9話 到達


「ここが山頂だと思います」

「やっぱり箱があるな」

「思ったより大きいですね」


触ってみると『箱』の外側は消えた

その代わりに形に見覚えがあるものが18個

ヒロの方は何か分からず警戒している


「これカップ麺!?」

「分かるのか?」

「お湯さえあれば食べられる食材です」


辺りを見渡すが人間らしき影はない

モンスターと呼ぶような影もない

少しだけリスの影をみたが襲ってくる様子もなく普通のリス

漫画でリスは食べられると聞いた事があるが

足が速く捕まえるのは困難で身も少ない



「あそこなんだ?」


『山頂撮影スポット』


看板と木でつくられた椅子が置いてある

平らであり落ち葉はあれどテントを張って拠点とする事は出来そうだった。

他の場所は木の根や石に角度が急だったりとしていたので『平な場所』があったのは大変喜ばしい。



「元々ここは観光で登るような山ですから」

「この世界は山を観光で登るのか……」

「貴方もこの世界に生きてた気がするんですが」

「忘れた記憶だからいつか思い出すかねぇ」


ゲームで『〇〇の森』に出てきそうな黄色いテントを取り出す


「ペグあるけどハンマー無いですね」

「石で適当にやればいけんだろ」


あっという間にガンガン叩いて完成させた

特に壊れたりと言った様子も無く荷物を置いて

時刻は昼の12時を過ぎて空腹で仕方ない。


「飯食べようぜ」

「そうですね」


持ってきた硬いコッペパンを食べさきほど川でくんで来た水を飲む

沸かしてからの方が絶対にいいのだが今は火を起こせない

そもそもペットボトルしか今は無いので煮るという作業はどちらにせよ不可能だ



「ここに拠点を移せば明日にはまた何かが出て来るんだな?」

「可能性が高いという話にはなりますが、そうですね」

「そこの景色を見た感じどこまでも山だが二つ隣の山は様子がおかしいな」

「え?」

「どうみても『秋』の景色にもかかわらずあそこ見ろよ」


見ろと言われたので椅子に座って本来であれば絶景だった筈の景色を眺めた。

隣も秋の色で赤く綺麗な山だがさらに奥には妙な山が本当にある

『背が高い山』は秋でも雪景色になるものだが同じ高さでも雪が積もる



「山ごとのマップ?」

「ん?」

「僕たちがいる山にたどり着いた時『山が変わった』とハッキリ分かりませんでしたか?」

「景色を切って張りつけたみたいな違和感ですぐ気付いたな」


もし万が一『キラ』では無かった場合は隣の山まで登りに行く必要がある

オンラインゲームのこういうのは毎日ではなく数時間おきな事も

3時間すれば復活する可能性もあれば24時のみ復活するかもしれない


「何にせよ食料が足りませんね」

「お前の体力だと往復するのは厳しいだろ?」

「すみません」

「俺は道を覚えたし往復してくる」

「地図無しで!?」

「目印はつけて来たから大丈夫だ」

「では、その間に僕は何をすべきですかね?」

「薪(まき)を拾って集めておいてくれ、枯れているとなおいい」

「分かりました」

「モンスターや野生の動物が出たらテントに隠れろよな」


やる事が無いので彼女を見送ったあと枯れた木を探した

乾いた落ち葉などもいいらしいが湿っている物ばかり

木の方は渇いているのかどうかも分からないが細いものが多く集まった。




「戻った」

「お帰りなさい!!」

「寝袋と鍋と食材にあとはタロウが使ってる火の魔法道具」

「これだけあれば今日は何とかなりますね」


最初に『箱』へ触れてから4時間が経過しようとしていた時

同じ場所へ新たなものが突然生成されたのだ

全く同じ物かどうかは調べねば分からないので触れてみる


「これスコップじゃね?」

「僕もそう見えます」


大きなスプーンのような形状

先が尖っていて土を沢山ほったりするのには便利かもしれない

でも食べ物ではない事に対する不安が大きい


「ガッカリしてるけどそれよか今は火を起こしてパン炙って食べようぜ」

「そうですね」


不味いと思っていたパンも腹が減っている今はご馳走

先ほどあつめた材料とガスコンロの力で焚き火をして

枝に刺して焼くと二人で食べた。


「確かに食料は貴重ですけどもっと食べないと身体がもたなそうです」

「お湯があれば食べられるものって話してたな」


本来であればカップ麺はいくつも種類がある

『みそ』『しお』『しょうゆ』など味はもちろんの事

様々なメーカーがあるが真っ白に手描き


【みそ 3分】


「とりあえず鍋でお湯を沸かしましょう」

「任せろ」


自分もやろうとしたが焚き火に鍋を置いたら

ぐらぐらするしどうすればいいのか分からなかった

結局ヒロさんに任せ鍋を固定して貰う


「最初は皆そういうもんだから気にするなよ」

「僕せめて焚き木を集めて来ますね」

「絶対に遠くへ行くなよ」


ほんの数分で戻ってきたらお湯が沸いていた

カップ麺を開けて困っているヒロさん

話を聞けば調理方法が不明との事


「お湯を内側の線まで入れます」

「熱湯を鍋から移すのちと怖いな」

「じゃあ逆にしますか」

「逆?」


カップ麺の中身をお湯に入れた。

逆転の発想なんて言われるかもしれないがそもそも乾燥麺が先に出来たのだ

入れ物が違うぐらいなので鍋でゆでれば完成はするのだ



「3分ほどこのまま煮れば食べれますよ」

「何が【現実】って奴か分からないがお前の知識はどこで学んだものだろうな」

「大半がテレビだったと思います」


ゆで終わった物をふたりで食べる

箸は割り箸があったので有難く使わせて貰う

少し薄味になった気はするが充分に美味しかった。



「うめえええええぇぇぇッ!?」

「またこれが出てくればいいんですけど」

「タロウに知識がなきゃ俺等はまじで詰んでたな」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る