【カクヨム短編2022 中間突破 無念最終選考落選】『そこら辺にある暗黒街』 第一章 誰からも愛されない女の恋。

石のやっさん

プロローグ 当時の私

当時の私は歌舞伎町のピヨピヨ薬局でバイトをしていた。


私は苦学生で、本当なら大学には行かずに働きたかったが、親から『大学くらいは出ろ』と言われてバイトしながら大学に通っていた。


親は学費や生活の援助をしてくれない癖に「夜間部は駄目」と強要されていたから、バイトしながらの学生生活を余儀なくされた。


最初はピヨピヨ薬局で17時からの普通のバイトをしていたのだが、貧乏生活に疲れた私は、より高額のバイトを探し始めた。


他のバイトを探す前にこの店の中で2店舗の深夜番だけが、異常にバイト代金が高いのを知った。


何とその時給は1700円。


当時はバイトの時給はファミレスやコンビニで昼間なら800円 夜間でも1100円位だったからこれは破格値だった。


当時だとこの時給は、スナックとかの水商売じゃないと貰えない。


当時、水道橋店に居た私の時給は800円。


そこから考えてもこの時給が高いのが解ると思う。


お金の欲しかった私は、すぐに深夜番の話に飛びつきエリアマネージャー(店長の上の人)の樋口さんに相談した。


◆◆◆


ここからは当時の話だから少し口調は変わる…まだ若かったからね。


水道橋店の店長の安藤さんには恩があったので少し心が痛んだが、背に腹は変えられなかった。


樋口マネージャーは、私や安藤さんに気を使ってか、私の休みの日に『相談日』を設けて、喫茶店で会う事になった。


「あの店の深夜番になりたいの?西武新宿店はもう決まっているけど、歌舞伎町店は空いているけど。 覚悟がいるよ!」


「覚悟?」


まぁ繁華街だから忙しいとかか?


「お客の多くは、ヤクザにホスト、キャバ嬢に風俗関係者『それでもやれる』かい? 今まで、何人ものバイトが勤まらなくて止めていった。頑張れるなら直ぐに移動を受け付けるけど? 大丈夫かい!」


確かに少し怖い。


だが、今の俺には金が必要だ。


それに、只の薬局の店員。


接客に気をつければ問題は無いだろう。


こうして俺は歌舞伎町店の深夜番への移動が決まった。

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