ドラゴンの里に行くぞーその前に報告だぁ!
「ハルトー!ドラゴンの里にいってくんねー!」
千春はエンハルトの職務室に入ると報告する。
「ママドラの里か?」
「んにゃー、パパドラの里。」
「・・・は?」
「なんかね、パパドラの里が西の湖の先にあるらしいんだよ。」
「あ~、確かにドラゴンが居ると言われているな、そこに行くのか?」
「うん!」
千春は楽し気に報告すると部屋を出ようとする。
「ちょっとまて!チハル!」
「何?」
「誰と行くんだ?」
「多分いつものメンバーだよ。」
「・・・ロイロは?」
「連れてく、今からママドラに言うから多分ママドラも行くよ。」
「ドラゴンが一緒なら・・・いや、戦いになったりしないよな?」
「多分ならないよ。」
「多分か・・・。」
「あとアイトネが行くよ。」
「そうか。」
アイトネと聞きホッとした顔で答えるエンハルト。
「アイトネ様が一緒なら万が一も無いだろうからな、しかし・・・心配だな。」
「だ~いじょうぶだって。」
「チハルの大丈夫は当てにならないからなぁ。」
苦笑いで答えるエンハルト、しかし千春はニッコリ微笑み手を振りながら部屋を出て行った。
「つぎー!ママドラんとこー!」
千春は手を上げながらサフィーナ、サリナを連れママドラの元へ向かった。
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「母よ、父はどういうドラゴンなのだ?」
ロイロは先にママドラの所に行き話をしていた。
「面倒見の良いドラゴンよ。」
「ほぅ?強いのか?」
「強いわよ、私よりは弱いけど♪」
「手加減しておるのではないか?」
「かもね~。」
「それで?人間に対して敵意は?」
「喧嘩を売らなければ別に取って食うわけじゃないわよ。」
「そこは他のドラゴンと一緒じゃな。」
「そうね、別に人間と共存するドラゴンじゃないけれど。」
「ふむ。」
「それで?用件はそれだけ?」
「う~む、チハルが父の里に行くと言い出してのぅ。」
「へぇ~、久しぶりに私も会いに行こうかしら。」
楽し気にママドラが答える。
「護衛のドラゴンから聞いた話は何じゃった?」
「私の里のドラゴンが減っているから気になっているんですってよ。」
「それだけか?」
「えぇ、元気にしてるって事は伝えたらしいわ。」
「ふむ、問題は無さそうじゃな。」
「大丈夫よ、問題があるようなら私が叩き伏せてあげるから。」
「それをされるとタダじゃ済まぬじゃろ。」
「遠くに離れてヤルわよ。」
「そういう問題じゃないんだがのぅ。」
呆れる様に呟くロイロ。
「ママドラさーん!」
「いらっしゃいチハル。」
ドラゴン厩舎の一画にあるママドラの屋敷に飛び込んでくる千春にママドラはにこやかに答える。
「パパドラさん所いこー!」
「いいわよ~♪」
「やった!」
「そんなに楽しみなの?」
「うん!どんなドラゴンなんだろう!」
「そうねぇ、私より少し大きくて、黄金の鱗が綺麗よ。」
「黄金!?」
「えぇ、角も長くて綺麗よ。」
「へぇぇ!」
黄金のドラゴンと聞き、千春は目をキラキラさせながら喜ぶ。
「ママドラさんの鱗も綺麗だよ♪」
サファイアの様に深い蒼色の鱗を光らせるママドラを見て千春は笑みを浮かべる。
「ありがとう♪それで?いつ行くの?」
「えっと、今皆にLIME送ったら行くって言ってたから、みんな待ってる間に報告とかしてるの。」
「エイダン陛下にも言った?」
「まだー!お母様にも言って来るからついでに伝えてくんね!」
千春はそう言うと楽し気に部屋を出て行った。
「国王陛下に伝えるのが『ついで』なのね。」
「チハルらしいじゃろ。」
「いつも胃を押さえてるわよ?」
「そろそろ慣れてもらわんとなぁ。」
2人は千春が出て行った扉を見ながら微笑んだ。
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「お母様ー!」
「はいはい、パパドラさんの所でしょ。」
「でーす!」
「アイさんが付いてるからって無茶しちゃダメよ?」
「はーい!」
「で?行って何するの?」
「パパドラさん見て、里見学して終わりです!」
「それだけ?」
「何も無ければ!」
「・・・何か有りそうねぇ。」
「宴会とかしちゃうかもです、ママドラさんの時もそうなっちゃいましたし。」
「チハルのご飯食べたらジブラロールに来るとか言わないかしら。」
「・・・来たらヤバいですか?」
「もうこれだけドラゴンが居るんですもの、そう変わらないわよ。」
「ですよねー♪」
「でもエイダンにはちゃんと報告しなさいね?」
「今から言ってきまーす!」
千春はそう言うとマルグリットの部屋を出て行った。
「アル、居る?」
マルグリットはテーブルで大人しくしている蝙蝠に声を掛ける。
「メグ、呼んだ?」
蝙蝠がアルデアになりソファーに座る。
「チハルがやんちゃしないように見ててくれる?」
「あ~ドラゴンの里に行くって言ってたわね、良いわよ♪」
「ありがとう。」
「もしドラゴンがオイタするようなら私が指導してあげる♪」
「アルなら本当に出来そうで怖いわ。」
アルデアの言葉に微笑みながらマルグリットは安心したように言葉を返した。
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「お父様いらっしゃいますか?」
「はい、少々お待ちください。」
千春に聞かれ護衛の兵士が扉を開けお伺いを立てる。
「どうぞチハル王女殿下。」
「あざまーす。」
千春は軽く返し部屋に入る。
「お父様~♪」
「・・・嫌な予感しかせんのぅ。」
「えぇ~?」
「それで?どうしたんじゃ?」
「ロイロのパパに会ってきます!」
「・・・はぁ。」
「どうしました?」
「いや、突拍子も無い事を言うのぅ・・・と思ってな。」
「そうですか?」
「そうじゃろ、ジブラロールは今こそドラゴンが普通におるが、当たり前じゃないぞ?」
「あー。」
「一生に1度、いや、普通はドラゴンの姿を見るのも稀な事なんじゃ。」
「へー。」
「ドラゴンに会いに行くとか言うのは勇者や英雄が力を誇示する為に言う事なんじゃよ?」
「そうなんですねぇ~。」
「わかっとるか?」
「はい!」
「・・・はぁ、それで、どうやって行くんじゃ。」
「アイトネがぴょ~んって飛ばしてくれます。」
「アイトネ様が一緒か?」
「はい!」
「ふむ、それなら問題は無いか。」
「問題なっしんぐです!」
元気に答える千春、するとエイダンは部屋の奥にある棚の扉を開ける。
「チハル、これを持って行きなさい。」
「なんです?これ。」
「ジブラロール産の米酒じゃ。」
「おぉ!」
「ドラゴンは皆酒が好きじゃからな、万が一も無かろうがお土産くらい持って行った方が良いじゃろ。」
「有難うございます!そっかぁお酒かぁ。」
「ニホンの酒も美味しいからのぅ、まだ有るなら持って行けば良いじゃろ。」
「そうですね、まだ時間有りますし注文します!有難うございますー!」
「気を付けて行くんじゃぞ?」
「はーい!」
千春はそう言うとエイダンの職務室を出て行く。
「この調子ですとまたドラゴンが増えるのでは?」
宰相ルーカスは苦笑いでエイダンに言う。
「その時はその時じゃ、そこらの人間よりもドラゴンの方が素行も性格も良いからのぅ。」
「確かに。」
2人は自然と外を見る、外では竜騎士が数人ドラゴンに乗り王都を飛んでいた。
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