最終章 病んでてもハーレムを維持する。愛で。

第48話 奪還作戦の計画をするハーレム(前)

「ふぅ、やっとみんなシャワー浴びてきたか。まったく、みんな心が弱くてイヤになるよ」


「............でもさ、チカがあんな女に盗られてショック受けないわけないよ。藍朱あいすこの・・指輪のこともあるし......」


「だからボクはいつも言ってたでしょ。そんなオモチャの指輪なんてさっさと捨てた方がいいよって。そんな重いモノ持ち続けてるから今回のことで気を失うほどショック受けるんだよ」


「......っ!」


「だけど......あたしも、そんなに簡単には割り切れないよ。準備してた会社乗っ取られて、築き上げてきたものを横から奪われて、そんなにすっぱり割り切れないって」


唯桜いおさんも。ボクたちに黙って自分だけ抜け駆けして知火牙ちかげと会社立てようとするから天罰だよ」


衣莉守いりすちゃん......そこまで言わなくても......。そうだよ。私だって必死でちーくんを騙してようやく赤ちゃん身籠ったっていうのに、まるで『そんなの意味ない』って否定されてるみたいで、ショックだったよ......」


「実際、意味ないんだって。知火牙は正気なら赤ちゃんできたくらいでお嫁さんにはしてくれないよ。いや、それもひどい話ではあるんだけどさ。知火牙に内緒で勝手に妊娠した玲有れいあさんにあの女を攻める資格はありませんよ」


「うっ......。そうかもだけど......」



 ボクも含めて唯桜いおさん以外は、桃郷凛夏もものさとりんかからの最悪のビデオレターが届く直前まで、知火牙不足で幻覚に苛まれながらオナってたからメス臭がプンプンしてたし、唯桜さんも含めてボク以外の3人は動画のショックで失禁してた。

 そのままじゃこれからの話ができないからってことで、一旦それぞれを自分たちの部屋に帰してシャワーを浴びさせた。


 1時間くらいしてからもう一回知火牙の部屋に戻ってきて集まって今。

 これだけ時間があったのに、まだ絶望顔のまま立ち直れていなさそうな3人に、正直ボクは失望した。


 この子たちの覚悟はその程度だったのかってね。

 ショックを受ける気持ちはわかる。ボクだって悲しいし悔しいしムカついている。


 でも、絶望してたって知火牙は戻ってこないんだ。

 だったらすぐにでも取り戻す準備するしかないじゃないか。


 なのに、いつまでもウジウジグズグズとしょぼくれてみっともない。

 その程度の気持ちでボクの知火牙のそばにいようとしてたなんて、笑わせてくれるよ。


 そのくせ、いっちょ前にボクに口答えするんだからいただけないね。


「みんなさっさと切り替えてよ。あんまり長いことウジウジされてたらうざいから」


「............衣莉守ちゃんって、冷たいよね。みんなが自業自得で責められるのは当然だから構わないとして、あなただけあの動画でそこまでショック受けてなかったみたいだし。それに昔、チカが他の女に奪われたときだって平然としてたし? 実はあんまりチカの事好きじゃないんじゃないの?」



 ......は?

 藍朱ごときが何をボクに偉そうなこと言ってんだ?


「はぁ? ボクが知火牙のことを好きじゃないだって? あのとき・・・・、ボクが平然としてただって!? 何ふざけたこと言ってんだ」


「だってそうでしょ? 普通、あんなのショックで何もできなくなるに決まってるもん。すぐにストーカーを始められた衣莉守ちゃんは、大してショック受けてなかったんだ。大して、チカのこと、好きじゃなかったんだ......」



 うざ。


「ウザすぎだから。藍朱って昔からそうだよね。ちょっと良くないことが起こったらすぐにウジウジして諦めてさ。情けないったらないよ。ボクは知火牙を心の底から愛してる。命をかけたっていい。あのとき、ボクがあれからどれだけ苦労したと思ってんだ。知火牙を奪った女どもを消して消して。消して消して消して消して消して消して消して消して。ショックで頭おかしくなって想像妊娠してただけの藍朱にだけは言われたくないよ。ボクはそんな藍朱にだって情報を流してやってただろ。藍朱なんて、あのときオナるばっかで何もしなかったメンヘラ女のくせに、知火牙の彼女になろうとしたのとか、ほんとに図々しいよね」


「はぁ!? いっつもいっつも藍朱のことメンヘラメンヘラってバカにするけど、衣莉守ちゃんの方がよっぽどだからね!? っていうか、いま昔の話蒸し返さないでくれないかな!?」


「先に蒸し返してきたのは藍朱だろ!?」


「............2人とも......うるさいよ......」


「唯桜さんは黙ってて!」


「ほんとうるさいから」



 ......玲有さんまで余計な口を挟んできて......ってなんで玲有さんも唯桜さんもそんな穏やかな顔してるんだよ......。


「なに2人とも。なんで笑ってるの。もう知火牙のこと、諦めて解脱しちゃった感じ?」


「ちげぇから。けど、あんたらのいつも通りのアホなやり取りみてたら、あたしもちょっと落ち着いたっていうか」


「だね。私も、無様な言い争いしてるメンヘラ幼馴染ちゃんたち見てたら落ち着いてきた。お礼を言うのは癪だけど、ちょっとありがと」


「「うざ」」



 ............まぁいいや。みんな表情に生気が戻ってきてるし、これからの動きには都合がいい。


 いくら相手の正体がつかめてるって言っても、居場所とか詳細はまったくわからないままなんだ。人海戦術を使うしかない。

 そのためにはこの子たちには絶望でうなだれててもらっちゃ困るんだ。


「ふぅ。まぁそんなのはどうでもいいよ。みんなの意識がちゃんとしっかりしてきたみたいでよかった」


「え、なに三頭みずさん。私たちのこと気遣うようなこと言うなんて、槍でも降ってくる!?」


「うるさいよ、玲有さん。違うから。みんながちゃんとしてくれないと、知火牙を奪還する作戦を練れないからだよ。正気を保って作戦を一緒に考えてくれないと困るからだよ。昔の藍朱みたいな役立たずはいらないからね」

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