クアータスの終わりと始まり!

「止まれ!」

 馬車を降りた千春達に兵士が声を掛ける。


「大きな門だねぇ~。」

 城を囲む壁にママドラが立って入れそうな程の大きな門を見上げ千春が呟く。


「マトラ様!何故この者達と一緒に!?」

「アビスト、門を開けろ。」

「それは出来ません!」

「そうか、では逃げておけ。」

 マトラは淡々と話しかけると土の上位精霊ネガルスが前に出る、そして地面を殴ると。


ドドドドドドドドドド!!!!


「おぉぉぅ・・・。」

「壁無くなったね。」

 地面が揺れ、それと同時に城を囲む城壁が全て砕け散る。


「門は残ったねー、ビェリー。」

「ほーい。」

 残った大きな門も影に沈み消える。


「さて、次はお城の門だけどー。」

 千春は門を見ながら言うと門が開く。


「開けるよねー。」

「開けなかったらお城消えてたんじゃね?」

「ありえ~る。」

 門が開くと鎧を着た騎士に交じり貴族らしき男達が出て来る。


「この者達か!」

「国に喧嘩を売るとは良い度胸・・・。」

「どら・・・ドラゴン!?」

「・・・これは何と言う事だ。」

 貴族達は門が開き目の前に見える少女達の後ろを見る。


「エントス卿!コレはどういう事だ!」

 貴族の1人がレスクに問い詰める。


「お前達は下がっていろ、聖女様が王と話をする。」

「貴様!誰に向かって言っておるのだ!」

 憤慨する貴族の男、他の貴族はルプ達に睨まれ腰を抜かしていた。


「アルデア、アレって駄目な貴族?」

「えぇ、ダメな貴族その5~9ね。」

「1~4は?」

「王の横で御機嫌取りしてるわ。」

「うわぁ現状分かって無い感じだね。」

「それはそうよ、この男達もチハル達を切り捨てて来いって言われてたもの。」

 アルデアは蝙蝠が見聞きした事を話す。


「あ、そうなんだ、それじゃ遠慮要らない感じ?」

「勿論、なんなら私が全員ヤルわよ?」

「いやー、これはもうモートさんに判決もらって処分を願いした方が世の為人の為って感じだよね。」

 そう言うと貴族達はアイテムボックスに落ちる。


「チハルちゃーん、アイツ等うるさいから入れといた。」

 ユーリンはニッコニコで千春に言う。


「さんきゅ~、後でまとめてモートさんに判決お願いするからそのまま入れといて~♪」

「はいよ~♪」

 そして千春は門の中に入る、千春の横にはアルデアが、その両隣にユーリンとサフィーナが歩く。


「その10が来たわよ。」

 アルデアが言うとサフィーナが有無を言わさずアイテムボックスに落とす、貴族が消え蝙蝠がアルデアの元に戻ると体に吸い込まれる。


「まともな貴族は?」

「この城の地下牢よ、すべて片付いたら解放しましょう。」

「おっけー。」

 千春とアルデアがそのまま進むと広いホールがある、その奥から数人の男達が兵士に守られながら歩いて来る。


「あれが王よ。」

 アルデアがニッコリ微笑み千春に言うと王が千春に話始める。


「お前が聖女か!」

「まぁそうだけど・・・あんたが王?」

「あ?あんただと!?」

「いや、あんたがお前って言って来たじゃん!あんたくらい良いでしょ!。」

「俺は王だ!」

「私聖女だけど?」

 王に『お前』と言われカチンと来た千春は口喧嘩を始める。


「この国へ何しに来たのだ!」

「フルールちゃんの国をボロボロにしたあんたに文句良いに来たのよ!」

「ふん!女神に天罰をくらい、勇者や聖女など過去の栄光を掲げるだけの国なぞ滅びて当たり前だ!」

「いや、あんたには関係なくない?それにフルールちゃん監禁する意味わかんないんだけど!?」

「クアータス国の属国にし発展させてやろうと言うのだ!有難く思えばいいのだ!」

「だから軍隊出してメラディオ攻めてるの?」

「あぁ、その通りだ!もう止めることは出来ぬぞ!」

「ふーん。」

 千春は遠見の石を取り出すとのぞき込む。


「おぉ~良い感じだねー。」

 そう言うとプロジェクターの様に壁へ向け映像を映し出す。


「な!?」

 映し出された映像にはドラゴンが軍隊を攻撃していた、そしてママドラが大きく叫ぶ姿を見せるとドラゴンが横に並ぶ、そして一斉に魔法とブレスで攻撃する所だった。


「クアータス軍オワタ!」

「派手だねー。」

「これ全滅したんじゃね?」

「一応手加減するようには言ってるけど、攻撃して来たら容赦しないっていってたもんなーママドラ。」

 映画を見る様に話すJKと、言葉を無くしたクアータス王。


「ありえん、ありえん!こんな事が有るはずがない!」

「いや、現実見てよ。」

 プルプル震えるクアータス王、そしてあんぐりと口を開け映像を見る貴族騎士。


「しかしダッサイ服着てるねぇ、成金商人でもあんな服着ないよ。」

「ほんと、それにあの周りのおっさん達も怯えてんじゃん。」

「そりゃビビるっしょ、あの王様っておっさん威勢がいいけど状況わかってんのかな。」

「分かってたら千春の売り言葉買わないっしょー。」

「しっかしダサいね・・・アレってカボチャパンツって言うんだっけ?この世界の中で一番ダサいわ。」

 王は赤と青のストライプに白と黒のストライプが入ったかカボチャパンツを履き、赤いマントに王冠の姿をJK軍団がけっちょんけっちょんに貶す。


「き・・・貴様ら・・・。」

「ありゃ?オコ?オコなの?」

 美桜はプークスクスとワザとらしく笑みを浮かべる。


「お前達!あの女を殺せ!」

「うわっ!短気過ぎ!!!!」

 麗奈は思わず叫ぶとJK達の前にワークスが出る、そして抜刀し走って来る貴族に向かって歩いてくと一閃する。


キンッ!


 ワークスは刀を鞘におさめると貴族達の剣は根元から落ち、貴族もバタバタと倒れる。


「な・・・。」

 口をパクパクとしながら声にならない声を上げる王。


「私達を殺しに来たし、もう終わりでいっかぁ。」

「話通じ無さそうだし、いんじゃね?」

「誰がモートさん呼ぶ?」

「「「「「「チハル!」」」」」」

「じゃんけんちゃうんかーい。」

 千春は苦笑いしながらモートを呼ぶ。


「モートさーん。」

「こいつだな。」

「どう?判決は。」

「文句なく冥界に連れていける魂だな。」

「ユーリンのアイテムボックスに入ってる貴族は?」

「あいつらは国の法で裁く程度だ、そこに居る4人は別だな連れて行こう。」

 仮面の男が急に現れ驚く王は指を差しながら大声で怒鳴る。


「俺を何処に連れて行くと言うのd・・・。」

 言い終わる前にモートは指を鳴らすと、王と転がる貴族が消えた。


「ねぇ兵士さーん。」

 王の周りに居た兵士に声をかける千春。


「・・・はい!」

「地下牢の貴族さん達解放して連れて来てもらって良いですか?」

「はぃ!」

「急ぎでお願いしまーす。」

「はいぃぃぃ!!!」

 兵士達は駆け足でホールを出て行く。


「んじゃあとは国の事なのでお任せしたいんだけど・・・レスクさんって貴族なの?」

「はっ、レスク・エントスと申します、爵位は侯爵で御座います。」

「彼女は?」

「・・・ムーサ・シアカと申します子爵家次女で御座います。」

「アイトネー、この人達どう?」

 しれっと後ろに居たアイトネに声を掛けるとアイトネはニッコリ微笑みサムズアップする。


「うん、レクスさん、悪い王を討伐したって事にして英雄王になってよ。」

「は!?」

「女神アイトネが認めた人だからね。」

「しかし・・・他の貴族が・・・。」

「ん~、あ、そうだ。」

 千春はミスリルのナイフを取り出す。


「アイトネ、アレやっていい?」

『良いわよ、私が見ててあげるわ♪』

「レスクさんそこ膝突いてもらって良いです?」

「・・・はっ!」

 片膝を突き首を垂れるレスク。


「レスク・エントス。」

「はっ。」

「女神アイトネの名に誓約を証し命じます。」

「・・・。」

「この地で英雄王と名乗り民を救いなさい。」

「・・・はっ!」

「あ、国の名前は新しく考えよ、なんかクアータスってそのまま使うのイヤだし。」

 ナイフを鞘におさめながら話す千春。


「アイトネ良いよねコレで。」

『えぇ、上手だったわよ♪』

「えへへ~、ワークスさんの時にお母様に教えてもらったの。」

 ニッコリ微笑む千春にムーサが声を掛ける。


「聖女チハル様!」

「うわっ!なに!?えっとムーサさん。」

「地下牢の貴族が戻るまで時間が掛かります、こちらへ!」

「あ、えっと、いや、もうあとはそっちで上手く話してもらえば、次!メラディオ行かないとだし!?」

「いえ!是非ともこちらへ!」

「えぇ~?どうする?」

 千春は頼子達を見ると、外国人の様に手を軽く上げながら肩を動かす『さぁ?』と。


「はるとー。」

「まぁ急ぐ事も無いだろう、アルデア嬢があっちは押さえているんだろう?」

 エンハルトがアルデアを見るとアルデアはニッコリと微笑み返す。


「・・・ま!いっか!それじゃお邪魔しまーす♪」

 千春はそう言うと皆を連れムーサに案内され移動した。



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「そろそろ終わらせましょうか。」

 ママドラはドラゴンの攻撃に右往左往する兵士を見ながらロイロに話しかける。


『そうじゃな、総攻撃で蹴散らせば国へ戻るじゃろ。』

 ロイロ返事を返すとポツリと呟く。


『む・・・チハルが見ておるぞ。』

「あら、それじゃ王と話してるのかしら?」

『その様じゃな、イライラしておる、母よ総攻撃の準備じゃ。』

 そう言うとママドラはドラゴン達に声を掛け総攻撃と声を掛ける。


『今日の見せ場じゃ!チハルしっかり見ておれよー!撃てぇ!』

 ロイロは楽しそうに声を上げるとドラゴン達は一斉に魔法とブレスを地上に打ち放つ、そして兵士達は逃げ惑い一斉に撤退を始めた。





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