第46話 三頭衣莉守への挑発
<はい、ウチにお任せあれ! ま、昔のことなんて全部忘れて、これからウチと新しい想い出をもう一度積み重ねていけばいいんだよ>
コ、コイツっっっ!
リアルタイムでボクたちの心を読んでるんじゃないかってくらい的確な話題転換をしてきやがるな!
ボクが想い出を大事にしてるってわかっててこういう情報を出してきてるんだろうな。
小さい頃から
ボクのその自負を挫きに来てるんだろう?
ボクももうすでに満身創痍。だけど動画の続きを最後まで見るのは僕の責任だ。
動画の主、
知火牙自身のことだって、必ず取り返す。
名前を隠してたって、住所を隠してたって、そんなのムダだよ。
ビデオに登場してきて一目見て気がついたよ。お前が桃郷凛夏だってことはね。
髪はピンクだし、顔や背丈、体つきもさすがに中学時代とは少し印象が変わってるけど、それでもわからないはずない。
ボクが唯一取り逃がした、知火牙を奪った大元凶。知火牙がハーレムとかいう意味不明なものを作ろうとしだした原因。知火牙の初体験を奪ったゴミ女。
藍朱は桃郷凛夏のことは知らないはずだし、他の2人と出会ったのはあいつが遠くに引っ越した後だから知る由もないはず。
この中だとボクしか知らない相手。
ボクだけは、こいつのことを知ってるからこそ、他の3人と違って何を言われたって気を失うほどのショックを受けるまでには至らない。
知火牙のことをボクが必ず取り戻すと思えるから。
それにしても......。
知火牙の童貞を奪い去られて、知火牙が大人数でのプレイに目覚めさせられて、憎くて憎くて仕方なかった。
だけど、それでも遠く離れたとこに移り住んでったし、関係してた他の年増女は全員ボクが葬ったから知火牙との接触は完全に途絶えてたはずだし、特に脅威じゃなかったから捨て置いたのに......。それが間違いだった。
この状況、ある意味ボクのせいだ。ボクの怠慢で、あいつを放置したから。
だからこの女が力をためて知火牙を攫って......あまつさえ、こんな洗脳みたいなことをさせてしまった。
知火牙の隣にいる権利を、お嫁さんの座を、奪われた。
見たところ、知火牙には今、昔の記憶がないのかもしれない。
桃郷凛夏がどうやって知火牙をこんなにも腑抜けにしたのかわからないけど、自慰でイってたスピードを見ても、頭のおかしい尋常ではない様子を見ても、桃郷凛夏への依存度合いを見ても、何かしらのクスリを使われて中毒にされたり記憶を曖昧化された上で洗脳調教されたんじゃないかな。
ボクも昔、知火牙の種を奪い取ったカス女どもから情報を引き出すためにそういう手を使ったこともあるし、似たようなことをされたのかも。
でもボクじゃ知火牙を油断させて洗脳するなんてできなかった。全部準備の途中で知火牙にバレて、力づくで辞めさせられた。
それを乗り越えたってことは相当の下準備と隠蔽工作を施して、相当の劇薬を使ったってことで。
あの女の執念の深さを物語ってる。
<**さま......。そう、ですよね>
<そうだよ。それにウチは旦那さまのために汚いことだっていろいろやってきたんだよ? そんなウチのためにもたくさん素敵な想い出を作ってもらわないとね♡>
<ですよね。**さまへの恩に報いるためにも、夫婦としてたくさん幸せな想い出作っていきましょう!>
くっっっっっっっっっそぉぉぉぉぉぉぉぉ......。
知火牙のために一番たくさんの人間を消して、一番手を汚したのは絶対にボクなのに......。
まぁそもそも知火牙はそのことを知らないだろうし、そのうえ今の知火牙は過去の記憶もないみたいだし、しょうがないんだけど......っ!
だけど、知火牙のために一番無理をしてきたのはボクなのに。
悔しいよぉ......。
ボクはただでさえ中途半端な立場なのに。出会ってからの年月は藍朱に、初めての妊娠は玲有さんに奪われて。
会社を乗っ取られた唯桜さんは、今となってはボクより微妙な立場かもしれないけど、一番に知火牙に重要な仕事を任せてもらったことがあるって意味では、信頼の度合いはボクらの中で一番かもしれない。そういう意味では、ボクには今、なんにもない。
そんな中で唯一の一番の自負だった知火牙のための努力の量を否定されるなんて、悔しいよ......っ。
けど、この程度でボクが折れるだなんて思ってるんだとしたら、ちゃんちゃらおかしいよ。
動画の残り時間もあと僅か。ボクへの口撃はこれが最後なんだろ?
残念だったね。他の3人は心ヨワヨワだけど、ボクはみんなと違ってそんなに簡単には折れない。
昔、桃郷凛夏と不愉快な仲間たちに知火牙の童貞もたくさんの経験も奪われたって知って絶望したときだって、藍朱はすぐに折れてアタマがおかしくなって想像妊娠するだけのポンコツになってたけど、ボクは違った。ちゃんと対処すべき女どもに対処した。
知火牙とは違う高校に進むことになっちゃってからも、玲有さんや唯桜さんが現れたときにだって、ちゃんと影から表から知火牙のことを見守って情報収集は怠らなかった。
どんなときでもボクは粘り強く知火牙のために頑張り続けてきたんだ。
今回のことだって、絶対に見つけ出して取り返してみせるんだ。
だから............だから、涙を流すのはここが最後だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます