北国フルーツてんこもり!

「おいしいでふぅ・・・。」

 フルールは涙を流しながらデザートを食べる。


「そこまで?」

「はいぃぃ!」

「美味しいわね、コレってアレでしょ?」

「はい、アレです、それをメラディオで買ったコーヒーで作りました。」

「ふむ、このほろ苦さにクリームがよく合うのぅ、コーヒーはまだあるのか?」

 エイダンも気に入ったようで千春に問いかける。


「有りますよ、樽で買いましたから。」

 ニッコニコで話す千春。


「エイダン陛下!カーフィーでしたら幾らでも献上致しますわ!」

「いやいや、フルール女王、ちゃんと金は払うぞ?」

「エイダン陛下・・・女王はやめて頂けると。」

「構わんじゃろ、もう女王じゃろ?」

「まぁ・・・そうなんですが。」

「それにじゃ、この国にはひょっこり遊びに来る女王もおるでな。」

「へ?」

「そうねぇ、マリーナも良く遊びに来るわね。」

「マリーナ様と言われるのは?」

「フリエンツ王国のマリーナ・フリエンツ女王じゃ。」

「えぇぇ!?あの海王国家フリエンツ王国でございますか!?」

「知っておったか。」

「はい、大陸を回りますと船でも行く事が出来ますので。」

「そう言えばジブラロールから北西にフリエンツ、北東にメラディオじゃったな。」

「はい、ジブラロールよりも近いです。」

 フルールは説明しながらクッキーを手に取る。


「このくっきーも美味しいですわ。」

「私とユラが作ったのよ♪」

 マルグリットは満足そうに笑みを浮かべる。


「王妃殿下と王女殿下のくっきー・・・ジブラロールの女性は凄いですわ。」

「凄いのはチハルね。」

「チハルおねえちゃんがすごいの!」

 2人は目を合わせると「ねー♪」と微笑み合う。


「ジブラロールまで簡単に来れたら・・・。」

 残念そうに呟くフルール。


「簡単な方法が有るわよ?」

「どんな方法で御座いますか?!」

「そこに居る妖精を1人懐かせれば付いて来るかもね。」

 マルグリットはそう言うとクッキーに群がる沢山の妖精がいるテーブルを見る。


「妖精ですか?」

「えぇ、フェアリーリングを作ったのでしょう?」

「はい、作っていただきました。」

「それじゃすぐに来れるわよ、ブルーワグのルペタ王女なんて妖精のシュシュが居るからいつも遊びに来てるもの。」

「レンちゃんもポポとあそびにきてます!」

「ジブラロールには何人の妖精がいらっしゃるのですか?」

「・・・ユラ知ってる?」

 ユラに問いかけるマルグリット、ユラは首を横にブンブンと振る。


「ルルーようせいさんなんにんいるの?」

「わからないわねぇ、入れ替わりで遊びに来てるみたいだし?リリー妖精の人数把握してるー?」

「知らないわ~♪沢山よ~♪」

「だって♪」

 軽く答えるルル。


「ユラ様、どうすれば妖精様はついて来てくれますか?」

「えっとぉ・・・おかし?」

「お菓子ですか?」

「あとはぁ・・・くだもの?」

「果物・・・そうですわ!チハル様!」

 思い出したようにフルールが千春に声を掛ける。


「なに?どうしたの?フルールちゃん。」

「メラディオ国で果物を買われてましたよね!?」

「うん、色々買ったよ。」

「妖精様の好きそうな果物は有りましたか!?」

「あっちの特産っぽい果物・・・ドラゴンフルーツとか?」

「チハル、他にも買ってたじゃん。」

「色々買ったからなぁ~。」

 千春はアイテムボックスに入っている果物をぽいぽいと取り出す。


「これ何?」

「わかんないw」

「知らないで買ったの?」

「いや、後で試食してみようと思ってさぁ、色々買ったんだよね。」

 千春は真っ赤なラグビーボールの様な果物を手に取る。


「これは?」

「さぁ?なんだろうね。」

「わからんのかーい。」

「だって鑑定しても甘い果実とかしか出ないんだもん。」

「試しに食す!」

「まだいっぱい有るし試食するかー。」

 千春はミスリル包丁を取り出すとテーブルにまな板を置き半分に切る。


「うわぉ!真っ黄色!」

「ん?これ香り知ってる。」

「うんうん、これってマンゴーっぽくない?」

「でもマンゴーはこっちだよ。」

 千春はクアータスで見つけたマンゴーを取り出す。


「サフィー、スプーンある?」

「はいどうぞ。」

 サフィーナはカトラリーケースをアイテムボックスから出すと頼子に渡す。


「いただきー。」

 頼子は真っ黄色のフルーツを口に入れる。


「うん、マンゴー・・・ぽい!」

「マンゴーでは無い?」

「ではないね、でも限り無くマンゴー。」

「クアータスのマンゴーとは別の種類なのかな?」

「親戚かね。」

「チハルこっちのも。」

 美桜は分からないと言われたもう1つのトゲトゲが付いた果物をまな板に置く。


「切りまーす。」

 サクッと半分に果物を切る千春。


「・・・メロン?」

「いや、色も形も違うじゃん。」

 千春の言葉に突っ込む美桜、美桜はスプーンで果肉を掬い口に入れる。


「・・・んんん?」

「美味しい?」

「・・・美味しいか美味しくないかと言われれば美味しい。」

「美味しいんだ。」

「食べた事無い味なんだよなぁ。」

 口をモゴモゴとしながら美桜が感想を言うと麗奈もスプーンで掬って食べる。


「ん?これパパイヤじゃん?」

「え?パパイヤってこんな味なの?」

「え゛?食べた事無いの?」

「無いわ。」

「私も無い。」

「うちも無いわ、一口ちょー。」

「私は食べた事有る!」

 青空や大愛もスプーンで掬って食べる。


「うん、パパイヤだね。」

「へぇ~こんな味なんだ。」

 2人も口をモゴモゴとしながら感想を言う。


「っていうかパパイヤってこんな見た目だっけ?」

 日葵は半分にしたパパイヤ味の何かを手に取る。


「味がパパイヤならパパイヤで良いんじゃない?」

 千春はそう言うとスプーンで掬いお皿に並べて行く。


「妖精ちゃーん!この果物はメラディオに行くと食べれまーす、味見してねー。」

 千春が言うと十数人の妖精がお皿に群がる。


「うまーい!」

「おいしいわぁ!」

「うまうま!」

「僕こっちがいいー!」

 妖精達にも好評な果物を見ながら千春はクアータスにもあったパイナップルとマンゴーを切りお皿に並べる。


「これもメラディオで食べれるよー。」

 次々と妖精達のお腹に消えていく果物。


「はい!メラディオ国のフルールちゃんについていくと食べ放題です、誰か行きたい人ー!」

「はーい!」

「はいはいはい!!!!」

「えー!わたしもいくー!」

「ぼくも!」

「僕がいくー!」

「ちょっとまてー!多い多い!」

 手を上げる妖精に待てをかける千春。


「ドライアドさんに許可貰うからちょっとまって!リリ!ドライアドさん呼べる?」

「よべるわ~♪」

 リリはそう言うと目を瞑る、そして。


「お呼びですか?チハルさん。」

「メラディオ国のフルール女王に妖精1人つけても大丈夫ですか?」

「はい、貴方達誰が行くの?」

 ドライアドが言うと10人の妖精が手を上げる。


「・・・ジャンケンしなさい。」

「え?ジャンケン知ってるの?」

「はい、最近この子達ジブラロールで覚えたらしいんです。」

「あー、ユラ達と一緒に居たら覚えるかぁ。」

 ドライアドと千春が話していると妖精達のジャンケン大会が始まった、そして一人の妖精が決まる。


「わたくしですわぁ!」

 嬉しそうに飛び回る妖精はくるくる回りながらフルールの所へ飛ぶと挨拶をする。


「トゥトゥよ、よろしくですわぁ!」

「フルールと申します、トゥトゥ様よろしくお願い致します。」

 ペコリと頭を下げるフルール。


「他人行儀ですわぁ~♪トゥトゥと呼んでくださいまし♪」

「それでは私の事はフルーと呼んで頂けますか?」

「フルーね!よろしくですわフルー♪」

「よろしく♪トゥトゥ♪」

 嬉しそうに2人は微笑み合う。


「さ!それじゃ皆果物沢山あるからお食べー!」

 千春と頼子、そしてサフィーナ達が果物を次々と切っていくと、エイダン、マルグリット達にも振る舞い、南国、いや北国フルーツを堪能した。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る