ドラゴンの里で実食!

「うまぁぁぁぁい!!!!!!」

「うるさいわね!黙って食べなさい!」

「グルァロゥロル!無理だ!」

「私は今ママドラって呼ばれてるの、その名前はチハル達が認識出来ないからママドラって呼んで頂戴。」

「わかった・・・。」

 パパドラはそう言うとまた食事を見ると口に入れる。


「まだ有りますからね~。」

 千春はムニエルを皿に乗せテーブルへ運ぶ。


「アイトネ次何食べる?」

『ホイル焼き!』

「はいは~い、ミオ~♪」

「は~い♪」

 美桜はホイル焼きをアイトネの前に置くと、ホイルを開く、バターとガーリック、そしてほんのりとレモンの香が漂う。


『いただきまーす!』

 手を合わせ再度いただきますと言い口に入れる。


「本当に女神までもがあの呪文を唱えるのか。」

「呪文じゃないわよ、食事をするときの挨拶よ、覚えておきなさい。」

 ママドラはそう言うと白身魚のムニエルを口に入れる。


「パパドラさん、他のドラゴンさんにも配りますよ~?」

「良いのか?」

「勿論!沢山作ってますからね♪」

 沢山の食材を獲って来たドラゴン達に料理を渡す侍女達、横では次々と魚が焼かれていた。


「羊焼けたよーん。」

「羊のスライス唐揚げは?」

「あ、それはあっちだよ。」

 日葵が指差すのは既に酒を呑み始めたペット軍団だ。


「酒のツマミなのね。」

「そのまま食べても美味しいよ。」

 パクパクと味見をしながら食べていた日葵は皿にのった唐揚げをまたパクっと口に入れる。


「行儀悪ぅ~い。」

「作ってる人の特権よ特権、ね!チハル!」

「そう・・・味見と言うツマミ食いは料理人だけの特権・・・美味いんだこれがぁ。」

 ちょくちょく味見をする千春はさも当たり前と言わんばかりに頷く。


「これが人間の飯か。」

「と、思うでしょう?」

 ペロリと一皿食べ終わったパパドラが呟くと、ママドラが返す。


「違うのか?」

「違うわよ、ジブラロール王国から近ければ近いほど料理の種類も味も良くなるわ。」

「なんだと?ジブラロールと言えば湖の先から海を越えた国だな。」

「えぇ、南から回れば陸地からも移動出来るわよ。」

「昔、一度行った事が有る。」

「あら、そうなの?」

「あぁ、人間の生活など興味が無かったからな、飯も食わなかったが、こんな美味い物を食えるなら行けばよかった。」

 残念そうに呟くパパドラにママドラがクスクス笑う。


「良かったわね、その頃は美味しい料理なんて無かったわよ、食事が美味しくなったのはこの1年ほど、チハルが料理を広めたからだもの。」

「ほぅ?それでは待てば近くでも食べれるようになるか?」

「そうね、一番近いジブラロール領だと・・・ハースかしら?」

 思い出すように呟くママドラは花音を見る。


「ハース領にもチハルの料理広まってましたよー、特に海鮮料理!」

「結構ハースでも作ったよねー。」

「フリエンツ国と交易広がってフリエンツ国も料理美味しいじゃん。」

「いや、フリエンツは天丼だけが異常に広がってるからなぁ。」

「やっぱハース領じゃん?」

 JK達に会話にパパドラが反応する。


「フ・・・フリエンツだと?」

「パパドラさん知ってるんですか?」

「あぁ・・・あのウンディーネが居る国だろう?」

「はい、マリーナ女王様の国です。」

「あの女の国とも交易しているのか?」

「はい、してますよ?」

 忌々しいと言うような顔でパパドラが千春達を見る。


「もしかしてマリーナさん苦手・・・的な?」

「苦手と言うよりも近寄れば一方的に攻撃される。」

「え?仲悪いんですか?」

「悪いな、物凄く。」

「えぇ~?マリーナさん良い人なのに。」

「チハル、マリーナさん人じゃない。」

「人型になれるし人で良いんじゃない?」

「そだね。」

「それで?なんで仲悪いんですか?」

 頼子はパパドラに問いかける。


「この里の若いドラゴンが海で狩りをしてセイレーン達を怒らせた。」

「ありゃー、何したんだろう。」

「たいした事はしてない、海の大物を取るために魔法を海に投げ込んだだけだ。」

「・・・獲物に?」

「・・・。」

 黙るパパドラにロイロがケラケラと笑いながら答える。


「海の獲物には雷撃じゃからなぁ♪」

「やっぱり電撃だよな。」

 ルプも頷きながら答える。


「もしかして海に向かって無差別に雷撃魔法を撃ちまくったとか?」

「あ~それでセイレーン達にも被害でたとか。」

「あそこらへんってさー、人魚さんとか私達乗せてくれたシャチ君とか居るじゃん。」

「うわぁ、それ巻き込まれてたら怒るわぁ。」

「っていうか確実に巻き込まれてるよねソレ。」

「うん、絶対巻き込まれてるわ。」

 そりゃ怒るわとJK軍団はジト目でパパドラを見る。


「・・・若い者がやった事とは言え悪かったなぁ~・・・とは思ってるぞ?」

「でも近寄ると攻撃されると。」

「あぁ、こちらから喧嘩を売るつもりは無いが、容赦なく魔法が飛んで来る。」

「ごめんなさいします?」

 話を聞いた千春がパパドラに問いかける。


「いや、話を聞いていたか?近寄る事すら出来んぞ?」

「直接話すなら呼びますけど?」

「は?誰をだ?」

「マリーナさん。」

 軽く言う千春はリリに声を掛ける。


「リリー、そこらへんにフェアリーリング作れる?」

「いいわよ~♪」

 リリはピョンと飛び上がりクゥクゥと一緒にフェアリーリングを作る。


「それじゃ呼んで来ますね♪」

 千春はそう言うとリリとサフィーナを連れフェアリーリングに消えて行った。



--------------------



「こんちわー!」

「チハル様!いらっしゃいませ!」

 フリエンツ王城の庭にあるフェアリーリングへ飛ぶと警備のセイレーンが声を掛けて来る。


「女王様いますー?」

「いえ、今はティスケリー様とジブラロールへ向かっていると思われますが。」

「あ、入れ違いかぁ。」

「どうします?」

 千春が言うとサフィーナが問いかける。


「アイトネー、マリーナさん今何処か分かるー?」

((マリーナちゃん?今は~・・・・・・チハルの旅館で温泉入ってるわよ。))

「さんきゅー♪リリ、ジブラロールに戻ろう、旅館に居るんだってさ。」

「は~い♪」

「それじゃまた来ますねー♪」

 千春はセイレーンに手を振る、セイレーンも慣れているのか笑みを浮かべお辞儀をすると千春は移動した。


「さて、箒でぴょ~んっといきますか。」

 箒を取り出と、千春とサフィーナは旅館に向かって一直線に飛んで行った。



-------------------



「こんちゃー!」

「いらっしゃいませ!・・・チハル様如何なされました?」

「マリーナ女王居ます?」

「はい、今フリエンツ国専用の浴室に。」

「ありがと!・・・え?専用?」

「チハルは聞いてないの?」

 サフィーナが問いかける。


「サフィー知ってた?」

「はい、あまりにも頻繁に来られるからとメイソンさんが増設しましたよ?」

「聞いてなーい。」

 サフィーナの案内で千春は旅館を歩き浴室に向かう。


「フリエンツ国専用の浴室かぁ。」

 そう呟く千春は暖簾の前に立つセイレーンに声を掛ける。


「こんちゃ!」

「チハル様、ご無沙汰しております。」

「ナラーシャさん久しぶりです!マリーナさん居ます?」

「はい、ご一緒に入られますか?」

「え”、いやちょっと話したいだけだから。」

「それではご一緒に入られてお話すれば宜しいのでは?」

「いやぁ!王族の人とお風呂はちょっと!」

「・・・チハル様も王族で御座いますよ?」

「・・・そうだったわ!でも話すだけだし、着替えないし。」

「着替え有りますよ。」

 サフィーナはアイテムボックスを開くが千春が手で止める。


「ごめん、一応私も持ってるけどね、ナラーシャさんちょっとお邪魔しますね。」

 ナラーシャはニコッと微笑み引き戸を開ける、千春は奥に入ると浴室の戸を開ける。


「マリーナさーん。」

「あら?チハルちゃん!一緒に入るの?」

「いやいやいやいや、ちょっとお話が~。」

「何かしら?」

 マリーナの横で一緒に話を聞いていたインパイ族のティスケリーが声を掛けて来る。


「私は聞かない方が良い?」

「大丈夫ですよ、ちょっと西の湖の先にいるドラゴンさんなんですが。」

 千春がそう言うとマリーナとティスケリーの顔つきが変わる。


「アイツ等が何かしたの?」

「やっぱり痛い目に会わせないとダメよマリーナ。」

「違います!ちがうちがう!」

 殺気を感じる事が出来ないはずの千春も、思わず引いてしまう程の怒りを見せる2人に千春は慌てる。


「あそこの長がロイロのパパさんで、今料理作ってきたんですよ。」

「はぁ?あいつにチハルちゃんの食事?100万年早いわ!」

「アイツ等にはエビの尻尾でも食べさせてたら良いのよ。」

「そこではなく~・・・ロイロのパパで、ママドラの旦那さんなんです。」

「・・・チッ。」

「・・・チッ。」

「なんで舌打ち?」

「ロイロさんとママドラさんの身内なら殺せないなって思っただけよ。」

「私は全身の鱗を毟り取るくらいで我慢してあげるわ。」

「・・・そこまで?」

「「そうよ。」」

 食い気味に答える2人に千春は苦笑いする。


「えっとぉ、仲直り出来ないです?」

「・・・えぇ~。」

「・・・チハルちゃん弱み握られてる?」

 嫌そうに答える2人だが、千春に聞かれ困ったように答える。


「えっとぉ、パパドラさんも謝罪したいと言う事なので。」

「「・・・。」」

「美味しい料理も有りますし。」

「「・・・。」」

「アイトネも一緒ですし。」

「「・・・。」」

「お酒もありますよ?」

「「・・・。」」

「新しい天ぷら料理作りますよ?」

「話だけ聞いてあげるわ!」

「何の天ぷら!?」

「えっと、行ってからのお楽しみで♪」

「分かったわ、チハルちゃんの頼みですもの、行くわ。」

「しょうがないわね!別に天ぷらが食べたい訳じゃないけれど!」

 2人は湯船から立ち上がる。


「それじゃ外で待ってるので準備出来たらお願いします。」

 千春はそう言うとサフィーナとリリを連れ旅館の休憩室に移動する。


「チハル何の天ぷら作るの?」

「んー、何も考えてないけど、作った事無い食材で作ればいいかな。」

 千春はアイテムボックスの中身を見る。


「うん、日本の食材だけど色々あるしなんとかなるっしょ、パパドラさん達にも食べさせれるし。」

 千春はそう言うと何天にしようかと考えながら2人を待った。








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