異世界転生した女勇者と山を登る話

宝者来価

1話 異世界転生かもしれない



キャンプに来たらホラーの冒頭みたいなドッキリを喰らったと最初は思った。


「おーい?」


飯菜(いいな)高校のキャンプ部

今日は秋になるととても葉っぱが赤くなり綺麗な事で有名な地元の公園に来ていた。

立派な紅葉が地面を埋め尽くすほど落ちていて美しくも散らかっているようにも見える。

大きな滑り台やブランコがあったりする広間の少し上の丘はキャンプ場で

テントを建てて外へ出たら全員が行方不明というか返事してくれなかった。


「こういうのイジメって思われる事もあるから早く出て来なよー」


隣に建てられたテントを叩くが返事は無く中を見てみれば誰もいなくて

もしかして公園や1段上の運動場に集合してるかもと急いで降りていく

同級生や先生がいないのはまだ分かる、集合場所が違うなど理由は思いつく

土曜日の公園に来ている筈なのに【親】【子供】が一人も見当たらない

日付を確認しようとスマホの電源を入れれば圏外ではあるものの日付は変わらず


「炎上するよこういうのはー!!」


まだドッキリだと普通の人は思うだろう

幸いにもキャンプ場を歩いて降りていけば1時間程度で家につく

電車などはないものの頑張ればいけはする

山の中とはいえスマホが圏外になるような場所でもない

すこし降りれば電波もよくなって先生と連絡もつくかなと降り始めた



「はぁ!?」


人がいない所まではドッキリで出来る

先ほどまで車道だった筈の場所は森に代わっていた

自然に出来たとは思えない鋭角な車道のえぐられ方をしている

道を間違えたかな?それとも寝ぼけてるとか夢とか?

一旦テントへ戻ろうとしたら


「う、うう―――」


途切れた道の先で女性が倒れているのを発見した

もしかして地震などがあって皆が緊急で避難する事態になったのではないだろうか

自分は気絶していて事体に気付かなかった可能性

考えても分からないので後回しにして倒れていた女性にかけよる


「大丈夫ですか!?」

「み、ず」


断水でも起きたのだろうかと不安になりながらもキャンプ場に登った

彼女が言う【水】は水道から出てくれるか不安だった事も在りテントに戻りジュースを取り出していそいで届けた。



「オレンジジュースですっアレルギー大丈夫ですか!?」

「……あっ?」


女性は蓋を開ける力もないようで渡しても反応が無い

蓋を開けてあげて口の中へとにかく入れた

すると目を見開きごくごくと自力でオレンジジュースを飲み始める

半分ほど飲んだところで女性は落ち着いたようだ。


「良かった、大丈夫そうで」

「ありがとな助けてくれて―――俺はヒロ」

「えっ男の人でした!?」

「なんでそーなるんだよ」

「【ヒロ】って名前が父さんと一緒だから、つい男の人かと」

「俺の胸みりゃ分かるだろ……そういうお前は?」

「僕は田中太郎っていいます」

「マジ?」

「確かに名前の手本欄とかにいそうな名前だけど本名ですからね!?」


首をかしげる彼女だがもしかして若いのかも

高校生で同い年程度だと思っていたが中学生の可能性もある

にしては背が妙に高い気がする



「苗字がある奴は珍しいから驚いただけだ」

「なら外国人さんかな?」

「俺が産まれた国の話だったら【ハジメグニ】だな」

「えぇとゲームの話ですよね?」


国民的RPGの【モンスタークエスト】は自分も好きでよくやった

全作品で共通してハジメグニから始まる

確かに彼女はコスプレしているかのような格好で背中に蝶のような羽が

格好からして主人公のどれかに見える(1~11まで出てる)


「前に一緒だった奴も同じ事ような事を言ってたな――――」

「ヒロさんはスマホとか持ってる?」

「アイツから聞いた話では……通信機器の事でいいか?」

「そうそう」

「テレパスウィンドウ」


彼女の右手の平からモニターが写しだされた

空中には【通信不可】と仕組みが分からないがとどまり続けている

すぐに揺らめいて消えてしまった


「今のって!?」

「俺の通信機は壊れたらしくてずっと使用できねぇのよ」

「……今からいう人物で心当たりがあれば言ってください」

「ん?分かった」

「パルマ」

「知らん」

「グルッド」

「知らん」

「アルマンテ、カリクレア」

「聞き覚えねぇなぁ」

「ルナ」

「一緒に旅した仲間だな」

「今は何処に?」

「故郷に帰った筈だ」


モンスタークエスト5のルナ

美少年で魔物に追われた主人公を助けてくれる

その代わり過去に自分が冤罪を着せられた事を主人公の父親である国王に言って欲しい

最初は利用しようと近づいてきたが徐々に心を許すようになる


エンディングで故郷に帰る描写がった。


「魔法って使えますか?」

「いや、MPが無くてな」


嘘か本当かどうか考えるよりも先に見えた者

『グルルルッ』見た感じは野良犬だが明らかに様子がおかしい

一つ目のモンスターだし足先は燃えている


「お前さっきはよくもッ!!」


ヒロは剣を抜き犬らしきモンスターの首を切り裂いた。

死骸は残らずに段ボールが落ちる。


「どういうこと、なのかな」

「俺はこの世界に来て3週間ほど経過する」


異世界転生の逆バージョンかと思ったが

犬の魔物も変な土地も本来は無い

僕が別世界に来てしまったようにしか感じないが


「―――あそこ見て」

「静かに」


さきほど切り捨てられた一つ目の化け物犬が何匹も遠くに見えたのだ

近づいてくる気配は無いが集団で来られたら敵わない

どうやら野生の猿と戦っているらしい


「とりあえずテントに行けば隠れられはする筈ですよ」

「お前が冷静ないい子で助かったぜ、行こう」

「この段ボールはどうします?」

「テントの中で何が入ってるか調べようぜ」




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