プロステル王城でオヤツたーいむ!
「さて、どうしますかねー。」
口喧嘩中のおっさん2人を眺めながら千春が呟く。
『用事はまだ終わってないんでしょ?』
「別に急いでないもん、それに王都の観光もしたいじゃん?」
「例のアレ?」
「うん、商業ギルドに行けば場所も分かるだろうしメインは観光!」
千春、アルデア、アイトネが話していると、広いテーブルで寛ぐ頼子達が千春に声を掛ける。
「千春~。」
「なにー?」
「今日こっち泊るのー?」
「フェアリーリング作ってあっちで寝るのもありー。」
「晩御飯はー?」
「あ~・・・。」
千春はいまだに口喧嘩をしているおっさん2人に声を掛ける。
「お父様、シグリップさん、今日晩御飯作ったら食べます?」
「何を作るんじゃ?」
ピタッと喧嘩を止め答えるエイダン。
「こっちの食材見てから決める感じですけどー、特産品とか有ります?」
千春はシグリップを見るが、エイダンが答える。
「ココはジブラロールと似ておるからな、食材もそう変わらんじゃろ。」
「は?お前の国より良いもの有るわ!」
「うるさいわ!塩でしか味付けしてない飯でも食っとれ!」
「あぁ?お前の所も同じようなもんだろ!」
「ふんっ♪」
エイダンは勝ち誇ったように鼻息を鳴らす。
「チハル、こやつに何か食わせるのか?」
「そのつもりですけど?」
「シグリプ、有難く思え!儂の娘が料理を作るんじゃ。」
「・・・だから何だよ、飯は俺でも作れるぞ。」
「お前の飯は塩で焼いただけじゃろうが!」
「普通そうだろうがよ!」
「チハルの飯を食って同じ事が言えるか見ものじゃな!」
フフンと勝ち誇ったように言うエイダン。
「チハル、コヤツを驚かせてやってくれ。」
「アハハハ・・・は~い。」
空笑いで答える千春、横ではJK軍団は声を殺しながらも笑い転げていた。
「と言う訳で、晩御飯作る事になりました、何食べたーい?」
おっさん2人を放置し千春が言うと皆が声を上げる。
「やっぱすき焼きっしょ!」
「カレー!」
「ミオ・・・カレー好きだな、私はとんかつ!」
「カツカレーで良くね?」
「唐揚げも捨てがたい。」
「照り焼き~♪」
『パフェ!』
「メンチカツかコロッケ!」
それぞれが料理を言い始める。
「ユラ何食べたい~?」
「んー、肉!」
「肉ね~、レンちゃんは?」
「えっとぉえっとぉ、チハルおねえさまのご飯だったらなんでも!」
「かわいいなぁ、イーナは?」
「えっと!えっと、イーナははんばーぐが良いのです!」
「うんうん、可愛いねぇ。」
幼女組のリクエストを聞く千春は立ち上がる。
「取り敢えず厨房借りますか~。」
千春が言うとサフィーナとサリナが答える。
「結局何を作るの?チハル。」
「お手伝い致します。」
「んー、どれも材料あるし色々作ろ、時間もたっぷりあるし。」
千春はスマホを見ると15時過ぎた頃だ。
「・・・オヤツの時間だね。」
「「「おやつー!」」」
幼女組が目をキラキラさせながら叫ぶ。
「と言う訳でおやつ食べたら夕食作りに行きまーす。」
千春は気を取り直しアイテムボックスからスイーツを取り出す。
「お父様達もたべますー?」
「ケーキか?」
「ん?何だそれ。」
「おやつです。」
「こんなに沢山食べるのか?っていうか物凄く甘い匂いが・・・。」
「多分残りませんから、好きなのどうぞー。」
コンビニスイーツとスーパーのスイーツ、そしてシャリーちゃんが作ったケーキを並べる。
「私シャリーちゃんのケーキ♪」
「うちはエクレアもーらい♪」
「ショートケーキいただきぃ!」
「ユラもー!」
「わたしもユラちゃんとおなじー!」
「イーナもおなじのがいいのです!」
『私はこれとこれとこれとこれー♪』
ワイワイと騒ぎ始める女子達、それを見つめるおっさん2人。
「・・・儂らも食べるか。」
「・・・あー、そうだな。」
おっさん2人もソファーに座り千春からスイーツを受け取る、そしてオヤツタイムが終わるとドヤ顔でシグリップを見るエイダン、シグリップはエイダンに土下座をしながら叫んだ。
「ジブラロールの圧勝だ!」
「じゃろ?(ニヤリ)」
おっさん達の対決はエイダンの勝ちの様だ。
「お父様急に消えて驚いてないかな。」
『シャリーちゃんに伝言しとくわねー♪』
「エイダン。」
「なんじゃ?」
「ジブラロールには神託出来る聖女が何人いるんだ?」
「チハル何人おるんじゃ?」
「・・・隠れ聖女も居そうなのでわかんないです、少なくとも10人以上は確定ですね~♪」
エイダンとシグリップはそれを聞き表情を無くした。
「どうなってんだお前の所は。」
「儂に聞くな、儂の娘3人とも皆聖女じゃぞ。」
「羨ましいじゃねえか。」
「チハルとユラは儂の息子と婚約しておるからまだ良い、チェラシーは産まれたばかりじゃ、聖女と知られたら・・・はぁぁぁぁ。」
「聖女ねぇ・・・。」
シグリップはチラリと千春達を見た後、まだシュークリームを頬張るアイトネを見る。
『そんなに見つめられたら恥ずかしいわぁ~♪』
「失礼した。」
『冗談よ、あなたの想いは判るわ、神を信じ願い祈っても何も変わらなかった。』
「あぁ・・・兄の為に祈った、しかし・・・何も変わらず兄は逝った。」
『神は世界の管理をしているだけなの、世界に危機が起きる程の災害であれば手を貸す事もあるけれど・・・。』
「俺が祈った神は居ないとその時知った。」
『・・・私に祈っても一緒だったわよ。』
「・・・。」
沈黙するシグリップは千春と目が合う。
「チハル・・・何故泣いている?」
「だってぇ、家族が死んじゃったんでしょ?」
ぽろぽろと涙をこぼす千春。
「あぁ、チハルが泣く事はないだろう?」
「・・・おかぁさんが死んだとき思い出しちゃって。」
「チハルの母は女神なんだろう?」
「・・・うん、こっちで女神として生まれ変わったの。」
「どういう事なんだ?」
「なんか色々あって知らない所で復活してた。」
千春は泣きながら苦笑いで答える。
「この国の聖女とは正反対だな。」
シグリップは笑みを浮かべながら呟く。
「こっちの聖女と言うと、ランスルーセン教か?」
エイダンはシグリップに話しかける。
「あぁ、あの教会の聖女として祀られている女だ。」
忌々しいと言わんばかりの声で答える。
「何が有ったんじゃ?」
「あの時兄の前で祈りを捧げた、だが兄は死んだ、そして出た言葉が『信仰が足りなかった。』だ。」
「・・・ほぅ?」
「この国であの教会は力が強い、貴族連中はあの神を信じお布施をし自分は幸せになれると思ってやがる。」
「お前が言えば良かろう。」
「無駄だな、信仰心というのはバカにならない、それこそ戦争が起きる程にな。」
怒りを抑えようと拳を握りながら話すシグリップ。
「ふむ、他国の事じゃ、儂は口出し出来ぬが・・・。」
チラッと目線を動かすエイダンは千春を見る、千春は頼子達とコソコソと話を始めていた。
「教会焼き払ったら?」
「いやぁ、貴族さん達も絡んでるんじゃん?」
「諸悪の根源は聖女モドキじゃね?」
「ありえるー、教国みたいに賄賂やら裏金動いてそう~。」
「一回行ってみる?」
「えぇ~?ヤバくね?」
「他国から来た信者みたいな?」
「めんどくさーい、もうロイロちゃん達に焼き払ってもらったら?」
「ソラ、それは最後の手段だよ。」
「いや、最後でもヤバいだろダイア。」
物騒な話をしている千春達にエイダンとシグリップは苦笑いする。
「アイトネー。」
『良いわよ?』
「おっけー。」
「千春、無言でアイトネ様と話進めるのやめてよ。」
「何がおっけー?」
「ん、教会に突撃して聖女対決!そんで目の前でアイトネ呼ぼうかなーって思っただけ。」
「ま、一番手っ取り早いか。」
「でもさー・・・。」
皆の話を聞いていた花音が呟く。
「王様の神様嫌いは変わらなくね?」
花音はそう言うとシグリップを見る。
「ちょっとまて、別に神を嫌ってる訳じゃねぇぞ?」
「そうなの?」
花音は首を傾げる。
「神ランスルーセンは信用してなかっただけだ、実際居ないとしって逆にホッとした。」
「目の前に女神がおるからのぅ。」
「あぁ、神の存在なんぞ人間の創造物としか思っていなかったからな。」
『信じた?』
「勿論です、女神アイトネ。」
シグリップはアイトネに笑みを浮かべ頷く。
「私もさー、毎日お祈りしてたなー、ね、ルプ。」
千春は横にピタリとくっつき心配そうにしているルプを見る。
「あぁ、俺の神社に毎日来てたからな。」
「だねぇ~。」
千春はルプの首元に頭を埋める。
「それじゃ教会はいつ行く?」
「明日じゃん?」
「今日は今から晩御飯作るっしょ。」
「腹が減っては戦は出来ぬー!」
「そうだそうだー!」
「アイトネ様に協力してもらうなら美味しい晩御飯作らないとね!」
麗奈はやる気満々で皆に言うと、皆はアイトネを見る。
『たのしみ♪私もがんばっちゃう♪』
「・・・やっぱ普通のご飯にしよう、アイトネが頑張ったら碌な事にならないわ。」
『やーん!美味しいご飯たべたーい!』
アイトネの言葉に皆は大爆笑しながら厨房へ向かった。
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「・・・ん?お前。」
シグリップはペット達と寛いでいた獣人を見つけると声を掛ける。
「・・・。」
「お前・・・あー・・・えーっと・・・ふぁー・・・ファーノ!?」
「・・・覚えてたっすか?」
「あぁ、最近見ないと思ったら何してんだテメェ。」
「いやぁ、チハルお嬢にルジイタ領で拉致られたんっす。」
「今ルジイタに居るのか、何してんだ?相変わらず悪い事してんだろ。」
「・・・まぁ、言う程はしてないっす。」
「で?なんで拉致られたんだ?悪い事したんだろ?」
「いや、王都に居た事あるって言ったらロイロ姐さんにドラゴン姿で鷲掴みされて拉致られたっす。」
「・・・そうか。」
「うぃっす。」
「で?」
「王都観光するから案内しろって言われたっす。」
「・・・それで?」
「それだけっす。」
「・・・頑張って案内しろよ。」
「うぃっす。」
2人は無言になり苦笑いすると千春達の後ろをのんびり歩いてついて行った。
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