第11話 拷問のすゝめ

  男が目覚めたのはパンで出来た木の元、手足には錠が有り自由は効かない、太陽は真上に立っている


「な、なんだ!?」

「よぉ、お目覚めか?」


 目の前に真っ黒な服を着た男が現れる


「貴様は!? 何だ! どういうつもりだ罪人め!!」

「おいおい、暴れるなよ」


 と言いジョンは暴れる小男の顔を蹴る、小男は痛みの悲鳴も出す暇も無く倒れる


「これで分かったろ? お前は下なんだ。俺に質問をする事は許されない余計な事を言う事は許されない、俺の言った事に答えろ、勿論答えなかったら罰がお前を貫く」

「……」

「分かったようだな、結構、早速質問だ。お前の名は?」

「ニケル……」

「フルネームだ」

「ニケル・ララウンドだ」

「それじゃあニケル家族は居るのか?」

「何でそんな事――」


 ニケルの腹部を思いっ切り蹴るジョン、ニケルは思いっ切り口から気体や個体、流体を吐き出し、暫く悶絶する、そんなニケルを見ながらジョンはしゃがみ、ニケルの髪を持ち上に持ち上げぐちゃぐちゃの顔を顕わにしその顔を見ながら


「家族は?」


 と問う


「……母と父それに兄が居る」

「ふーん、それじゃあ、お前がもしこの問答中に死ぬ事があればそいつらに聴く事にする」

「や、止めろ!! 家族には手を出すな!!」


 顔を地面に叩き伏せる


「勝手に口を開くなニケル、家族の命運はお前の選択に懸かってる、お前の選択一個でお前の母の顔の皮は失われお前の父の純潔は失われお前の兄の四肢は失われる事になる、気を付ける事だ」

「……」

「全てを曝け出せ、困る人間はお前や家族とは関係の無い人間だ。構う事は無い」

「……」

「お前は家族の救世主だ」

「……」

「質問だ。あの国の名は?」

「……マイン」

「マインという名の国なんだな? それじゃあ、あの国の王の名は?」

「マリア王女」

「罪人がマリア王女と会う方法は?」

「……」


 質問に答えたいがその答えが思い付かないニケル


「考えろ考えろ」

「……」

「まぁいい、考えていろ、次の質問だ。ローラ・ローレライ、バーング・ワルピスこの名に心覚えは?」

「ローラはマインの騎士団の団長だ。バーングはマインの研究者の名だと思う」


 彼の知っている二人は偽物の方だと悟るジョン


「その二人以外で聞いた事は?」

「無い」

「そうか……街に門を使わず入る方法は?」

「外に街まで繋がってる枯れた水道がある、今は水も枯れて使われてないが水道入口には鍵が掛かってる、鍵は私が持っている、懐に入っている」


 ジョンはニケルの懐に手を伸ばし入れ鍵を取り出す。


「水道は何処に繋がっている」

「街の鳥の囀りと言う名の宿の近くだ。城にも近い、だがその分兵士の巡回も多い地区だ。だから気を付けてくれ、井戸の中に出るから準備して行った方がいい」

「その水道の入口は何処だ?」

「案内する」


 ニケルは此処で堪え切れなくなる


「なぁ、頼む家族だけは……」


 そこでジョンはニケルの口に人差し指を当てる


「余計な口はご法度だと言っただろ?」

「す、すまない、だが」

「分かってる、家族を想う気持ちは誰だって一緒さ心配になるのも当たり前、心配で心配で堪え切れなくなったんだろ? 今回だけは許そう、城で最も簡単に侵入出来る場所は何処だ?」

「わ、分からない」

「次だ」


 質問は続く


 質問を終えエルとナサルの元に戻り作戦を考えるジョン達


「街への入口は分かった。後の問題は城への侵入経路、ローラ、バーングの捜索、そしてこの世界からの脱出方法を探る事」

「バーングは早めに見つけて置きたい彼女なら脱出方法の一つは考えているだろう」

「彼女が行きそう或いは興味のありそうな所は?」

「この世界全体だろうな、ジョンお前の言う通りこの世界はお嬢様の精神世界で間違いが無いだろう」

「俺が言うのもなんだが何故そう言い切れる?」

「此処はそっくりなんだ。お嬢様が作っていたおとぎ話の世界とな」

「おとぎ話?」

「お菓子の国にその国の女王そしてその腹心達」

「お菓子の国の女王が両親の復讐を果たすお話?」

「違う、復讐なんて縁の無い話だ」

「へぇそうなの」

「私もお嬢様から聞きました。確か今は魔王が現れてそれを皆で倒す為修業してるんですよね」

「魔王ねぇ出て来なきゃいいが」

「それよりジョンあの男はどうした?」


 ニケルの事を聞くナサル


「あっちで寝てる」

「それにしたって先生怖かったですね、拷問とか慣れてるんですか?」

「いや、全然」

「そうは見えませんでしたけど」

「あの男、どうする?」

「逃がす」

「何? 水道の事を私達に話した事を話したらどうするんだ」

「話す事は無い、家族を人質に取ってるからな」

「だからと言って……」

「あの男は家族の為なら国を売れる男だ。心配は要らない」

「……」

「そんな顔で見るなよ」

「そもそもあの男が本当の事を言っているとも限らないじゃないか」

「馬鹿言うなよ、俺も拷問相手が嘘を付いているかどうか分からない程の間抜けじゃ無い」


 目隠しされたニケルが手錠をされた状況で立たされている、太陽も沈む頃


「このまま真っ直ぐ行け、そうすれば国に着く、着かなくても巡回中の兵士にでも拾われるだろ」

「い、行って良いのか?」

「あぁ、但し此処での事を話したら家族を殺す」

「分かった」

「どうせ話したか確認する手段が無いと考えているのなら止して置けよ、こっちにはその手段がある」

「そんな事はしない」

「まぁ、拷問されてペラペラと聞かれた事を話したといったらお前と家族含め殺されるかもしれんがな」

「速く行け、俺の気が変わらない内にな」


 男は目が見えないので恐る恐る前に一歩足を運ぶ


「家族に宜しくな」



 ニケルが教えた。水道の入口前まで移動する、三人、入口は森の中にあり小さく目立たないように隠されている鉄格子に見せ掛けた飴で出来ている入口をまじまじと見る三人


「蹴ったら壊れそうだな、鍵は要らなかったんじゃないか?」

「鍵は有るんだ。態々壊す必要は無いだろう」


 鍵を開け中に入る中は洞窟のようになっており石壁もまた飴で出来ている、そこを暫く歩くと出口が現れる

 鍵を開け人間が屈まなければ入れない程小さな飴の鉄格子を開く、出た所は枯れた井戸の中、上には星が輝く夜空が見える


「話通りだな」

「どうするんです? このままじゃ上に上がれませんよ」

「大丈夫だ。こんな時の為に俺は鉤爪付きのロープを常備してるからな」

「何でそんな物持ってるんですか……」


 井戸を上がる三人、兵士は周りには居ない、そして話通り、宿屋もあり城も見える


「城に侵入でもするか?」

「意味も無く侵入したってな……まず仲間を増やす」

「仲間?」

「あぁ、それで捜索隊を結成するんだ。ローラとバーングを捜索する」

「何処で仲間を作るつもりだ」

「そうだな、まずは宿屋の主人なんてどうだ?」

「だから、どうやって仲間に引き入れるつもりなんだと聞いてる」

「見てろ」


 ジョンは宿屋の扉を開く、中にはカウンターが有り、そこで一人受付をしている、中腹の中年の男性が条件反射の笑顔で


「やぁ、いらっ――お前ら!?」


 街では極悪人が逃げ回っていると大騒ぎになっていた。その凶悪犯の顔は広場で街中の人間が見ている


「よぉ、お元気?」


 宿主は大声を出そうとするが一瞬でジョンに間を詰められ喉元を絞められる


「あ、あがっ」

「よく聞け、余計な事をしたら殺す、余計な事がどんな事かはアンタが考えてくれよ」


 ジョンは手を放す。宿主は咳をしながら


「何が目的なんだ」


 と聞く


「アンタに人探しを手伝って貰いたい」

「人探し……?」

「ローラ・ローレライとバーング・ワルピス、この名に覚えはあるか?」

「ローラって騎士団長のか?」

「お前も同じ事を言うんだな」

「何を言ってるんだ……」

「こっちの話だ、バーングの方は?」

「そっちは聞いた事も無い」

「この街で一番顔が効く奴は誰だ?」

「フ、ファングだ! 酒屋のファング・バラカンス、奴なら何か知ってるかもしれない」

「ファング……?」

「恐らく偽物だろうな」

「情報をどうも、お前もさっき言った二人について情報を集めて置いてくれよ、さもなきゃ……分かるよな?」


 ジョンの顔は生き生きとしている

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