先生のお着換え!

「ただいま戻りましたぁ!」

 春恵と一緒に入って来たのはうさ耳少女ラルカだ。


「ラルカちゃーんお兄ちゃん連れて来た?」

「はい!」

 ラルカの声に合わせ麗奈の兄和己が顔を出す。


「メリクリー。」

「早いよ。」

「クリパするんだろ?」

「うん、ラルカちゃんと用事あった?」

「・・・一応飯食おうとは思ってたけど、遅くまで連れまわせないだろ?」

「そだね、12歳連れて回ったら通報案件だわ。」

 麗奈は兄にそう言うと部屋へ促す。


「矢代の兄さんか?」

 石田は和己に挨拶をする。


「担任の石田と申します。」

「あ、兄の和己です。」

「・・・この子は?」

 石田はうさ耳をピコピコ動かすラルカを見る。


「うちの侍女で~す、レナ兄の彼女だよ。」

 千春が言うとラルカは自己紹介をしながら頭を下げる。


「ラルカです。」

「・・・ラルカちゃん幾つなの?」

「12歳です!」

「・・・え?」

 石田は思わず和己を見る。


「何もしてませんよ!?」

「でも彼女なんだよな?」

「・・・はい。」

「藤井、こっちの成人は幾つなんだ?」

「えっと、たしかジブラロールじゃ15歳だったと思うけど、ラルカの氏族は違うんだよね?」

「はい!私の村では12歳で成人です♪」

「・・・これってどうなんだ?」

 石田は混乱しながら麗奈を見る。


「んっとぉ、一応うちの両親も許可は出してるんですよねぇ。」

「・・・う~ん、世界が変わればアリなのか?」

「アリじゃなーい?」

 ケラケラと笑いながら麗奈は答える、すると扉が開きマルグリットが入って来る。


「あら、ラルカ、帰って来たのね。」

「はい!王妃殿下。」

「あちらは楽しい?」

「はいっ!」

 ニッコニコで答えるラルカ、するとマルグリットの後ろからエリーナに手を引かれながら南が入って来た。


「・・・どう?」

 ロココ調に似たエメラルドグリーンのドレスを手で摘まみながら南は皆に問いかける。


「うわぁ!めっちゃ綺麗!」

「アヤネちゃん綺麗!」

「南ちゃんすごっ!」

 JK達は目を見開き南を褒める。


「・・・健太さん・・・どうですか?」

「・・・綺麗だ・・・。」

「・・・ありがとう。」

 キョトンとした顔で答える石田、南は顔を赤らめお礼を言う。


「さて、次はケンタさんですわ。」

 マルグリットが言うと執事長であるセバスと老執事ワークスがお辞儀をする。


「さ、ケンタ様此方へ。」

「え?!俺もっすか!?」

「はい、アヤネ様と並ばれるのでしたらお着換えをされた方が宜しいかと。」

 セバスはニッコリと微笑みながら言う。


「アヤネ様1人お着換えですと浮いてしまいますが・・・如何なさいますか?」

 ワークスも石田の耳元でこっそり呟く。


「・・・はい、着替えます。」

 石田の答えを聞き2人は石田を連れ部屋を移動した。


「おぉ・・・綺麗だなぁ。」

「あら?この方は?」

「はーい!私のお兄ちゃんでーす!」

「この兎耳の子は?」

「はーい!私の侍女でレナ兄の彼女でーす!」

 麗奈と千春は手を上げながら言う。


「可愛いわね。」

「あ、有難うございます!ラルカと申します!」

「・・・藤井さんこの子藤井さん達と同じ歳くらい?」

「と、思うでしょ?12歳なんですよ。」

「え゛?」

 思わず変な声で返す南。


「私も最初同じくらいと思いましたもん。」

「発育良いよねー。」

「チハルよりデカいし。」

「何処とは言わぬがな。」

「しゃぁらーーーーっぷ!」

 頼子と美桜、麗奈が何処とは言わないが目線を一点に合わせ呟き千春が吼える。


「ちょっと!?彼女って言ってたわよね!?」

 南は麗奈と和己を見る。


「ちょっと、あなた幾つなの?」

「21です。」

「犯罪じゃない!」

「チョーッと待ってください!日本ではそうですがこちらでは合法です!」

「・・・そうなの?」

「えっとぉ、ラルカの村じゃセーフです。」

「その言い方だと・・・ジブラロールでは?」

「ちょっと・・・アウト気味な感じです。」

「犯罪じゃない!」

「いや!ちょっと待ってください!ちょ!?」

 詰め寄る南、ドレス姿と言う事もあるせいか圧が半端なく和己は後退りする。


「聞いて下さい!婚約をする分には問題ないんです!手は出してませんから!」

「当たり前でしょう!」

「まぁまぁ南ちゃん、お兄ちゃんもそこはちゃんと理解してお付き合いしてますから、ね、ラルカ。」

「はい!いつも楽しい所に遊びに連れて行ってもらったりしてます♪」

「何もされてない?」

「えっとぉ・・・。」

「・・・ほら!何かしてるじゃない!」

「え?お兄ちゃん手だしてんの?」

 南と麗奈に言われ首を左右にブンブンと振る和己。


「ら・・・らるかちゃん?ちょっとその・・・即答でされてないと言ってもらわないと・・・俺ヤバい。」

「ちゅーはセーフです?」

「アウトでしょう!?」

「セーフじゃね?」

「んーびみょう?」

「ウチ的にはセーフだけどなぁ妹みたいなもんじゃん?」

「いや、彼女だし婚約者ならセーフじゃん?」

「んーセウト。」

「なにそれ。」

「アウト気味なセーフって感じ?」

 南が吠えるとJK達はそれぞれ呟く。


「ほらほら、アヤネさん、落ち着いてそこに座って頂戴。」

 マルグリットは微笑みながらソファーに南を座らせる。


「こちらでは生まれる前から婚約が決まる事もあるのよ。」

「・・・そうなんですか?」

「えぇ、この子も既に声を掛けられているわ。」

 マルグリットは軽くお腹を摩る。


「えー!そうなんですか?お母様!?」

「勿論断ってるわよ?例えよたとえ、でも貴族令嬢や嫡子になると10歳くらいで婚約をする者も少なく無いわ。」

 クスクスと笑うマルグリット、サフィーナは座る南とマルグリット、そして無理やり座らせられた和己にお茶を出す。


「それにユラとフィンレーもまだ10にもならないのに婚約者でしょう?」

「あ、そう言えば。」

「それに接吻くらいしてるわよ?」

「いや・・・それは・・・まぁそうですねぇ。」

「ユラちゃんとフィンレー君のキスとか可愛いしか無いじゃん。」

「確かに・・・こっちじゃ恋人同士の挨拶な感じ?」

「海外かよ。」

「いや異世界だよ。」

 皆の話を聞き、なんとなく納得しかけている南と、援護射撃されてウンウンと頷きほっとする和己。


「・・・分かりました、申し訳ありませんカズミさん。」

「いえ・・・まぁ日本だと本当にアウトなのは百も承知ですので。」

「でもちゃんと弁えて下さいね、この子達の教育にも悪いですから。」

 南はそう言うと千春達を見る、すると頼子達は一斉に顔を逸らす。


「ちょっとぉ?あなた達・・・不純異性交遊してないでしょうねぇ!?」

「まって!ウチら全員婚約者だっし!」

「そうそう!不純じゃないし!」

「うんうん!親公認!」

「両方の親公認ですからぁ!」

「なんならこっちの貴族籍もってるんで!こっちのルールだと成人してますし!」

「藤井さんと弓削さんは顔逸らさなかったわね。」

「・・・私達の相手王族なんで。」

「婚姻の儀っての終わらないと手出されないよねマジで。」

「あら、チハルとヒマリが問題無ければ大丈夫よ?」

 千春と日葵に軽く言うマルグリット。


「そうなんですか?!」

「良いんですか?!」

「ちょっと!?ダメでしょ!?」

 思わず声が出る千春と日葵に突っ込む南。


「騒がしいな、どうしたんですか?」

 扉が開き着替えた石田が入って来る。


「おぉぉぉぉ!石田かっけー!」

「石田カッコいいな。」

「なんて言うんだっけ、こういうの。」

「馬子にも衣裳じゃん?」

「それって貶し言葉じゃないっけ。」

「良いんじゃん?石田だし。」

 ほめながらもボロクソに言うJK軍団をスルーし石田が南を見る。


「どうでしょう。」

 ルネッサーンスと言わんばかりの黒を基調としたぴったりとした衣装を着た石田は恥ずかしそうに言う。


「カッコいいですよ健太さん。」

 ニッコリと微笑み言葉を返す南。


「あっついなぁ。」

「夏だもんこっち。」

 美桜と麗奈は2人を見ながら呟く、すると庭からゾロゾロと人が現れる。


「あら、お兄ちゃん来てたのね。」

「和己、どうだあっちは。」

「父さん!母さん!」

「ミオちゃーん来たわよー。」

「らっしゃーい。」

「ミオ元気だな。」

「ヨリ、何か手伝う事ある?」

「んー無いよー、侍女さんと執事さんが準備してくれるから。」

 ママさんズ、パパさんズが次々と入って来ると一気に騒がしくなる。


「チハルちゃん、今日クリスマスパーティーするの?」

「はい、今日は大人数でワイワイ、サプライズイベントも有りますから♪」

「あ~、アレね?」

 ヨリママ智美は石田と南を見て微笑む。


「んで、明日は私達だけの軽いクリパです。」

「おっけ~♪南先生は事が終わったら借りても大丈夫?」

「本人が良ければいくらでも♪」

 それを聞きママさんズはニッコリ微笑む、そしてクリスマスイブイブ&サプライズパーティーの準備が進められた。








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