セーフ!?いえアウトです!

「チハル。」

「いらっしゃいアルデア、どうしたの?」

「・・・ソレ。」

 アルデアは千春の手にある宝石を指差す。


「あ、これ今紋章付けてたんだよ。」

「・・・アイトネ様?」

『・・・ごめんなさい。』

「へ?」

 アイトネはアルデアが腰に手を当て目の前に来ると謝罪する。


「ダメですよね?」

『・・・大事な人にだけあげるのよ?』

「盗まれて悪い人が手にすると極悪なアイテムになるでしょう?」

『・・・はい。』

「アイトネ様からすれば人間の争いは可愛い物だと思いますけれど、これはダメな奴です。」

 懇々とアイトネに言うアルデア。


「アルデア、やっぱりヤバい?」

「ヤバいどころじゃ無いわよ、今回のクアータス王がそれを持っていたらどうなってると思うの?」

「・・・ヤバ。」

「何処に誰が居るか分からないわ、仮に盗まれたら大変な事になるわよ。」

「・・・そ、そうだね、どうしようコレ。」

 オロオロと宝石を手にした千春は頼子達を見る。


「はぁ、アイトネ様、この紋章の上書きは出来ますの?」

『出来るわ!』

「では、条件付きの紋章にしてくださいな。」

『ハイ!』

 何故か手を上げるアイトネは直ぐに千春達に手を振る。


「おぉ~・・・何が変わったの?」

「同じにしか見えないね。」

「うん、何だろう、取り敢えず上書きしとこ、忘れたら大変だし。」

 千春達聖女軍団は宝石に魔力を通し紋章の上書きをする。


「アルデア、何の条件付けたの?」

 千春はアルデアに問いかける。


「私が思っている事をアイトネ様が行ったのなら『1年間有効』になってるわ。」

『えぇ、1年経つと紋章が消滅するわ。』

「あ~・・・使用期限付きかぁ。」

「神社のお守り的な?」

 使用期限と聞き頼子が問いかける。


「え?神社のお守りって有効期限あんの?」

「お母さん曰くあるらしいよ?常若(とこわか)だったかな?一応有効期限は無いらしいんだけど1年で返納するのが普通らしいよ。」

「へぇ~流石元巫女だね。」

 頼子の説明に美桜が頷く。


「アルデアありがとう、アイトネもありがとうね。」

「様子を見てたら凄い事してるから驚いて飛んで来ちゃったわよ。」

 クスッと笑うと機嫌を直したアルデアはソファーに座る。


「それで?くりすますって何をするの?」

「えっとねー、チキン食べてケーキ食べてプレゼント交換して遊ぶの。」

「あら素敵ね。」

「昨年は徹夜で遊んだよねぇ~。」

 遠い目をしながら頼子が呟く。


「うん・・・朝日がまぶしかったわ。」

「あの日戻ったらお父さんが帰って来るって連絡あってバタバタしたなぁ。」

 千春も遠い目をしながら呟く。


「今年はこっちでやるっしょ?」

「うん、みんなで騒ぎたいし!」

「ウチも!」

「それじゃケーキ作らないとね。」

「あ!そっか!あのケーキこっちで作ってたんだ!」

 思い出す様に美桜が叫ぶ。


「どおりで食べた事無いフルーツケーキだったわけだぁ。」

 麗奈も思い出しながら呟く。


「今年はチハルの新しい部屋でパーティーする?」

 寛ぐスペースの応接室ではなく、パーティーが出来る広い部屋の方を見ながら美桜が提案すると青空達も騒ぎ始める。


「うちらも何かしたいな!」

 大愛はワクワクが止まらないのかニッコニコだ。


「みんなで料理するー?」

「イイねー、でっかいチキン食べよう!」

「コカトリスの丸焼き?」

「いや、コカトリスって超でっかいよ?肉見たっしょ。」

「アレ焼けるオーブン無いか。」

「魔法で焼く?」

「無理でしょ、表面焦げるだけで中は生だよ。」

『オーブンなら作るわよ?』

 アイトネが当たり前の様に言う。


「いやいや、オーブン大きくても中まで火が通るの時間かかるから!?」

 千春は突っ込みながら断る。


「お父さん達も呼ぶっしょー?」

「呼ばないと拗ねるっしょ。」

「またパーティーだねぇ。」

「パーティー好きだよねぇ~。」

 パーティーと聞き、ルプ達が反応する。


「千春!」

「はいはいお酒はちゃんと準備しますよー。」

「わっちは日本酒がいいばい!」

「はいはいビェリーわかってるって。」

「まだ日はあるし、準備だけはしておこうか。」

 頼子はそう言うとLIMEの異世界グループに打ち込む。


「お父さん達?」

「うん、お父さん達も予定あるだろうし連絡しとかないとね。」

 頼子はそう言うとポチポチスマホを弄る。


「それじゃウチらはプレゼント交換用のブツを準備すればいいわけだ。」

「ブツって、ミオ何するつもりなんよ。」

「ひ・み・つ!」

「アイトネ様!ミオ危ない物作らないですよね!?」

『・・・多分?』

「アウトぉ!」

「アイトネの多分はヤバい気がする!」

「ミオ!何作るつもりよ!」

「貰う人の事考えて作ってよね!」

「ミオのプレゼントいやぁ!怖いわ!!!」

 ギャイギャイと騒ぎ始めるJK軍団。


「えぇ~?ちょっと杖から花火出たり火が出るおもちゃ・・・。」

「はい!アウトです!」

「火はダメでしょ!」

「花火は良いなぁ、チハル花火したい。」

「日本は12月だよ!?花火売って無いよ!?」

「ミオ、それプレゼントじゃ無くて普通に外で遊ぶように作りなよ。」

「う~~~~ん、まぁそれはそれで良いけどぉ、プレゼントネタ消えたんだが?」

「一緒に考えたげるから。」

 麗奈はポンポンと美桜の背中を叩く。


「千春はソレっしょ?」

「そ、可愛いっしょ。」

「可愛いけど歩くだけ?」

「色々出来るらしいけど・・・デンハどんな事出来るの?」

 千春は精霊魔法を使ったデンハに声を掛ける。


「魔石を組み込めば魔法も打てます・・・ニャ?」

「千春もアウト気味なアウトだったわ。」

「いや!組み込んで無いからね?!そう言うヨリだって宝石に紋章ってアウト気味な物考えてたじゃん。」

「う~~~~ん、また考え直しかなぁ。」

「私もだなぁ。」

「レナも同じだったね。」

「ダイアは何の予定なの?」

「うち!?」

 大愛は名前を呼ばれチラリとアイトネを見る。


「アイトネ!アウト!?セーフ!?」

『私的にはセーフ・・・かな?』

「はい!かな?って時点でアウト確定!」

「えー!魔石使わないエアガンくらい良いじゃん!」

「やっぱりか!魔石銃出した時点でおかしいと思ったんだよ!」

 またもや騒ぎ始めるJK軍団。


「ヒマリおねえちゃんはなに作るの?」

 ユラは静観している日葵に声を掛ける。


「私?ハンカチに刺繍したのをプレゼントする予定だよ。」

「ししゅう?」

「そ、こんな感じ。」

 日葵はポケットから綺麗に折りたたまれたハンカチを広げると、可愛い花や妖精の刺繍を見せる。


「かわいい!」

「でしょ?今あっちで練習してるんだよね、貴族令嬢の嗜みらしいんだ~。」

 ユラと日葵はニコニコと話をする、それを見る千春達。


「・・・うん、シンプルイズベスト。」

「こう言うのが喜ばれるんだろうね。」

「ヒマリ・・・乙女だ。」

「本来こうあるべきなんだろうね。」

「誰よ銃とか火炎放射器作ろうとしてた人。」

「火炎放射器じゃないでーす!花火でーす!」

 千春達はまたもや騒ぐ、その姿を微笑みながら見学するアイトネとアルデア、ユラと日葵は目が合いニコッと微笑み合った。




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