TAO

白月 湯江

第1話 出会い

導師と書いて『導師(どうし)』と呼びます。

人は迷い時には悩み、そして苦しむ…。


そんな導き手とするのが導師の役目。

導師は、この世界になくてはならない存在。


この物語の世界では、

身体の一部にアザを持って生まれた者を

神の使いの『導師』として皆、

崇めていた。


そしてアザを持って生まれた赤子は、

成長し、10歳になった時に

『導師』として人を導く仕事をしなければならない。


この年『導師』として、宿命を

背負う10歳の若者がいた。

名は『タオ・リード』

しかし、タオは『導師』としての

修行をしている最中に逃げ出した。


教会の修行中に、教会に荷物を届けにきた

馬車の荷台に乗り込んだタオ。


馬車は、教会を離れ首都エルガーナルへと 向かっていた。

『…。ねぇ。いつまで隠れているの?』

馬車を走らせていた紫色の長い髪に綺麗な声をした綺麗な顔の女性みたいな人が

荷台を覗き込んでいた。


『すっすみません!僕教会を逃げ出したたくて…!』

タオは慌てて隠れていた布から飛び出し土下座した。

『わかってるわよね?修行童を誘拐したら

死罪なのよ?私を殺す気?』


『わっわかっています!本当にすみませんでした!急いで馬車を降ります!』

タオが荷台から飛び出そうとすると、

女性のような人はタオの手を握り。

『待って!私は、アルテマ。訳あって旅芸人をしているの。あなた修行童なら『守護者』はいないの?』


『守護者』とは、導師を守るために

そのためなら命も差し出す宿命を持つ

一族のことをそう呼ぶ。


『…。わかりません。僕は冠礼の儀式も

サボりこうして今あなた…。アルテマさんにご迷惑をかけてますから。』


『…。そう。ねぇ。良かったら私と一緒に旅をしない?私は、世界中をかけ巡っているの。』

アルテマはタオの両手を握りニコッと笑顔で微笑んだ。

『死罪…ですよ?僕なんかといたら…。それに僕こんな容姿ですが男ですから…。』


代々『導師』は女がする役目だったのだが、

今年は男が生まれてしまい、

タオは女の子として育てられていた。


『ふふっ…。私もこんな容姿だけど、男よ。』

タオはびっくりしてアルテマの胸元を見た。

『残念ながらまな板です。』

アルテマは服を脱ぎタオに上半身を見せた。


『さてと…。あなた名前は?』


『…。タオです。ご迷惑じゃなければ僕も一緒に旅をさせてください!お願いいたします!』

こうしてアルテマとタオの旅は始まった。


アルテマとタオは首都エルガーナルへと

馬車を走らせていた。


『ところでタオ。あなたそんな薄着で

風邪引くわよ?まぁ修行童は布1枚しか着ていないとは聞いていたけど…本当だとはね。』


タオは、修行童なので、布1枚。

しかも時期はまだ夏前なので、

少し肌寒い。

『そうだ!エルガーナルに行く前に

ピット村があるからそこで服を代えましょ!』


『アルテマさんでも僕お金が…。』


『大丈夫!気にしないで。ピット村はこの前魔物が出てきたから私がやつけて、村長も私には恩があるから少しぐらいオマケしてくれるわよ!』


アルテマはそう言って、左の腰にある

くないのようなナイフを5本見せた。

『アルテマさん…。本当に旅芸人ですか?』


『ふふっ…。さぁ?私の過去はタオちゃんがもっと私と仲良くなってから教えてあげるわよ。』

そう言いながら馬車を走らせ、

ピット村へと着いた。


『到着!でもおかしいわね…。

何だか村の様子が変だわ。』


『アルテマさん…。村の外に誰もいませんよ?』

アルテマは、近くにあった家の扉を

コンコンと叩いた。


『ごめんください。誰かいらっしゃいませんか?』

扉はギィと開いた。


『あら?鍵が開いてるわ…。…!』

扉の奥には、クチャクチャと何かが

食べられてるような音が聞こえた。


『…。この鉄のような匂い。血ね。タオちゃん絶対に私から離れないで!』

タオはアルテマの後ろについた。


『くるわ!』

アルテマがナイフを構えると中から勢いよく、化け物の目をした口が血まみれの人が襲いかかってきた。

『…!まさか人が人を食べてたなんて…!。』


アルテマは、躊躇しながらも、

武器を構え投げつけた。

投げたナイフは、化け物の心臓に命中したが

化け物はナイフを引っこ抜いた。


『心臓に効かない!くっ…!。』

アルテマは背中から短剣を出すと化け物に切りかかった。


アルテマさん!あっ…。』

タオは周りを見渡すとたくさんの同じ目をした人がタオを囲んでいた。


『タオちゃん!』

アルテマはタオに気づいたが化け物は

アルテマを襲う。


『あわわ…。うぅ…。』

タオは怯えながら膝まずき祈り出した。


『神よ。人を導く鍵を我に! 』

タオの周りに魔方陣がタオを囲むように描かれていく。


『我の血は導師。我の血は神の使い。』

タオは必死に祈る。

化け物は魔方陣の中に入ると、

一瞬で灰になった。


『タオちゃん…。』


『おい!化け物の首を落とせ!』

遠くから声が聞こえた。

アルテマは指示従い化け物の首を切った。


『動かなくなったわ…。タオちゃん!無事?怪我はない?』

タオの周りには化け物は全て灰になっていた。

タタタっと足音がだんだん近づいてきた。


『大丈夫か?よく耐えたな。』

黒マントに金髪の長い髪を赤い紐で1つくくりにした青年が立っていた。


『ありがとう。助かったわ。』

アルテマが青年に近づいた。


『助けられなくてすまなかった。

俺はディセンド。…首都の騎士をしている。』


『騎士さんなのね。私はアルテマで

そこにいるのはタオちゃん。』


『タオ…?そうかお前が修行童か。』

びくっしたタオはアルテマの後ろに隠れた。


『心配するな。俺はお前の守護者だ。

いや守護者になる予定だった者だ。

お前が逃げ出してくれたおかげで俺は

お前を探す任務を受けたが俺は守護者なんてなりたくなかった。お前には感謝するよ』


ディセンドはそう言うと首を切られた化け物に近づいた。


『この村は全滅か…。おいアルテマ…だったか?お前武器の扱いは手慣れたものだな。』

ディセンドがアルテマを見る。


『ちょっとかじっただけよ…。それよりも全滅って?』


『あぁ…。この村は人が化け物かしてそれが感染し、俺が来た時には1人も健常者はもういなかった。』


『なっ…。そう…なの。』

アルテマは下を向いた。


『タオだったか?お前運命を信じるか?

俺は宿命や運命にはとらわれない…。

しかし女1人も守ってやれないのはダメな男だぞ。』


『…!僕がなぜ男だと!?』

タオが驚いた顔でディセンドを見た。


『俺も似たようなもんだったからな。それはそうとほらよ。』

ディセンドは赤い鞘の剣を渡した。


『導師にプレゼントだ。それで女を守れる強い男になれ。』

ディセンドはそう言うと立ち去ってしまった。


『…私は男なんだけど…。まぁいいわ。

それよりタオちゃん…。』

アルテマがタオを見た。

『アルテマさん、僕に剣の使い方を教えてください。僕も強い男になりたいです。』


アルテマはふっと笑ってタオの頭をポンポンとした。

『嬉しいわ。ただゆっくり強くなりましょう。』

アルテマとタオはまた馬車を走らせた。


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