19話 スマホ


どんぐりを炒めるのは彦星に任せて自分たちは一度水を運ぶことに

貯めていた水はろ過して使って来たが汚れがひどく

雨で土が染み出しぬめりを帯びていた

ここまで来たらいっそ全てを新しくしようと皆で話し合った



「雨がふりつづいていましたが川は?」

「でかい池なら飲んで問題は無さそうだ」


ヒロがつけた目印を頼りに大池にたどり着く

雨の影響でそこそこ濁ってはいるが

泥は底にしずんでいるためかき混ぜなければ充分に綺麗な水は確保できた


「戻りましょうか」

「変な記憶があるんだ」

「え?」

「あの男が野宿?の最中に大やけどしてな」

「やけどってどこを」

「左側は痕が残ったような気がするし白い化け物が来た」

「白い化け物?」

「頭に赤い光があって光っていて機械っぽい」

「モンスター?」

「いや誰も逃げたりしないしベッドが中にあって」


白くて機械的でロボットのようで赤い光が上部に

さらに『患者』がいる状況

思い当る事が一つだけある


「救急車?」

「きゅーきゅーしゃ」

「こんな音ではありませんでしたか『ピーポーピーポー』」

「気もするけど」


戻ってきたらどんぐりがそこそこ炒り終わっていた

さらにまだ熱いうちに彦星は殻をむいていたのだ

顔に火傷をした者が手袋がっても多少無謀な気がする


「おかえり」

「ただいまです」

「どんぐりは沢山とれたかしら?」

「バッチリ」


殻がむけたドングリの方は煮て貰い

土汚れがひどくなったろ過装置の水を一旦出して捨てて

雨が降れば溜まるように

今度はビニールシートで穴の全てをカバーして土汚れが入りにくくした


「これでいいかしらね」

「けっこう長い時間煮る必要がありますから」

「そうなの?」

「30分ぐらいですね」

「分かったわ」


その間にまた水の為に往復してきた

既にかなり暗いが印とソーラーランタンがとても役に立つ

二人で動ければマップもあり


戻ってきたら彦星はスマホを見ていた


「あらお帰りなさい」

「それって」

「火からちょっと目を離したのは良くなかったかしら?」

「どうして黙って」

「いや俺がいい損ねただけで最初から持ってたぞ?」

「あ、そう」


確かに現代人がスマホいじってるの普通か

マップの事もあるし他の場所を確認した?

信用を完全には出来ないのがもどかしい


「一つ聞きたいのだけどここのレベル上げたでしょ?」

「レベルアップで何が起きるか分からなかったので」

「他にもレベルが上がった場所があるの」

「え?」

「隣の山みたいよ」


確認をするか否か

プレイヤーかどうかも分からない

彦星が知る情報次第で動きが変わる


「知っているかどうかは聞けなくても方法はある」

「何かしら」

「このレベルアップした人物は味方か否かどちらだと思う?」

「アタシの『推測』が正しければ味方よ」

「会って攻撃される事は無い?」

「向こうが持つ記憶によるとしか言えないわ」


自分も記憶が曖昧で彦星の事は微かにしか思い出せない

だが皆が何か知り合いだったのは大きな情報だ

スマホでSNSの連絡先を確認するも彦星の名前は無い


「彦星さん」

「何かしら」

「小麦粉あるんですが」

「え!?」

「これを混ぜて焼くとフライパンが焦げます」

「そうね油が無いと小麦粉料理は難しいわ」

「何か小麦粉を食べるいい方法ないですかね?」

「うどんを作るとか?」


3人で茹で上がったどんぐりを腹に入れた

たべれはするという代物でそこまで美味しくは無い

しかし腹が満ちるという意味では十分


「うどんって何だ?」

「えーと小麦粉に塩水を入れて丸めて細くしてゆでたもの、ね」

「それ喰えるのか?」

「僕は食べ物だと分かりますが1袋しかないので失敗できないです」

「あとは『すいとん』なら失敗しないわね」

「何だ?」

「小麦粉を練って茹でる料理でうどんと違って麺にする必要が無いわ」



わずかな光が見え箱が出現していた

触れば不思議なことに『パンを掴むアレ(トング)』に変わり

皆の所に戻れば


「あらトング?」

「火ばさみじゃねぇか」

「確かにどちらにも見えるわね」


火バサミは焚き火の炭などを掴むための物で

結構便利だがキャンプ場に置いて来た(かさばるから)

役にたちはするが微妙な道具だ


「この時間になると暗くてドングリを探すのには向いてないですね」

「水を運ぶのはどうかしら?」

「夜に川の傍へ近寄らないで下さい」

「なら今夜はどうするの?」

「薪を軽く集めたら寝ます」


食料はどんぐりがあるし暗い時に動くのは

何よりもモンスターが危ない気がする

MPは現在節約しなければならないし


「分かったわ」

「あとテントで3人寝るの狭いので」

「分かったわ向こうのテントで寝ればいいのね?」

「そうだけどそうじゃない」

「え?」

「僕ってか男が女の子と同じテントなの不味いでしょ」

「ぶふっ」


オネェだから女子と同じにしたほうがいいとかいう文句なら分かる

なんで僕は笑われたのでしょうか

自覚は無いが変な事を言った?


「あなたがそうしてほしいならそれでもいいけど」

「俺だけ1人で寝るの寂しいんだが」

「えっ」



何故か結局は彦星だけ旧テントで寝る事に

想定していたどちらのパターンでも無くて困惑である

ヒロさんが自分の事を子供だと思っている可能性?


気が付いたら朝というのはいつもの事だが


「あ、起きた」

「顔が近いです」

「今ヒコボシの奴と箱を確認したんだけどさ」

「何か変な物とか不利益になるもの?」

「とにかく見てくれよ」


前にレベルアップした時と同じような紙

表にはQRコードが描かれて裏には『スマホスキル1UP』の文字

自分はこれについて詳しくは無いが彦星に聞いた


「知っているか知らないか、で答えて欲しい」

「んー『知らない』けど悪い事は起きないって推測ならあるわ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る