16話 拠点


迷子というのは実はこの世で古くから恐れられていた事だ

夜の森は迷う何て言葉は半分正解で半分不正解である

勿論だが暗い場所は迷いやすいが明るくても森は方向感覚が狂う


「よしっ」


本来はゴミ出しなどに使うビニールヒモだが

その軽さと頑丈さは実際の山でも遭難防止に使われたりする

1度木に縛り付ければ中々これは取れる事が無い

徐々に山を下りていき地面に枯木が多く落ちる場所へ来た。


いくつか持って拠点へと戻る


「あの雨続きですから湿っていますね」

「どうするんだ?」

「雨がふっても使えるように元々のテントに入れていきます」


しばらくはシルシと薪の調達をやっていた

力が無いと言っても今は食べ物を食べた男士高校生の身体

それなりの量の薪を集める事が出来た。


「これだけあれば雨があってもなんとか―――そうだ」

「どうした?」

「雨でも使えるかまどが要ります」

「テントの中で焚き火したら燃えるもんな」


無理に食料であるどんぐりを取りに行くよりも

かまどを作る事などを選択した

というのもろ過装置のろ過した水を洗濯に使ったりして

他にも片づけなければいけない問題は多かった。


「そうだブルーシート!!」

「ほう」

「ブルーシートを屋根にしてそこで焚き火をします」

「どうやって?」

「今はビニールヒモがありますからこれで木にくくりつければ」

「確かに屋根だけでいいなら出来はしそうだな」


やってみると長さなどの問題はあれど形にはなった

結局落ちていた太い枝をシャベルで穴を掘り木が足りない場所に刺し

焚き火をするだけならば多少の雨を凌げるような形

強い風などがふけば消えるかもしれないが



「あっ箱が出たぜ」

「確認してみましょう」

「なんじゃこりゃ?」


大きさは縦が20cm横が10cm程度

蓋のような黒い部分にはソーラーパネルらしきものがついていた

底には電源ボタンがついたので押してみた。


明るくなる


「これランタンですよ」

「ろうそくを入れる奴?」

「ではなく太陽光発電の―――えーと太陽の光をMPに変えて光り続ける道具です」

「そんなものが!?」

「懐中電灯ではすぐ電池が無くなる恐れがあったので悪くないですね」


拠点が明るければさらに戻りやすくなるし薪も拾いに行きやすい

食料ではなかったし1日の太陽光でそれほどの時間使用可能か分からないが

夜の間に拠点を照らしておければ出来る事はかなり増える

今までも考えてはいたのだがスマホを使えば地図機能が使えず

懐中電灯では二日間を照らす程度がやっとだろう


「便利なものがある世界なんだな」


あなたもその世界の住民だと思う

けどそういった所には今は触れないでおく事に

たとえばお年よりで『空襲がくる』と騒ぎ立てる人には

そんなもの無いというよりもでは一緒に防空壕へ逃げましょう

と言って落ち着かせる方が良い時もあるのだ


「そうですね」

「この後はどうする?」

「しばらくここにとどまっているのが正解です」

「理由聞いても?」

「何より『箱』の存在が大きいですね」

「俺もここにとどまるのは賛成なんだ」

「賛成理由は?」

「食料と水がこれだけある場所を探すのは困難だ」

「でもいずれは『クリア』しなければなりませんね」


自分がゲームの中にいるならばクリアすれば終わりそうである

だがその為にはまずレベルを上げ装備をととのえる

整え終わる前にゲームオーバーにならないのが今の目標だ


「クリアってのがどうして大事なのか俺には分からない訳だが」

「これ説明するのは難しいですし当分の間はここから動かないという事に賛成です」

「もし移動したいならここに戻ってくる事を視野に入れる、いいな?」

「はい」


二人しかないので意見違いはなるべくしたく無い

どうしても譲歩できない事でも意見はすり合わせる

喧嘩になれば最悪中の最悪

なので大反対が起きればなるべく譲歩

彼女が『まだ条件がそろって無い』と判断したなら拠点にとどまるのがベスト

現状で最も避けたいのは仲間割れだ



「そろそろ日がくれてくるな」

「洗濯物の様子どうですかね?」

「まだ少しだけ濡れてる気配はするな」

「ならもう少しだけ干しておきましょう」

「分かった」


ヒロも意見を分かれさせたくない様子で

とにかく対立を避けているのが分かる

雨続きで湿った木々は重かったが運び続けた


「俺もそろそろ運ぶか」

「決して無理はしないで下さいね」

「勿論そのつもりだから安心しろ」


やがて太陽が沈み夜の気配がし始めたので洗濯物をとりこんだ

泥だらけだった着替えが水だけでもかなりサッパリし

あっという間に暗くなる拠点

ソーラーランタンの電源を入れた


「なんだこれ明る!?」

「今日はつけっぱなしにしてどれぐらいもつか見てみましょう」

「分かった」



また箱が出現したので確認する

100円で売られていそうなハサミに化けた

食べ物ではなくとも今はしのげる



「カップ麺食べて今日は寝ますか」

「そうだ―――な!?」


ガサッ


間違いなく何者かが歩く音

モンスターかもしれない

隠れるかどうか考えたが向こうが見えなくなる

ヒロは刀を出して何がおきても対応が出来る姿へと


ガサッガサッ


「止まれ!!」

「きゃっ!?」



きゃっ?


いやでもけっこう野太い感じの……男か?


「人間!?」

「姿を見せろ!!」


音の正体が近づいて来たらハッキリと分かった

人間の男で多分だが同じぐらいの年頃(?)

身長は180を超えているが両手を上にしている

強盗などにあったときのポーズ


「アタシ降参するわ」

「お前は何者なんだ?」

「彦星(ヒコボシ)」

「へ?」

「空川(ソラカワ)の苗字だったから親が彦星ってつけたのよ文句ある!?」


なんだかいじめているような図になってしまった。



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