32話 長いお耳


皆が早く起きたせいで早寝して皆で早起き

実際この方が空も明るくて得はする

箱の様子はいつも通りではなく


「なんか、青くね?」


『箱』が青く光っている

今までも確かにへんな箱ではあったが

なんていうかエフェクトが違う

触れると見覚えがある気がする宝石に変わった。


「召喚石!?」

「え、これが!?」

「二人ともそれ何かしら」

「ウチらに教えてぇな」


ゲームをやらない人に教える

この時はコツとして余計な情報を出来る限りはぶくのが大事だ

伝わって欲しい事は―――



「この石で言うことを聞いてくれるペットが増えます」

「へぇ」

「犬とか?」

「ヒロさんが覚えているのはどのようなモンスターでした?」

「ワニだ!!」

「それ召喚して大丈夫なの!?」

「けっこう可愛いけどたまに主人の頭をかじるのがなぁ」


説明が悪く二人が誤解してしまったようだ

ドン引きしている気配がする

説明はラストからが本来すべきこと


「違うんだよぉ!!」

「何がちがうん?」

「召喚獣(しょうかんじゅう)は主人のいうことを絶対にきくので」

「きくのに頭かじってたん?」

「『誰の』を言わずに頭をかじれって命令したキャラがいただけで」

「ロボットの操作をうっかり間違えたみたいな感じかしらね」

「シリーズによっても出て来る子が違うのでなんとも――」

「でもコレ俺は使えねーぞ?」

「何で?」

「これ男用だから」

「ペットに男用や女用があるのかしら!?」

「……召喚は僕が試してみますね、そもそも出来るかどうか」


召喚石を飲みこみパンパンと手を2回叩いた。

胃の中が熱いがそれより煙が立ち上って

やがて今までみた演出の中でも豪華な光につつまれて


『・・・・・・』


二本足で立つ黒いマントと眼帯の兎

強いかどうか微妙な線のモンスター

それよりも意思疎通が出来るかどうか


「僕はタロウって名前です、君の名前は?」

『ウサギ定石(じょうせき)と呼べ』


皆が思っていたのと違う名前だと感じていた。

ティンクとかモモ、ココのようなペットにつける名前なら頷いた

馬のようにキタカゼとかテイオーとか変わり種で早口言葉



「ウサギが苗字で定石(じょうせき)が名前?」

『ジャコウネコやレッサーパンダのようなものだ、苗字は無い』

「薪とか集められる?」

『……』

「え、駄目?」

『命令とあれば何でもする』

「何でもって」

『俺は性格診断で合理主義者になった者が持つ駒(こま)だからな』


召喚獣はそれぞれに役目が違う

何が出来るかどうかはためしてみるまで分からないかな


「なら薪を集めて来て」

『俺は進化AIだから意見も出来る』

「えーと嫌なの?」

『俺の説明書をきいてくれ』

「あるの!?」

『① 進化型AIシステムを採用しているので会話に不自由は無い』


4本指のうち1本を立てる

説明は真面目にきくがその前に皆が思った

姿はモウモフしていて可愛い


『② 必殺技は2種類あってエックスカットとブラックバーン』


実演してみせてくれた

エックスカットは鎌を召喚しエックスXの形に分身して切りつける技

ブラックバーンには周辺をまっくらにする効果だけがある


『基本的にブラックバーンは目くらまし以外に使わないほうがいい』

「何でやねん」

『MPなどの消費はないがモンスターはこの空間を浴びると強くなる』

「それ使わん方がいいやろ!?」

『俺もそう思うがモンスターに囲まれてどうしようもない時に敵を止める事だけなら』


足止めの技であり使うリスクが高いのか

ただし最悪のケースを一瞬だけ離脱可能

下手な使い方はしない方がよさそうだ


「話は分かったが召喚獣ってこんなペラペラしゃべるのか……」

『ああ、だからこそ言うが離してくれ』


ヒロがウサギ定石の顔をモフモフしている

確かにふわふわしていて触りたくなる気持ちは分かる

しかし今は先に聞き出すべきことがあり


「戦闘はこれぐらい?」

『エックスカットも1度使うと俺が1時間ほど動けない』

「2回切るだけの技でか!?」

『……』

「戦闘よりも食料問題のほうが心配やわ」

『俺は食べ物と水を必要としない』

「えっそうなん!?」

「見た目がかなり愛くるしいのだけど力はどの程度?」

『召喚したご主人様と同じぐらいになる』


久利巣にやらせなくて良かった

だが自分と同じ程度の事までなら出来るのは基準が分かりやすい

食料も水も必要が無いなら今の所はプラスだとおもっていい



モフモフ


『ご主人?』


気が付いたらウサギ定石の手をモフモフしていた

ストレスが酷い極限の状態でこんなッ

耐えられないのは仕方ないのでもうモフる


「ご主人様だからモフってもいいよね!?」

『あ、ああ?好きにして構わないが』

「良かった!!」

「……」

『そっちのはモフらなくていいのか?』

「アタシ動物苦手だから」

「なんか意外やな」

「病気でずっと『怖い物』として教わったもんだから今でも認識とれなくて」


ペナルティにギリなったのか

それとも自然に切れたのか分からないが

微かに彦星の指に傷がついていた


「とにかく朝ごはんそろそろ食べよう」

「もう腹ペコやで」

「むっちゃ触り心地いいな」

『ご主人様、俺は探索してこよう』

「えっ危なくない!?」

『俺に死という概念はなく俺が消えたら3日ほどでまた召喚出来る』


そこで朝ごはんを作っている間に周辺を調べて貰う

水を多めにして炊いご飯を皿に盛りつけて

4人で食べるが



「……心配!!」

「合理主義者っていうけど本当なのかしらね?」

「この缶詰めマジでうまい」

「ヒロおねーやんの感じホンマ安心するわぁ」


皆で固まって体力の消費を抑えていると

ウサギ定石が薪を抱えて帰って来た

毛が汚れてしまっている


「くしーーーー!!」

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