯰尾薫と言います。三笘さん、僕たちが解決出来る事件には限りがあります。そして、薬物を使ってしまった以上君は警察に捕まることになります。それでもいいんですか?」
「いいんです。どうせ私はキャバ嬢失格ですから」
「そうか。なら、交渉は成立だ。ところで、君は何歳だ」
「あの、18歳ですけど……」
「18歳でキャバ嬢か。随分と訳ありのようだな。まあいい、僕たちに任せてくれ」
「ありがとうございます!」
こうして、僕は厄介な依頼を受けるようになった。まあ、僕たちが受ける依頼に厄介もクソもないのは分かっているんだけれど。
「それにしても、あんな依頼を受けて良かったのか」
「あの、鯰尾さん。弱ってる人を助けるのが僕たちの役割じゃないですか」
「そんな事を言われても、彼女は
「まったく、鯰尾君は分かっていないなぁ」
「あぁ、律か。一体何の用だ」
「トラブル依頼システムの改修を任せたこと、もう忘れたんですか? つい1週間前のことですよ?」
「すまない。僕は2日間しかその記憶を保つことが出来ない。だから、事件の依頼を受けるときも拓実にメモを取るように頼んでいる」
「そういえば、そうでしたね」
「律、その話はもうしないでくれ」
「はいはい、分かっていますよ」
僕は幼い頃から
しかし、それ以外の記憶は覚えていない。だから、僕は映画監督になることを
「拓実、今回の依頼と依頼者の名前はメモを取ったのか」
「もちろん、取ってありますよ。依頼者は三笘直子。年齢は18歳で、職業はキャバ嬢。恐らく歌舞伎町で働いているものと思われます。依頼としては『変な薬を使ってしまったから薬の成分を調べてほしい』とのこと」
「なるほど。しかし、錠剤を見ると恐らくMDMAである可能性が高いな」
「鯰尾さん、見ただけで分かるんですか?」
「ああ。これは飽くまでも直感だが、彼女はMDMA依存症である可能性が高い。どこで薬を入手したか、ルートを調べる事は出来ないのか」
「それなら僕に任せて下さい」
「律か。君なら何かを掴めるかもしれない」
「鯰尾君。実は、僕の元にこんな依頼が寄せられたことがあるんですよ」
「どんな依頼なんだ」
「なんか隠語を使っていてよく分からないんですけど、確かウェディングケーキがどうたらこうたらと言っていたような。そして『手押し』という単語が頻繁に出てきたんですよ。要は、その『手押し』と呼ばれる業者を突き止めてほしいという依頼でした」
「そうか。もしかしたら、律が追っている依頼と今回の依頼は裏で繋がっている可能性が高い」
「鯰尾君、それはどういうことなんですか!?」
「要するに、『手押し』と呼ばれる業者が三笘直子にMDMAを売り
「そ、それは拙い! 一刻も早く何とかしなければ」
「そうだな。しかし、まずは情報収集だ。拓実、僕は2日間しか記憶が保持できないから君が頼りだ」
「鯰尾さん、分かってますよ。とにかく、僕に任せて下さい!」
こうして、僕たちは歌舞伎町に蔓延る薬物汚染を突き止めることになった。
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