第5話 お、いい線いってるな!さすが拓海!
全校生徒による校内清掃が無事終わり、俺たちは今日も会議をしていた。
俺はホワイトボードに『新入生歓迎イベントについて』
と、大きく書く。
「今日の議題はこれだ。今度、生徒会主催で半日かけて新入生歓迎イベントが行われる。ちなみに去年は宝探しだった。今年も宝探しをするわけにはいかないので、1年生との絆が深まる良いイベントを考えてくれ」
俺は生徒会室にいる3人に向けて言う。
「はいはーい!」
「お、こちら側にいるのがおかしい新入生の春菜ちゃん。何かしたいことがあるのか?」
「はい!ウチは全校生徒で逃走中がしたいです!」
「逃走中!?学校で!?」
「そうです!これは逃走者たちが協力することの多いゲームです!例えば、ハンターの放出を阻止するために協力をする、ハンターを教え合う等、絆が深まるイベント盛りだくさんです!」
「たしかに絆は深まるよ?でも、無理でしょ?」
「なぜですか!?広大な場所もあってハンターも沢山いる……これなら絶対逃走中できますよ!」
「ちなみにハンターって誰がやるんだ?」
「先生です!」
「年齢的に無理だろ!」
(先生が高校生を捕まえるのは無理だと思うけど!)
「いえ!これを機に、先生たちにも運動をしてもらいましょう!」
「スパルタすぎるわ!」
(コイツ、最終的にお願いするのが俺だからって無理難題を押し付けやがって!俺、先生に「運動のためにハンターをしてください!」とか言えねぇぞ!)
「どうですか!?問題点は全校生徒に通知がいくよう、全校生徒が所属しているグループを作らないといけないくらいです!」
「そんだけ!?問題点だらけなんだけど!」
ということで却下する。
相変わらず、俺が却下すると「ぶーぶー」と文句を言い始める。
俺はいつも通りスルーして他の人に意見を求める。
「カエデは何かあるか?」
「あぁ。アタシは絆を深めるには拳で語り合うしかねぇと思ってる!」
「少年マンガか!」
「お、いい線いってるな!さすが拓海!」
「なんで褒められるだよ!」
「いやいや!まさしくアタシが言おうと思ったことだ!某雑誌でも言ってるじゃないか。『友情•努力•勝利」と」
「それはよく聞く言葉だが、今関係なくね!?」
「なにを言ってる!某雑誌では、友情を手に入れるには、努力して力をつけ、強敵に勝利しなければ絶対に手に入らないものって言ってるんだぞ!」
「友情を得るまでのハードルが高すぎるわ!」
「いやいや、アタシは間違ったことなんか言ってないぞ?だって、ピッ○ロやベ○ータってこのパターンだったし」
「だから特殊すぎるって!バトルのない学園マンガはそのパターンで友達を増やしてないだろ!?」
「そんなことないぞ。あれも実は視線でバチバチしてる。そして『ふっ、降参だ』『お前もなかなかやるな』って視線でやり取りをしてから友達になってるんだ」
「そんなわけあるか!とにかく!拳で絆を深めるのはナシだ!」
「ちぇっ、ようやく天下一武○会が開けると思ったのに」
「お前、まだ諦めてなかったの!?」
(そのことに驚きなんだが!)
俺は幼馴染が天下一武○会を開催したがっている事実に驚きつつ、雪野先輩に話しかける。
「雪野先輩は何か良い案はありますか?」
「そうね。私は勉強会を開くべきだと思うわ」
「勉強会……ですか?」
「えぇ、学年関係なく、男女問わずでグループを作って、あるテーマについて勉強するの」
「なるほど。これだと新入生と上級生の交流機会は多いですね。でも、せっかくのイベントがただの勉強会になったら面白くないと思いますが…」
「その点は大丈夫よ。みんなが興味津々で取り組むテーマにするから」
「おぉ、みんなが楽しく勉強できるテーマがあるんですね!それはなんですか!?」
「えぇ、女性の生理についてとコンドームの使い方よ」
「アウトだ!」
「あら、そんなことないと思うわよ?今では保健の授業でやってるのだから」
「いや、そうだけど……」
「じゃあ、問題ないわね」
(うっ、そう言われると返答できない)
「これなら、新入生も興味津々で取り組むと思うわ。そして、あんなことや、こんなことが起こるかもしれないわね。楽しみだわ」
「さ、さすがに、そこまでは起こらないと思いますが…」
「いいえ、年頃の男女を侮ってもらっては困るわ。実際に男子生徒がゴムをつけ始める可能性も考えられるわね。百聞は一見にしかずってね」
「警察沙汰だ!」
「あら、そこをなんとかするのが生徒会の仕事だと思うのだけど…」
「違うわ!」
そんな感じで先輩の意見を却下する。
それ以降も様々な意見が出るが、全て却下し続けて、結局、新入生歓迎イベントは去年と同じ、宝探しとなった。
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