第35話 半グレ


ホテルの並ぶ場所に着き、入り口周辺を見て回る。

潤美は寝てしまっているから、間違いなく運んでる様子は目立つはず。

必死に探しても見つからない。


「 私のせいだ…… 全部。

あの時もっとしっかり止めて置けば。

どうしたら良いの…… 。 」


焦れば焦る程分からなくなる。

必死に探しても手がかり一つ見つからない。

人混みの中を走り抜ける。

その度に肩をぶつけて謝り続ける。


「 はぁはぁ、すみません! 」


また一人の長身の男とぶつかり謝る。


「 おっ? 藤堂じゃないか。

そんな急いでどうした? 」


ぶつかった相手は朝倉だった。

汗だくで息を切らしている萌が気になり引き留めた。


「 ごめん、今は…… 急いでて。 」


目の焦点が合わず、周りばかり目で追っている。


「 まず落ち着け! 何かあったんだろ?

俺に話してみろ。 」


大きく深呼吸をしてから、訳を話しました。


「 その連中は半グレかも知れない。 」


半グレとは暴力団に属さずに、普段は普通に生活していて裏で犯罪行為を行う集団。

中途半端なその集団は、今では暴力団よりも多いと噂されるほど身近な存在に。


「 そんな…… 普通の人にしか見えなかったのに。」


「 半グレの恐ろしいのは、普通に生活してて裏で隠れて犯罪をしている。

ある意味一番捕まえにくく、目立たないように動いてるからな。 」


もし朝倉の予想が当たっていたら?

考えるだけでも怖くなってしまう。


「 何か特徴はなかったのか? 」


萌は髪型や服装、色々思い出してもその連中をピンポイントで見つけれる物が見つからない。


「 でも…… 首に蛇のタトゥーが見えた。

あまり人の目に見えないところに。 」


その事を聞いた瞬間に朝倉は何かに気づく。


「 そいつは半グレだ…… 。

今噂のホワイトスネークって集団だ。

女を引っかけ回してるって噂を聞いた事がある。

しかも被害届が出されないように、脅したり脅迫をするようなゲスな連中だ。 」


萌は泣き出しそうになる。

朝倉は優しく肩に手を置く。


「 大丈夫だ、そいつらが根城にしてる場所をいくつか知ってる。

後は俺と警察に任せろ。

だからお前は家に帰ってろ? 」


そう言ってから直ぐに仲間に電話をして、ホワイトスネーク団の根城にしている場所を聞いた。

そして電話を切り後ろを振り返る。


「 大丈夫、かなり多いけどしらみ潰しに探せば…… っておい。

何処に行ったんだ!?

あいつ…… 電話で聞いた場所に向かったのか?

何を勝手な事しやがって…… 。 」


朝倉はかなり焦っていた。

萌にもしもの事があったら…… 。

朝倉はやりたくなかったが、一本の電話をかける。


「 赤沼さん? 俺っす。

実は娘さんの事なんですけど…… 。 」


萌は必死に走っていた。

電話で聞いた怪しい場所を、一つ一つ探すつもりでした。

耳で聞いた17件の場所を当たるのでした。

さすがは秀才。

一度聞いた場所を直ぐに頭にインプットしていた。


その頃おじさんは朝倉の電話を貰い、直ぐにそのたまり場らしき場所に向かう。


「 バカ野郎が…… 絶対に見つけても関わるなよ。

今直ぐに行くからな…… 萌!! 」


おじさんは凄い勢いで走って行きました。


その頃ホワイトスネーク団はアジトに着いていた。


「 えっへっへ…… また可愛い女手に入ったな。

もう一人の女の方が良かったが、まぁまずまずな結果だな。

今日は仲間呼んで遊びまくるか! 」


マッシュルームカットの男がみんなに言うと、大きな雄叫びが上がる。

まだ人数を集めたいのか? 仲間に電話して集めていた。


( ん…… 頭がくらくらする…… 。

ってここは…… ? )


潤美がゆっくり目を覚ますと、何処か見知らぬ倉庫に横たわっていた。


「 おやおやおや?? やっとお目覚めかな? 」


頭がくらくらしながら周りを見渡すと、倉庫の中には明らかに怪しい男達が居た。

一瞬で自分の置かれた立場に気付く。


「 あああ…… あの。

私…… 私、そろそろ帰らなくちゃ。 」


怖くて声が震えてしまう。

男達はそれを聞き笑いが起こる。


「 何言ってんだよ、これからが楽しみじゃないか?

最高のパーティーが始まる。

うっひゃひゃひゃっ!! 」


マッシュルームは独特な笑い声を出した。

直ぐにふらふらになりながら外に逃げようとすると、直ぐに男達に捕まってしまう。


「 助けてーーっ! 助けてぇーーっ!! 」


叫び声は悲しく倉庫の中を反響する。

直ぐに男達は潤美の口をガムテープで止めてしまう。

手足も逃げられないようにぐるぐるに。


「 ここは港近くの使われてない倉庫。

どんなに叫んでも助けなんて来ない!

だが念には念をな。

そのうるさい口を塞がせて貰った。

悪く思うなよ? 」


潤美は恐怖に震えながらゆっくり涙が溢れる。


「 お前みたいなバカな女は、直ぐに肩書きと見た目に騙されて寄ってくる。

俺はそんなバカを捕まえては、仲間と共有してるって訳よ!

仲間は助けあわないとな? うっひゃひゃひゃ! 」


悔しくて涙が止まらない。

自分の過ちに気付いてももう遅かった。


「 友達が助け呼んでると思うか?

絶対にここは見つからねぇよ。

名前とか偽名だし、バレようがないんだよ。

しかもお前は警察に行けない。

ここで恥ずかしい目に合うんだからな! 」


男達は盛りのついた獣のように変貌していた。

自分達の遊びが上手くいき笑いが止まらない。

そして我慢出来ずに襲いかかる。

叫ぼうにも声が出ない。


「 あんた達の頭じゃこんな所しか

見つけられないわよね。

本当に単細胞の獣達ね。 」


その声を聞き男達は襲うのを止める。


「 何だてめぇーーは!? 」


ゆっくりと歩いてくる女性。

それは萌の姿でした。


「 潤美遅くなってごめんね。

助けに来たよ、一緒に帰ろう! 」


そう言って微笑みました。


「 お前は…… 一番の上の上の女。

お前が身代わりになりに来たか? 」


「 うるさいっ!! お前達はおしまいよ。

もうここに直ぐに警察が来る。

通報しといたから間もなくかしら?

逃げるのか? それとも捕まるこか?

どちらが好みかしら? 」


萌の顔は本気でした。

相手は少し動揺している様子で、少しざわざわしているのを感じる。


でも一つ大きなミスを犯していた。

それは倉庫を見つけて警察に通報しようとしていたら、中から潤美の叫び声が聞こえて居ても立ってもいられずに乗り込んで来てしまった。

なのでここに居るのは誰も知らない…… 。


「 何だと…… どうすれば…… 。 」


マッシュルームは動揺して逃げるか考えている。


( そう、それで良いのよ。

こっちは命懸けで駆け引きしてるのよ。

バレたら終わり…… こんな駆け引きしたくなかった。

でも友達を助ける為にはこうするしかない。

お願い…… 退いて、退いて…… 。 )


額から汗が溢れる。

ビビったら直ぐにバレてしまう。

駆け引きはポーカーフェイスが原則。

おじさんから教わった知識でした。


「 お嬢ちゃん…… 良いはったりかますね。 」


奥から大男が現れる。

明らかに他と雰囲気や空気が違う。

一般人の萌にでも分かる。


半グレなんかではない。

コイツは本物の暴力団の人だと。


「 な…… 何を言ってるのよ…… 。

直ぐに警察が乗り込んで来るわよ! 」


ここで負ける訳にはいかない。

目を反らさず真っ直ぐ見つめる。

大男は凄い高そうなスーツに、金色の時計を着けている。

髪はオールバックに決まっている。


「 お嬢ちゃん…… どんなに騙そうとしても、体は正直なんだよ。

その証拠に汗が止まらないじゃない。 」


静かに話す大男はその静かさが逆に怖く、萌は体中が震えて止まらない。


「 お前ら…… 俺を信じろ。

さっさと始めちまえ。

それと絶対チクられないようにしろ。 」


大男は疑惑から確信へと変わり、半グレに命令を出し始めた。

直ぐに萌は押さえつけられて、手と足にガムテープを巻かれてしまう。


「 後少しだったのに…… 。 」


もう誰も助けは来ない。

諦めて目をつぶろうとする。

その時…… 。


ドカーーンッ!!

硬い鉄の扉が思いっきり外側から何か叩きつけた音が鳴る。


「 何だこの音は!? 」


マッシュルーム達に動揺が走る。

何度も外側から凄い力で叩きつける音が鳴る。

そして鍵が壊れてゆっくり扉が開く。


「 ガキは寝る時間なんだ…… 。

そろそろ帰らせてもらえるか? 」


現れたのはタバコを咥えた、おじさんの姿がそこにはあった。

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