ぱわーすとーん!

「ただいまー!」

「お帰り千春、どうだった?」

「うん!熟睡した!」

「・・・ダメじゃん。」

「だってぇ、面白くないんだもん。」

 千春はブーと頬を膨らませながら頼子に答える。


「なにやってんの?」

 千春は頼子達の手元を見る。


「街で買ったお土産物色してる。」

 頼子はそう言うと石を見せる。


「おぉー綺麗!」

「だよねー、パワーストーンっぽくない?」

「ぽいぽい!」

 バラバラと不揃いながらも綺麗に磨かれた石を見ながら千春は1つを手に取る。


「水晶?」

「ちょっとピンクだよねコレ。」

「ピンク水晶?」

「かなぁ、桜みたいで綺麗じゃん?」

「うん、めっちゃ綺麗、これいくらだったの?」

「大銅貨1枚。」

「やっす!100円?」

「安いよねー。」

 親指よりも大きいピンクの水晶を見ながら千春は鑑定を掛ける。


「鑑定・・・うん?ローズクオーツ?」

「バラなの?」

「っぽいよ?」

「桜だよねぇ。」

「桜だねぇ。」

 並べられた石をまた手に取る千春は、また鑑定を掛ける。


「鑑定、これアメジストだ。」

「アメジストって紫じゃないの?」

「グリーンアメジストだってさ。」

「へ~。」

 美桜達も巾着から取り出した石を光に当てながらキャッキャと楽し気に話す。


「チハル、これ鑑定してー。」

 美桜は乳白色の交じった水色の石を千春に渡す。


「鑑定、ターコイズだねコレ。」

「色々あんだねー。」

「同じところで取れるのかな?」

「違うっぽいよ、こっちの王都で仕入れた石を売ってるって言ってた。」

「お店の人が?」

「うん、おじいちゃんだった。」

「へ~。」

 色とりどりの石を見ながら千春は鑑定を掛けて行く。


「鑑定!・・・これはブラックルチルかー、綺麗だなぁ~。」

「ルチルって金じゃないの?」

「ブラックだってさ。」

「へぇ~。」

 麗奈の袋に入っていたブラックルチルを手に取り千春が答える。


「これ結構形揃ってるね。」

「ブレスレットとか作りたいねー。」

「オソロで?」

「オソロにするならもっと買わないとダメじゃん?」

「大きいと邪魔だからなー、小さいので良いんだけど。」

「全部指より大きいね。」

「んじゃネックレスとか?」

「イイね!」

「ほら、誕生石とか有るじゃん?」

「あるね。」

「こっちで流行らせたらおもろくない?」

「誰が流行らせるんよ。」

 美桜の言葉に突っ込む青空。


「そりゃウチらっしょ。」

「聖女が流行らせる誕生石!」

「イイね、メイソンさんかダーサンあたりに言ったら作ってくれそうだけどなー。」

「これって土魔法で加工出来ない?」

「どうだろ。」

 頼子は適当に選んだ石を手に取り魔力を流す。


パンッ!


「キャァ!」

「大丈夫!?」

「なんで破裂すんの!?」

「怪我してない?」

「うん、大丈夫。」

 頼子は破裂した石を手にしマジマジと見る。


「なんでだろ・・・普通の石なんだけどなぁ。」

「魔力と何か関係してんのかな。」

「どだろー、土魔法使えるのって私とレナとヒマリだよね。」

「え”、それ見た後私に魔力流せと?」

 麗奈は嫌そうに頼子を見る。


「ヒマリ~。」

「やだよ!」

「チッ。」

「破裂したのってどれ?」

「この青いの。」

 頼子は同じ石を手に乗せ千春に見せる。


「鑑定・・・鑑定じゃ破裂しないのになぁ。」

「で?コレ何?」

「フローライトだって。」

「他のは大丈夫かなぁ。」

「ヨリやってみ?」

「・・・いやぁ、ちょっと怖いな。」

「・・・そうだ!」

 ポンと手を叩く千春はスマホを手にする。


「もしもーし!」

『どうしたんだい?千春。』

「お父さん、今さ、石に魔力流したら爆発したんだよ。」

『危ない事しちゃダメだよ?』

「まさか爆発すると思わないじゃん!」

『それで?何の石に魔力流したの?』

「フローライトって鑑定したら出た。」

『フローライト・・・あぁ~蛍石か。』

「知ってるの?」

『うん、加熱すると発光するんだ、それが蛍みたいだから蛍石って言うんだよ。』

「マジか、だから破裂したの?」

『どうだろうね、魔力流したんだよね?』

「うん。」

『熱したわけじゃ無いんだよねぇ、熱し過ぎると弾ける事が有るんだよねぇ~。』

 大樹は電話の向こうで唸る。


「他の石は大丈夫かな。」

『他に何が有るんだい?』

 千春は手に持っていた石を見ながら話す。


「えっとねぇブラックルチルとー・・・。」

『・・・千春、なんだって?』

「ん?ブラックルチル。」

『それ・・・何処で手に入れたの?』

「これ?旅行先の大陸の、港町だよ、おじいさんの話だとこっちの王都で仕入れたって。」

『マジか・・・カズヤ!ショウヘイ!』

 大樹は電話の向こうで叫ぶ。


「どうしたの?」

「さぁ?ブラックルチルって言ったらお父さんが騒ぎ出した。」

 千春はそう言うとスマホを離しスピーカーにしてテーブルに置く。


「へー、珍しいのかな?」

「でもコレって日本でも買えるじゃん?」

「買えるね、前見たもん。」

 JK達は千春の手に乗るブラックルチルを見ながら呟く。


『千春!』

「ほいほーい。」

『仕入れ先を調べる事は出来るかい?』

「おじさんに聞けば判るかな?」

 千春はそう言いながら麗奈に問いかける、麗奈は首を傾げる。


「ちょっと聞いてみないと分かんないけどぉ~。」

『そうか、それじゃ良かったら聞いて欲しいな。』

「なんで?」

『それ欲しかった鉱石の1つなんだよ。』

「へー・・・ブラックルチルが?」

『うん、ルチル・・・それとイルメナイトだね。』

「いるめないと?」

『あぁ、チタンって聞いた事あるだろ?』

「うん、あの固ったいやつでしょ?ゴルフクラブとかに使ってるやつ。」

『そう、それ、合金にすると更に色々使えるし、なんなら生体組織適合性も良いんだ。』

「へ~・・・。」

 千春は良く分からず適当に返事をする。


「千春わかってないっしょー。」

「ヨリわかんの?」

「わからん。」

「あれじゃん?人工の骨とか関節とか。」

「骨折の時にプレートとかボルトで使ってるねー。」

「おぉ、流石医者の娘!」

 花音の言葉に大愛がパチパチと手を叩く。


『大陸間の交易が出来ればなぁ・・・。』

「あ、それ出来るよ、さっき話してたもん。」

『本当か!?』

「うん、多分・・・ねぇサフィー。」

「はい、港町ルジイタにまずは中型飛行艇運行します、確定事項ですね。」

 サフィーナが答えると、パパさんズが大はしゃぎしている声が聞こえる。


『よっしゃぁ!軽量耐熱素材確保できるぞぉ!』

『いや、まずはどれだけ精製出来るかだ。』

『そうだな、いや、石油コークスが必要だろう?』

『噂の黒い燃える水ってのを取りに行くのが先か?』

『どっちも並行してやりたいな、クロール法を使わなくても魔法でイケるかもしれない。』

 盛り上がるパパさんズの声を黙って聞くJK軍団。


『千春!』

「なに?」

『そっちの王都に行くのかい?』

「んにゃ?行く予定は無いよ?」

『行かないの?』

「なんで?」

『・・・行ってほしいなぁ~♪』

「・・・どうする?みんな。」

「いんじゃね?」

「来たばっかだし、いんじゃない?」

「距離どれくらいあんのかな。」

「厳しそうならスイーツ買って来ればワンチャン秒で行けるんじゃね?」

「ダイア・・・それは最後の手段にしようよ。」

「そうだよ、いつもアイトネ様に送ってもらってるし。」

『呼んだー?』

「「「「「「「「よんでなーい!」」」」」」」」

 そして王都行きが決まった。









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