51話 ドラゴン
「嘘だろ……あれは」
「ドラゴン!!」
「十二支だからそりゃいるわよね」
「あれより上が4ある方が驚きやわ」
関心している場合ではなく空を黒い竜が飛び回り口から炎を吐いている
こんな所で服を黒焦げにされたら火傷よりもそのあと凍死してしまう
口を大きく開けた
「全員雪の中に隠れて!!」
『ギャオオオオオオッ!!』
飛び込むのが間に合い炎で服を解かされずに済んだが地面が燃え盛っている
ゲームの世界なので原理もなにもない
しかし次をされる前に何とかしなくては
「目ぇ多いなあいつ!!」
「よくみたらキッショイわねあの竜」
それを聞いてもしやと思った
「暗がりににする必殺技!!早く!!」
『ブラックバーン!!』
暗闇に包まれて何も見えなくなる
だがそれは向こうも同じ
思っていたのと違い自分が触れたものは見える暗闇であり
スマホを見ることが出来た
「全員ローブ離さないで!!急いでここを脱出する!!」
「慌てすぎるなよ、足元が暗いうえにこの山は谷底だってあんだから」
「ごめん」
何とか今までより急いだペースで山を下りていく
真っ暗なのは厄介だが炎を浴びせられるより多少はマシだ
効果切れになった時にドラゴンの姿は見えず
「今のうちに急ご……うわっ!?」
足を滑らせてしまいクレパス(谷)に落ちた
幸いだったのが非常に幅は狭くて奥まで行かなかった事
中途半端な場所でなんとか踏みとどまる
「兄さんおちたで!?」
「タロウ!?」
「兄さん!?」
どうにか生きていると返事をしてロープを垂らしてもらい引き上げて貰った。
最悪なパターンをやらかした
足に走る激痛に唸り声をあげる
「足が折れてるじゃないの!?」
「いやこれぐらいならこうして」
「痛ッ!?」
「サーカイフ!!」
かなりの荒療治で治療され
どうにかそれで先を急いで下山出来た
次の山も雪山なのは分かっていたが
「かなり雪は少ないわね?」
「でもこの山さえこえてまえば100レべの山にたどりつけるで?」
「最後の上がり方がえぐいわ」
「……でもその前にコレを上る訳か」
岩ばかりというか1M程度のブロックで作られた積み木のような
明らかに人工的な山にたどり着き
困惑しながらも登っていく
「天気がいいうちに―――!!」
「あれウサギじゃね?」
『気を付けてくれ主人たち!!あいつはドラゴンよりも上―――』
その訳はすぐに分かった
遠くに見えたウサギは数匹いて山をものともせずに飛び跳ねて下りてきた
一匹だけスコップでガードしたが一撃が重い
「でも、打撃ならッ」
「数と打撃で押してくるなら数を減らせばいいってもんよ」
ヒロが剣で次々とウサギを切り
あっというまに全てを
『お、俺だ!!』
「すまん似てたから切りかけた」
『いや俺もあいつらをモデルに造られているし』
「でもあいつら4足歩行でどついてこーへんかった?」
「二足歩行はお前と、よし覚えた」
ウサギのモンスターがいなくなりまずは頂上を目指してとにかく上る
穴よりも縦につまれたブロックのような箇所が難しく
高さ4mほどでどうにか梯子とピッケルの合わせ技で登り
「うげっ!?」
梯子を上に引き上げている最中にヒロの声
何かとみれば何も見当たらないが
次の瞬間にはブロックが落ちて来た
「ラーク(落石)!!」
石の破片ならともかく1mはある立方体の岩が降り注ぐ
上の方から次々と落ちてきている
よくみれば上空には竜
「あいつ!?」
「でもあの位置なら……梯子とれたよ!!」
皆で進むが竜の吐いた炎がブロックをくずしていた
そしてこちらに向かって降ってくる
最悪な位置にクリスがいた
「クリス!!」
「これっ」
荷物だけを投げてクリスは石と共に山を真っ逆さまに下りて行った
叫び声もすでに聞こえない
彼女が背負ってた荷物をヒロが抱えた
「あれ実際には死んでないんだろ!?」
「うん!!」
「なら進むぞ!!」
山頂まで来てテントを張って箱に触れた
怖いくらいに周辺がまっ平で
出てきたのはガスコンロのガス
「外れ……ね」
「死んで無い事は分かっているのに酷く嫌な気分」
「あそこから助かってた方が地獄だと思うがな」
「そうね」
さきほどまで晴れていた空は突如吹雪に変わった
これで先に進むのはかなり険しいと言える
山自体が思ったよりも低くて助かったが
「4人、でッ」
「しっかりしやがれ!!まず火で身体を温めねーと俺たちも凍え死ぬ!!」
「そうだねッ」
ガスコンロでお湯を沸かして全員でスープを飲む
冷えた身体が温まっていくが思ったよりも外が寒かったらしく
彦星の指先が凍傷になっていて、さらに
「……酷いわね」
「あの程度の寒さでやられるとはな」
「ヒロさん!?」
小指に関しては特に酷く
色は黒に変色していた
テントの中をさらに温める
「回復魔法でどうにかなるかしら?」
「出来はするが問題はこの先だ」
「そうなの?」
「こいつの話じゃあと3匹の上級モンスターがいる筈」
「そのうち一匹が外にいる」
トラが外をうろついているがテントに近づこうという気配はない
大きいが何が今までのよりも強いか見ても
いや違う、近くをうろついている訳ではない
でかすぎて近くだと思ったのだ
「10mはあるね、あれ」
「そいつをぶっ殺すにはMPがいるからな」
「別に逃げてもいいと思うけど」
「のこるは牛とネズミ?」
「牛は確かに厄介っていわれれば分からなくはねーけどよ」
「鼠がそんなに脅威になるかしらね?」
のんびり会話している様子に思えるかもしれないが
皆痛みを口に出すまいとして別の話で必死に気を紛らわせていた
さきほどガス缶が出たので彦星は外れと言ったが暖を長くとれはする
「最後の冒険だ」
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