第15話 再会
ロバートは準備がいい男だ。
「モニカさんが明日いらっしゃるならば、馬車をお使いください」
ロバートの気遣いはありがたかったが、ケヴィンには気が引けた。
「いえ、お気持ちだけで十分です」
マクシミリアン公爵家の馬車は、地位に相応しく豪奢なものだ。平民となったケヴィンが乗っていいようなものではない。
マクシミリアン公爵邸からグレース孤児院までは、歩き慣れた道だ。マクシミリアン公爵邸近辺の警備隊は、聖女ローズ様のお住まいに近いということで、士気も練度も高く、安全だ。グレース孤児院の周辺も、治安が良い。居候の身で、馬車まで借りては申し訳ない気がした。
「モニカさんを、グレース孤児院からマクシミリアン公爵邸まで歩かせるおつもりですか。お帰りのこともあります。女性に無理をさせることは、お勧めできません」
ロバートに指摘されて、自分の考えの甘さに気づいた。
「目立たない馬車がありますから、どうぞ」
ロバートの言葉通り、簡素な作りの馬車があった。豊かな商人の馬車のほうが、よほど豪華だ。頑強な構造であることは、内側から見なければわからない。乗り心地も快適だ。
「マクシミリアン公爵様ってどういうお方なのかしら」
「あぁ、えーっと」
モニカに言われて思い出した。狼の当主、影を束ねているのだ。隠密行動用の馬車の一台や二台持っていて当然だ。
「会えばわかるよ」
ケヴィンは居候をしている間に、随分と気が緩んでいたことに気づいた。このままではいけない。
通用口から屋敷に入った。そのまま待ち合わせ場所の庭に急ぐ。誰かが知らせてくれていたのだろう。
庭に、マクシミリアン公爵一家が揃っていた。
「リズのお母さん」
「リゼ」
駆け寄ってきたローズと、モニカが抱き合った。
抱き合う二人を、ユージーンを抱いたロバートが、優しい目で見ていた。ケヴィンも気づいていなかったが、同じように優しい目で二人を見ていた。
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