30話 引っ越し


朝起きて箱を触るタロウ

青いブルーシートに変わる

本日は引っ越しの終わらせをとにかく急ぐ



「スープ作っている暇ないわね」

「カロリーバーを食べたら即刻ここから降りましょう」


起きて急いで降りる

思ったよりも速足でつけた為に2時間程度で降り切った

まだ10時であり時間だけは余裕があったが


腹の音が鳴るほど食料は不足していて


「もう少し移動すれば―――」

「あれそうじゃないかしら!?」


向こうで手を振る二人

抱き合いたいほどだが今は

とにもかくにも食料が欲しかった


「パンをっ他の食料でもいいので!!」

「すごい腹すかせとるんやな」

「ノビノビのカップ麺があるけど喰う?」

「「食べます&食べるわ!!」」



伸びてしまったカップ麺とやらは空腹を満たしてくれた

腹が少し落ち着いたので改めてパンを食べる

最初に思ったよりも登山はエネルギーを消費する為

食料問題はこれから大きくなっていく気がしてならない


「ウチなんやけどパワーは無いけど体力が結構あるみたいなんや」

「でも重そうなもの背負ってるね!?」


よく見たら久利巣もリュックを背負っており重量がありそうだった

しかし持ってみれば思ったよりも軽く中身は着替えが多かった

重い物はヒロが分割して運んでいるらしい

降りて行くだけなのに時間がかかったのはこれが理由で


「僕らで運びきれそうだ」

「そうね、今日中に引っ越しを完了させちゃいましょう」


二人でヒロでは持ちきれない分の荷物をまとめて

少々重すぎる気もするが全部を急いで運びたかったので少し無理をする事に

4時間ほどで頂上に全員辿り付く


「登り切ったわね!!」

「さすがにウチもお腹が空いて仕方が無いで」

「薪がこんなにあるとはなぁ」

「テントより先にご飯にしようか」


火起こしをしている途中で箱をあける事になり

触れたらチョコレートに変化したのだが

形状が板であり26枚もの量があった


「すごいわバレンタインデーで見るチョコより多いんじゃない?」

「溶けないように気を付けないとね」

「これ、キャンプ場で食べたあの甘い奴か!!」

「全部のチョコが同じ種類やけど今は有難いなぁ」


皆でラーメンを食べたあとは板チョコを1枚の半分ずつ分けて

テントを作り終わったら荷物を片づける

小麦粉などは食料置き場に服は着替えとしてまとめ


「天気はずっとこの程度に雪がふるだけ?」

「はい」

「ならここからは問題が『水』だな」


お茶はあるが既に20缶しか無く

時間がかかる川まで取りに行くのは必須

ここへ登ってくる最中に川へは寄ったが

荷物が多すぎて水については断念していた

雨も絶対に降らない事が分かっているので確保に向かう


「往復でおよそ2時間ですかね」

「ウチは重い物を運ぶんは向いてへんからなぁ」

「アタシとヒロさんで出発しましょう」

「俺は構わないけどヒコ?はタロウをここに残した方がいいって思うのか?」

「少なくとも一人は周辺の地形を把握しているアタシたちのどちらか残すべきよ」


確かにヒロ・久利巣の二人は新たな拠点に辿り着いたばかり

彦星の案を最もだと考え承諾してそれぞれが行動を開始した

久利巣と二人きりだが気まずいなんかよりも


「モンスターが出たらすぐテントに逃げてね」

「分かってるでぇ」


まだ子供な彼女が危険にさらされないか心配で仕方ない

既に1度は手を怪我していたし無茶な行動は避けるだろうが

過信はよくないと離れすぎて後悔しないように近場で動こう


「薪だけはたくさんあるやんけ」

「煮沸は余裕だけど」

「海水を真水に変えるーみたいな仕組みはこの雪に応用できへんかな?」

「確かに雪って解ければ水分だからうまくやる方法はあるかも」


ずっと降っているが地面にたどり着いたら水に変わり溶けてしみこむ

水たまりのようなものは自然に発生しない

しかし現状でアイテムが大量にあるので確保は出来そうで


① 穴を掘る(前より柔らかかったのでスコップで掘れた)

② 掘った穴へブルーシートをかけ土にしみこむのを防ぐ

③ そこら辺の木にビニールひもを結んで先っぽを『水装置』に垂らす

④ ビニール紐の先には綺麗な石などおもりをつける


「こんなものかな」

「水はぜんぜん溜まってる様子あらへんね?」

「これは長い目で見れば貯まるかもしれないものだからね」


やがて二人が無事に帰ってくる頃には

ほんのわずかにうっすらと溜まっていた

効率が悪くとも一歩


「いや改良しないとダメだな」


あっても無くてもほとんど変わらないのでは意味が薄いのだ

飲み水でなくても洗い物が多少出来るぐらいの水が欲しい


「何しているのかしら?」

「雪で水を作れないかとおもって」

「確かに往復作業は困難よね」

「そこまで重くはねぇが距離が遠いからな」

「食料より水は使うし――あっ箱が出ているわ!!」


触れた瞬間にラップへと姿をかえた

もちろんYOYOいってるアレではなく透明なフィルム

かなり有難い、というのも食器を洗う事すら今は水が貴重

3本もあればかなり使い道は多い


「このラップで水集め装置を巨大化する事が出来るんやない?」

「確かにやってみる価値はありますね」

「でもそれ穴の大きさ足りなく無いかしら?」

「んじゃーもっと掘るか」


こうしで出来上がった装置はすぐ見て変化が分からず

しかし薪集めや拠点を整理整頓していれば

先ほどよりは貯まるスピードが速い

少々濁っている様子はあるが


「身体を軽く洗う程度なら出来そうだね」

「タロウ何か雰囲気が変わったか?」

「え」

「でも何かすっげーしっくり来るぜ」

「アタシもよ」

「ウチも何だか安心するわ」

「頼りにしていいからね!!」

「タロウさん詐欺とか気を付けた方がいいぐらいのチョロさやんけ」

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