延長戦!悪役令嬢VS覚醒の転生ヒロイン

第66話 最凶最悪!邪神ちゃん現わる

―――≪OPナレーション≫―――

『こうして、カレリンとガルムのおかしな対決に、一応の集結が付きました。ですが、物語はまだ終わりません。そう、全世界を巻き込んで、更なるファイトが展開されるのです。どうやら、私はまだまだ叫ばなければならないようです。

それでは! 令嬢類最強!にレディィィゴォー』

―――――――――――――――



「何よそれ……」


 ラファリィ?

『様子が変ですね』

 あの子は元から変よ?

『貴女にだけは言われたくないと思いますよ?』


「ガルム様とカレリン様が既に結婚しているなら、この婚約破棄イベントは最初から上手くいくはずないじゃない……どういう事なの?」

「どういう事って言われても……攻略失敗?」

自分ヒロインなら何でも上手くいくと思っている痛い子ちゃんなんですかね?』


 ラファリィが違うって首を横にふってるけど?


「攻略なんて最初からどうでもいいし、何でもかんでも上手くいかないのは分かってる!」

「ん? あんた女神コイツの声が聞こえているの?」

『彼女は間違いなくこの世界でトップの魔力量を保持していますから見えていても不思議じゃありませんね』


「そうよ! わたしにはその邪神が見えている。そいつが乙女ゲーム恋魔教のストーリーを破壊して、この世界を破滅に導く計画を阻止する為にわたしは本筋から外れた状況を修正しようとしてたんじゃない!」

「何ですって!?」

『――ッ!?』


 どういう事なの?


「だけど邪神に騙されてカレリン様がストーリーを破綻させてしまい、もう攻略は不可能になってしまった。だからゲームで発生するこの最終イベントだけは発生させないとって……例えその後で私がどうなろうとも……」

「どうなろうと……あんたまさか!?」

「こんな中途半端な状態じゃ婚約破棄イベントを起こせば主犯の私はただでは済まないでしょ? ましてやわたしはたかが男爵令嬢……きっと極刑になるわ」


 ラファリィは自分を犠牲にしてでもこの婚約破棄イベントをゲーム通りに発生させようとしたのね――世界を救うために……

『そのようですね』


「だけどガルム様とカレリン様はとっくに婚姻関係にあって……わたしのやってきた事って……全て無意味だったって事……バッカみたい……わたしはいったい何に悩んで、何に苦しんでいたのよ!こんなの完全なる道化じゃない!!」

「落ち着いてラファリィ」

「わたしはバカだったのよ!ガルム様とカレリン様は1年も前に籍を入れていた。なら乙女ゲームの物語は最初から始まっていなかったことになるわッ!」


 なるほど……

 私にもラファリィの言わんとするところが見えてきたわ。


「神様にこの世界は乙女ゲームから大きく外れると崩壊するって教えられて……カレリン様はその横に立つ女に操られているって……だから……なのに……それは……」


 ラファリィが悔しそうに下唇を噛み、拳を固く握り震わせている。


 そう……


「私の灰色の脳細胞にも全ての謎が解けたわ……つまり……」

『つまり?』


 私はビシッとポンコツ駄女神を指差した。


ポンコツ駄女神あんた! 邪神だったのねッ!!!」

『何でそうなるんですか!?』

「カレリン様それ違う!」

「いいえ! 分かっているわラファリィ……くッ! この私が騙されていたなんて」

『貴女は底なしの馬鹿ですか!!』



「カ、カレリン? それにラファリィも……いったい君達は何を言って……」


 ガルム様がオロオロしだしたけど、大丈夫!

 私がこのポンコツ駄女神を懲らしめますから!

『どういう思考回路だったらそんな結論になるんですか!?』




「くっくっくっ……あぁっはっはっはっ!」



 何この地から響くような笑い声!?

『あいつですね』


 あれは……波打つ長い闇に溶け込みそうな黒髪、全てのものを飲み込みそうな深淵の瞳、その唇は血で染められた様にぬらりと赤くなまめかしい。


 それは天井からゆっくりと降下してくる全身黒尽くめの美女・・だった。


「何だあれは!?」

「バ、バカな!」

「ちゅ、宙に浮いている……」


 そのおぞましいが幻想的で、あり得ないくらい美しいが背筋が凍るほど恐ろしい存在に周囲も騒めき始めた。



「ぷっくっくっ……ふふふ……あぁ笑った笑った……カレリンお前ってホントにサイコーだなッ!」


 なに? この馴れ馴れしい女?


「それにラファリィも……ここまで愉快に踊ってくれるとは予想以上だった。いやぁ〜マジで楽しませてもらったぜ」


 なんて巨乳なの!

 もの凄いプレッシャーを感じるわ!

『貴女は何を遊んでいるんですか!』



「か……み……さ……」

「えッ? なに?」


 隣にいたラファリィの呟きを捉え損ねて聞き返したんだけど……ラファリィの虫も殺さぬ可愛らしい顔が親の仇を見るように怒りで歪み鬼の形相と化していた。


 まずいわ……

『彼女……理性が飛びかかっています』



「神様……あなたは……あんたは〜……」


 神様?

『あの黒い女がラファリィを転生させた張本人ですよ』

 それじゃああの女もしかして!

『もうボケないでくださいね』

 さすがに遊んでいられる状況じゃなさそうね。

『貴女やっぱり遊んでたんですかッ!!』



「わたしを騙していたのねぇぇぇえ!!!」

「うわッ!?」


 突如ラファリィの全身から白銀の魔力オーラが噴き出した。

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