其は西方の大魔獣!野生の矜持―楽園謳歌篇―
これは大陸の4大魔獣の1柱、西方で敵なしと言われた魔狼フェンリルである彼が、カレリンズ・ブートキャンプが原因で大魔獣から
僕はペットのフェンリルだよ。名前はまだないんだ。
えッ?
僕の話し方がおかしいって?
それはどうしたら僕はもっと可愛くなれるかを研究中だからなんだよ。
可愛いを極めなければ、ペット業界は生き残れないからね。
なんせこの業界は安穏として見えても
この間なんかも野良猫なる強敵が現れて、僕のお気に入り侍女の1人がハートを奪われてしまったんだ。
あの時の勝ち誇った
あれ程の屈辱と敗北感は産まれてこの方、味わった事がないよ!
まあ
ご主人様がいる限り、僕のパラダイスは安泰さ。
だけど気をつけないと、また僕の楽園に魔の手が伸びないとも限らない。『可愛い』を極めるために
全く、人気者も大変だよ。
えッ!?
ただ尻尾振ってぐーたらしているだけだろって?
ちっちっちっちっ!
バカ言っちゃいけないなぁ。
この業界はキミ達が思っているより遥かに過酷な世界なんだ。
だから僕はおしゃれに余念がないのさ。最近のマイブームは首輪の色と付属のアクセだね♪
なんだって?
それのどこが努力だって?
ホントにわかってないな〜。
キミ達女の子にモテないでしょ?
可愛く小綺麗にしないと女の子達にチヤホヤしてもらえないんだよ。
愛玩動物は可愛いが命なんだ。
可愛いくない奴に餌を貰う権利も可愛がって貰う資格も無いね!
んッ?
魔狼フェンリルの矜持や野生の誇りはどうしたって?
ふッ!
そんな下らないもの忘れたよ。
だいたい野生なんて生っちょろ過ぎるんだよ。
あんなのぬるま湯だよ。僕って敵なしだったしさぁ。
だけどこの愛玩動物の世界は日々お互いの可愛いさを競い合って生き馬の目を抜く厳しいものさ。さっき言った野良猫みたいなのはわんさかいるんだ。油断も隙もあったもんじゃない。
常に可愛いの最先端を行き、僕が可愛いの流行を作るトレンドリーダーでなくっちゃ。
この座をどいつもこいつも狙ってる。
その様相は言うなれば可愛いの戦場!
生きる為の
あっちじゃ日がな1日ダラダラしてただけ。
こっちじゃ時には自分自身さえ犠牲にしなくちゃならない。
この間も凄まじい試練が僕を襲ったんだ。
以前
え? パパンって誰さって?
パパンはパパンさ。ご主人様の父君に決まっているじゃないか。
まあパパンが困っていたんで、ご主人様が自ら元山賊たちを再教育する事になったんだ。
その再教育プログラムがいま思い出しても鳥肌の立つ『カレリンズ・ブートキャンプ』だよ。
この再教育は常軌を逸する厳しく激しいものだった。
見てるだけの僕でさえゾッとしたね。
さすがご主人様イカれてやがる――もちろんいい意味でだよ。
しっかし元山賊たちもよく無事だったよなぁ。
ご主人様も死なないように気を配ってはいたみたいだけど、逆に死んだ方がマシって感じだったから、普通の人間なら発狂してもおかしくない状態だったんじゃない?
でも……だからこそだったんだろうね。
とんでもない悲劇が……
その日も僕はご主人様とキャンプへやってきて厳しい訓練に男達が悲鳴を上げてのたうち回る様を鑑賞していたんだ。
この時までは他人事だったんだ。
だけど――
「んー……ちょっと厳しすぎたかしら?」
……ちょっとか?
死んではいないけど、何人か死にかけてたぞ。
ほら、そこのヤツ泡吹いて起き上がらないし。
「反抗しなくなったのはいいんだけど、気力が完全に失われているのよねぇ」
ご主人様は元山賊達の様子を眺めながらため息をついた。
「ちょっとカンフル剤が必要ね」
カンフル剤?
「あーえーっと……ムチだけじゃなくて飴がいるって意味……」
ご主人様は説明しながら僕の方へ顔を向けて固まった。
「ふむ……使えそうね――全員傾注!!!」
ご主人様の魔力を載せた声は訓練場全域に響き渡った。
「日々厳しい訓練によく耐えた!誰一人欠けることなくよく耐えている――」
耐えるもなにもご主人様に睨まれて泣く事も嘆く事も反抗する事も脱走する事も不可能じゃ……
「――まだ終わりではないが貴様らに少し褒美をやろう」
ご主人様は僕の両脇をむんずと掴んで、その場の全員に見えるように掲げた。
「私のフェンリルを
心に潤いを失い、癒しを求めていた男達の目が怪しく光った。
「さあ、訓練を終えた者から順に許可するぞ」
「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
男達の咆哮の様な雄叫びが訓練場に響き渡った。
そんな事くらいで、目を血走らせて、人間ってアホだねと僕は彼らを傍観してたんだ……
だけど、この時の僕はまだ知らなかった――真の恐怖をッ!
えっ? モフモフされる程度の事でだって!?
何を言っているんだキミ達!
髭もじゃの
この辛さがキミ達に分かるかい?
集団でレイプされた様なもんだよ!
まあ確かに僕は可愛い。
はっきり言って可愛い。
だから男達が理性を失い、僕に群がるのも仕方がないんだと理解はしてるよ。
僕の可愛さ天元突破!
僕の可愛さは天使にも及ぶ可愛さだ!
罪作りだよね僕って。
全く可愛い過ぎるのも考えものだよ。
まあ、こんな風に愛玩動物っていうのは、こんなに過酷なんだよ。
あー嫌な事思い出しちゃった。
誰かに癒してもらおうっと。
今日はどの子にしようかな?
撫でてもらうだけなら、この屋敷の美人侍女と可愛いメイドの誰でもいい。餌をもらえるなら、誰にだって愛想は振りまくさ。
だけど抱っこして癒してもらうならCカップ以上は無いとダメだ。これは絶対必要条件だ。
「フェンリルちゃ〜ん」
あッ! ママンが僕を呼ぶ声だッ!!!
僕は声の発生源目指して一目散に走り出す。
ママンって誰だって?
ママンはママンさ。
「わん♡わん♡」
「ンーッ! 今日も可愛いわぁ♪」
走り寄った僕をママンがその豊満な胸に抱えてくれる。
ママンはサイコーだよ!
なんだろう?
ボリューミーで、ふわふわで、あったかくて、もう夢心地さ!
これに対抗できるのは
彼女も最近バストサイズが急激に大きくなっていい感じになってきている。
ご主人様は鍛えているだけあって、大きいだけじゃなく張があるんだ。マシュマロのママンと弾力のご主人様……甲乙つけ難し!
おっぱいマエストロの僕でも判定が難しいよ。
現状はママンのパイオツだけど、ご主人様には未来があるからなぁ。
ご主人様のパイオツ……いい弾力だな……良いものなのですかって?――サイコーだな!
あと2、3年もすればママンのパイオツを超える逸材だね。
だけど現時点では総合力でママンが圧倒的じゃない?
なにせママンにはあれがある――
「今日はテラスにしましょう」
そう言って草花が生い茂る温室テラスに入り椅子に腰掛けると、ママンは僕を膝の上に乗せて背中を優しく撫でる。
ぐふふふ……何という弾力と柔軟性の融合!
暖かくて、柔らかくて、良い匂いがして……この幸福感は野生のリビドーなど一瞬で消し飛ぶ。
そう……ママンにはこれが……至高のパーツ
――このフトモモがある!
僕はパイオツパイオニアだけど、実は隠れ太ももソムリエでもあるのさ!
数々のフトモモを経験した僕から言わせるとご主人様は筋肉質過ぎる。ママンには到底及ばない。まだまだ
今日もこの膝上でダラダラしながら背中を優しく撫でられる幸せ――
――また生まれ変わる事ができたとしても……僕は飼い犬になりたい……
『この駄犬もう終わっていますね……』
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