もう満たされない

第1話 狭く、深く。

多分。

　君からしたら幾多のうちのひとつ

なんだろうな。　俺はそう純粋に思った。

　今じゃその純粋さすらも恋しいけど。

「幸せの形って人それぞれだと思うん....」

　いつかのテレビ番組でよくわからない

恋愛評論家きどりの芸能人が言っていた。

、、形なんてどうでもいい。ただ、満たされていたい。

テレビを観ながら思った。

今の俺がそんなことを思うようになったのは

きっと、きっと、この人生で唯一の後悔であり

この人生でいちばんの幸福を噛み締めていた、あの時期のせいなんだろう。

あの時は4Kくらい鮮やかだった世界はいつの間にかフルHDにも満たなくて。

この世界を鮮やかにしてくれるのはきっと「あの時」の「あいつ」しか居なくて。

そんなことを今の俺は茫然と考えていた。

人っていうのは一度最大の幸福を味わうと

もっと上の幸福感を求める生き物だ。

俺はなんとなく、あの時の幸福感を超えることはもうないってわかってた。齢17のときから。

だから俺は、

人生に意味を見出せなくなっている。