第191話 能力開発研究所 6


 この状況、悪くはないが、良いとも言えない。

 眠っている3人を人質に取られるとまずいからな。


 ここは、一気に片を付けるべき。

 そういう場面だ。


「……」


 用意しておいた小石を収納から取り出し、軽く魔力でコーティング。

 それを連続で3投。


 衝撃で動けなくなる程度の威力。

 やり過ぎないように。

 匙加減が難しいが、これでどうだ。


「ぐっ!」


「あっ!」


「うぅ!」


 狙い違わず3人の胸に命中。

 床に膝をつき、蹲ってしまった。


「まずい! 武志、防御結界だ。時間を稼ぐんだ!」


「っ!」


 橘にはまだ余裕がある。

 武志ともう1人もまだ動けている。


「……」


 少しばかり投石の威力が足りなかったようだ。

 なら、次でしっかりと眠ってもらおう。


 意識を刈り取るべく3人に接近。


 うん?

 薄い膜があるな。

 これが防御結界か。


 今までの半球状の結界とは異なり平面の結界で範囲も狭い。

 ただ、こんなに素早く展開できるとは……。


 大したものだ。

 が、これは脆い。

 触れただけで破壊できてしまう。


 ほら。


 パシーーン!


 この通り。


「そんな!」


「!?」


 つぶやく武志、呆然とこちらを見つめる女性異能者に近づき、首に魔力入りの手刀をくれてやる。


「ぅ……」


「っ……」


 これで、しばらくは目を覚まさないはず。

 続いて、後ろの橘……。


 床に膝と手をついた状態で転移した!

 その先は……パソコンの並んだデスクの向こう。


「……」


 とはいえ、これも想定内。


「普通人が、こんな!」


 距離は10メートルも離れていない。

 何も問題はない。


 いや、逃げられたら問題だな。


「なっ! まさか……お前、あの時の!」


 今頃気付いたか。


「くっ! なぜだ?」


 何が?


「なぜ、邪魔をする」


「……話す必要はない」


「……」


「あんたは、ここで眠ればいい」


「……ふっ、ふふ」


 歪んでいた表情が一変。

 口の端を上げ、嗤っている。


「はは、ははは」


 狂ったか?


「まあいい。お前が相手というなら、考えがあるんだよ」


 橘がゆっくりと立ち上がり。


「くらえ!」


 その手から放たれたのは3本のナイフ。

 一瞬で消失、転移だ。


 それが対策?

 1本増えただけだろ。

 まっ、3本は厄介ではあるが、こっちも初見じゃない。


 さあ、どこからくる?


 と、ナイフの出現に備えている俺の目に入って来たのは……。


「殺してやる!」


 拳銃!?

 橘が拳銃を構えている!


「異能を使えないお前には、これが一番だ!」


 まずい!

 銃弾はまずいぞ!


「くっ!」


 前方に橘の拳銃。

 さらに、左右と後ろにナイフが出現!


 考える余裕もない。

 咄嗟に、右前に身体を!

 身体を投げ出す!


 ダン、ダン!


 と同時に、2発の銃声。

 重く暗い金属音とともに、銃弾がすぐそこをかすめていく。


 ギリギリだ!


 が、何とかなった。

 ナイフを掻いくぐり、銃弾も避けることができた。


「っ!? これも避けるのか! なら」


 ダン、ダン!


 再び火を噴き、銃弾が飛来!

 の直前に、横に跳躍して床を転がる。


「……」


 これも紙一重。

 それでも、回避に成功だ。


「くそっ!」


 今ので4発。

 残りの銃弾数は?


「この!」


 橘の指に力が入るのが見える。

 今回ははっきり見える。


 撃鉄を起こし、引き金を……。

 それを見極め、また跳躍。


 ダン、ダン!


 三度静寂を斬り裂いた銃弾が空を切り、壁に沈んでいく。


「……」


 よし!

 タイミングがつかめてきた。


 しかも、もう6発を撃ち終えている。

 残る弾数も少ないはず。


 あと1度か2度避ければ終わりだ。


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