第25話 親子の形


今から20分少し前…… 。

おじさんは真琴の家を探していた。


( ん…… 見つからん…… 。

方向感覚とかゼロだし、地図も使えないからなぁ。

何でこんなお節介してるんだか。 )


おじさんは前日に昔の友人に電話をかけていました。


「 なんだよいきなり。

お前からなんて珍しいな。 」


その友人とは昔からの腐れ縁。

駿河蓮太するがれんた

楽しいことも悪いこともいつも一緒でした。

大人になりお互い丸くなり、今では不動産屋を経営している。


「 わりぃな…… 。

蓮太、ちょっと調べて貰いたい事があってな。

芳賀って名字の父子家庭で二人暮らしの住所ってどれくらいある? 」


おじさんは真琴を助けようと思い、自分なりに探そうと思いました。


「 バカかお前!?

そんなプライバシー言えると思うのか?

個人情報をほいほい言える訳あるか。

相変わらずだな…… お前は。 」


昔と変わらない所を笑い、嬉しく思っていました。


「 この前パチンコ屋で蓮太を見たって誰かから聞いたぞ?

お前ギャンブル禁止じゃなかったか?

もし破ったら家追い出されるとか言ってた気が…… 。」


おじさんは蓮太の弱味を握っていました。

蓮太は誰も知らない秘密を知っていて、飲んでいた飲み物を吐き出す。


「 ゲッホ! ゲホッ! お前…… 。

それだけはやめろよ。

俺達親友だろ? 頼む…… 。 」


「 なら芳賀って名字調べといてくれよ?

俺は口の固い男なんだからよ。 」


蓮太は渋々企業で使っているタブレットを使い、あっという間に見つけ出す。


「 ここらで該当すんのは三件。

後で位置情報送っとくからよ。

その代わり秘密黙っとけよ!! 」


「 了解…… 助かる。 」


ひと安心してため息をつく。


「 そう言えばお前まだ奥さん居ないんだろ?

早く彼女作って結婚しろよ。

お前は本当恋愛とか苦手だよな。 」


「 うるせぇよ…… 出会いもないしな。 」


相変わらずのいじりに、少し恥ずかしそうにしながら言い返しました。


「 悪い、悪い! からかっただけさ。

そう言えば何で芳賀とか言う住所知りたかったんだ? 」


「 ウチの娘が困ってて助けてやんだよ。

助かった…… 今度お礼する。 じゃな。 」


ブチンッ! 電話は切れてしまう。

蓮太はそのまま電話を切らずに立っている。


「 最後なんて言った…… ?

娘…… 気のせいか、今日は疲れてるんだな。

早く帰ろうっと。 」


蓮太はおじさんの今の現象を信じられずにいるのでした。


そして時間はさかのぼって10分前、おじさんは芳賀さんの家をしらみ潰しに探していました。


「 参ったもんだわ…… 人助けってのは、頭が良くて暇なやつがやるもんだな。

俺みたいなバカで方向音痴のやるもんじゃなかったな。 」


スマホのナビに従って歩いていても、上手く使えずに道に何度も迷ってしまっていました。


「 お前がやってるのはただの八つ当たりだ! 」


大声で叫ぶ女の子の声が遠くから聞こえてきました。


「 ん…… ? 萌の声だ…… 。 」


おじさんはかなり耳が良い。

声の方へ急いで走る。


( 見つけ…… なにぃ!?

ヤバイっ! させるもんかぁっ!! )


やっと見つけると、萌がバットで殴られそうになっている。

おじさんは無我夢中で走りました。

そして萌の前に立って思いっきりバットを受けてしまう。


「 な…… なんなんだ! お前は!? 」


芳賀さんのお父さんは動揺しながら叫ぶ。


「 お前さんがバットで殴ろうとした娘の父親だ。

おかしなもんだよな…… 。

必死に守ってる親子は血も繋がらない他人で、目の前で子供を傷つけてんのがちゃんとした親子。

つくづく子育てってのは難しいな。 」


頭から血を流しながら立っている。


「 うっ…… うるせぇ、うるせぇんだよっ!! 」


折れたバットを捨てて、怒りを抑えられずおじさんを殴ろとする。


「 おじさーーんっ!! 」


萌は叫びながら怖くて目を瞑る。

ゆっくり開けるとおじさんは相手の拳を手で止めていまひた。


「 なんだ…… 間違いを指摘されると直ぐに手を出しちまうのか?

やっぱりあんたは病気だ。 」


芳賀さんのお父さんはその指摘に怒り、反対の手でおじさんを殴りました。

おじさんの頬に直撃してしまう。

軽くふらふらしてしまいましたが、直ぐに立て直してしまう。


「 っててて…… お前こんな拳を毎日娘に向けていたのか?

何回殴ったんだ? どれだけ痛いのか分かるか? 」


おじさんは一本も引かずに顔を近づけていく。

相手のお父さんは目を反らしてしまう。


「 何でお前に殴られても警察に通報しなかったか分かるか?

お前がいつか戻るって信じてたんだ。

だから必死に耐えたんだ…… 。 」


「 …… 分かってるさ。

家族なんだから許し合うもんだろ? 」


おじさんは相手の胸ぐらを強く掴む。


「 家族だと!? 笑わせんな!

ケガするほどやるなんて尋常じゃないぞ?

家族って言葉に甘えんなっ!! 」


おじさんは強く怒りました。

こんなに怒ったおじさんを見たのは初めてでした。


「 良く見てみろよ? 自分の娘を!

あれはお前がやったんだぞ!? 」


後ろで見ていた娘を見る。

階段から落とされて腕を骨折していて、動かないように固く固定されている。

腕も足も痣だらけに。


「 ごめん…… ごめんよ。

本当にごめんなぁ…… 。 」


やっと我に戻り泣きながら抱き締める。

芳賀さんは泣きながら言いました。


「 お父さん…… ごめんね。

お父さんは病院へ行って?

それで前のお父さんに戻って欲しい。

私は待ってるから。 」


泣きながらもお父さんを嫌いにならなかった娘を見て、お父さんは泣き崩れてしまう。

自分の病気のせいでどれだけ傷つけたか?

やっと分かったからです。


「 ごめん…… ごめん。

お父さん病院で治すからな。

それまでおばあちゃんの家で暮らしててくれ。

絶対に絶対に治すから…… 。 」


親子は泣きながら抱き締めあいました。

萌と彩芽はもらい泣きしてしまう。

見てて照れ臭くなり、おじさんはタバコを吸う。


「 こんなに簡単に分かるならこっちに迷惑かけさせんなよな。

痛てててっ…… 早くやり直せると良いな。 」


そう言いゆっくり歩いて行く。

直ぐに芳賀さんのお父さんは土下座をしました。


「 本当に申し訳ないことをした。

バットで殴ってケガをさせてしまった…… 。

警察にでもなんでも言ってくれ!

俺はちゃんと償います。 」


おじさんは立ち止まり振り返る。


「 あんなよえーバットくらってる訳ないだろ?

パンチも腰が入ってねぇから全然痛くなかったわ。

こんなんで警察に言ったら笑われちまうよ。

許してやるから早く病気治しな。

それが俺との約束だ。 良いな? 」


「 はい…… はい…… 。

本当に…… 本当に…… すみませんでした。 」


何度も頭を下げ続けました。

おじさんは少しでも早く二人が暮らせるように、暴行された事は忘れる事に。

その行動は正しいのかは分からない。

ただ同じ親としてそうしたかったのです。


ふらふらしながら帰って行く。

萌も直ぐに追いかけようとする。


「 彩芽、あとは頼むね?

私はおじさんと帰らないといけないから! 」


「 萌ちゃん…… ありがとう。 」


萌は笑っておじさんを追いかける。

彩芽は一人芳賀さんを見詰める。


「 良かった…… 良かったね。

萌ちゃんのお父さん…… って!

私の憧れの人じゃない!! どえぇっ!!?」


遂に知ってしまいました。

自分を前に助けてくれた人は、おじさんなんだと分かりました。

この偶然にただ動揺してしまう。

胸の高鳴りが抑えられずにいました。


「 おじさん! 直ぐに病院だよ! 」


「 けっ! 誰が行くかよ。

こんなかすり傷直ぐに治るから。 」


病院を嫌がるおじさんの腕を強く掴み、病院へ向かいました。


「 うるさい! 言うこと聞きなさいよね。

子供じゃないんだから。 」


萌はおじさんと腕を組みながら病院へ行きました。

おじさんは萌に逆らえずに連れてかれてしまう。


おじさんは病院で頭を少し縫う事に。

それは大騒ぎで大変な事になりました。

それはまた違う機会に…… 。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る