帰るまでが王都観光です!
「準備出来ましたよチハル。」
サフィーナは千春の寝室から戻ると後ろから陽菜が着替えて入って来る。
「おー、いいねー。」
「ねーちゃん良いじゃん。」
千春と日葵が陽菜を褒める。
「ヒナねーちゃん箒使えるかな。」
「練習すれば飛べるんじゃね?」
青空と大愛は杖と箒を持ちながら話す。
「ヒナねーちゃんはドラゴンに乗ってもらえばいんじゃね?」
美桜はそう言うとロイロを見る。
「儂が乗せて行こう、チハル達はついて来ればいい。」
「了解、ロイロまかした、カノンは大丈夫だよね。」
「ばっちり、もう慣れたよ。」
「よし!ヒナねーちゃんの準備もOK!それじゃ王都観光いきますかぁ!」
「チハルちゃん!」
「なに?ヒナねーちゃん。」
「・・・いや、まぁ良いんだけどその『ヒナねーちゃん』って呼び方どうにかならない?」
「え?それじゃヒマリねーちゃん?」
「ヒマリぃ。」
「なに?ねーちゃん。」
「ちょっとぉ、ねーちゃんって言うのやめてくんない?」
「だってずーっとねーちゃんじゃん。」
横でぽやぽやと見ているユラとイーレンを見る陽菜。
「ユラちゃん私はだーれ?」
「ヒナおねえちゃん!」
「レンちゃん私はだーれ?」
「ヒナおねえさま!」
「な?」
「何が『な?』なんよ、ねーちゃんはねーちゃんじゃん。」
「ちーがーうー!」
知ってて言う日葵、そして千春達も同じく分かって言っていた為肩を震わせながら笑いを堪える。
「さ、いくよー、ユラとレンはルプに乗ってね。」
「「はーい!」」
千春が言うと侍女達も杖に跨る。
「帰るまでが王都観光でーす、おやつは大銅貨3枚まででーす。」
「バナナはー?」
「おやつに入りませーん。」
いつものやり取りをしながら皆は庭に出る、庭にはレフトとライトに乗ったエーデルとホーキンが居た。
「おまたせ!エーデルさん!」
美桜は手を振りながらエーデルの横に行く、ホーキンには麗奈が手を振る。
「いえ、大丈夫です。」
ニッコリ微笑むエーデル。
「それじゃ王都行くよー。」
千春は箒に跨ると地面を蹴る、それを合図に皆も地面を蹴り王都へ向かった。
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「楽しそうじゃなぁ。」
テラスからエイダン国王は千春達を見ながら呟く。
「はい、チハル様の話ですと家族全員揃ったとの事です。」
「ふむ、ヒナ嬢にも誰かを宛てがうのか?」
「いえ、マルグリット王妃殿下の話ではその予定は無いとの事です。」
「何かしら企む輩が絡まぬか?」
「そこはしっかり監視するとの事です。」
「そうか、まぁ何かしら考えが有るのじゃろうな。」
「はっ、この件に関してはマルグリット王妃殿下に一任しておりますので。」
「そうじゃなぁ・・・儂はその手の事にはサッパリじゃ。」
王都に向かう千春達が小さくなっていく、それを見ながら呟くエイダン国王と宰相クラーク。
「ヒナ嬢に関しては女神アイトネ様も問題無いと判断しておるのじゃろ?」
『えぇ、今居るメンバーに問題有る子は居ないわよ。』
「うぉぅ!?」
横からいきなり声がし、驚くエイダン。
『あら、失礼♪』
「・・・アイトネ様、儂にも何かしておるので?」
『キノセイよ~♪』
「気のせいですか・・・物のついでに御聞きして宜しいですか?」
『・・・えぇ、それはヒナちゃんの目的がチハル達と違うって事よ。」
「思考を読まれましたか・・・目的と言うと?」
『チハル達は楽しみたい、ヒナちゃんは見分を広げ自分の糧を増やす事が目的なの。」
「それと相方を決めるのに何か違いが?」
『簡単な事よ、エイダンちゃんが王族と言う事を隠して冒険者してたでしょう?』
「・・・あぁ、そういう。」
「陛下、どういう事でしょうか?」
クラークは首を傾げ問いかける。
「漠然と楽しみたい者では無く、この先の自分を見極める為に目的を持つ者と言う事じゃ、余計な世話は必要ないという話じゃな。」
「それがヒナ嬢だと。」
『その事はあまり気にしなくて良いわよ、目的はどうあれこの世界を楽しんでいる事には変わりないわ。』
アイトネは遥か遠くに見える千春達を見て微笑む。
「儂らが手伝える事はありますかな。」
『そうねぇ~♪ちょ~っと面倒事が起きそうだから見守ってあげて頂戴♪』
そう言うとアイトネは手を振り消えた。
「面倒事じゃと・・・いつもの事じゃなぁ。」
「いつもの事ですね。」
「サビアは?」
「部隊長のオクナと一緒にチハル様の警護に当たっております。」
「ふむ、ま、大丈夫じゃろ。」
エイダンはそう言うと笑みを浮かべもう一度王都を見る、そして部屋に戻った。
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「いらっしゃい!」
食堂の看板娘レウピィは入って来た客に元気よく声を掛ける。
「・・・。」
男が2人入って来ると男は軽くテーブルを見回す、そして1つのテーブルを見る、そこには髭面の男が座っていた。
「お好きな席にどぞ~♪」
レウピィはそう言うと厨房に入る、男2人は髭面男の前に行くと角に不自然に置かれた空のグラスに銀貨を入れる。
「・・・何が聞きたい。」
「聖女の事で。」
「・・・まぁ座れ。」
髭面男はそう言うと男2人は椅子に座る。
「噂で聖女が複数人居ると聞いた、詳細は分かるか。」
「・・・噂されている聖女の数は5人だ。」
「そんなに居るのか!?」
男は驚く、もう一人の男が更に問いかける。
「噂と言ったな、本当は?」
「・・・。」
髭面男はチラリとグラスを見る、男はグラスにもう一枚銀貨を入れる。
「噂ではない女は1人だ。」
「他は?」
「確定した情報は無い、ただ・・・既に聖女と崇められているのは2人。」
「その2人の名前は分かるか?」
「・・・。」
髭面男はグラスを見る、男が更に銀貨を入れる。
「この店を出て通りを右に行け、居酒屋の前に居る男に『髭』からと言え。」
そう言うと髭面男は黙った。
「お客さん♪何にするか決めた?」
レウピィが声を掛けて来る。
「あ、すまん、ちょっと用事を思い出した、また来るよお嬢さん。」
男は丁寧に言うとレウピィに手を振り店を出ると右に歩いて行った。
「おっちゃーん、アレ何者?」
「これを見ろ。」
髭面男はレウピィに銀貨を見せる。
「これ何処の?」
「メラディオ国だな。」
「あー・・・え?メラディオの人なの?」
「どうだろうな、確か姐さん曰くメラディオはドラゴンと女神に城を吹っ飛ばされたらしいからな。」
「ありゃー・・・って事はメラディオ国周辺の国かな?」
「さぁ?あいつ等が最終的に行きつく所は姐さんの所だ。」
「おっちゃん何か飲む?」
「そうだなぁエールとエダマメを貰おうか。」
髭面男はメラディオ国の銀貨をレウピィに2枚渡す。
「は~い♪」
レウピィは返事をすると厨房へ戻る、そして場所代の1枚を店主に渡し、もう1枚は店の売り上げにすると髭面男にエールを運んだ。
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「この裏通りを進んで突き当りを右に、もう一度突き当りを左へ行け、帽子をかぶった男に『杖』からと言え。」
杖を持った男は、2人の男にそう言うと目線を逸らす、男2人は裏通りを言われた通りに進む。
「大丈夫ですか?」
「何か有れば直ぐに離脱する、警戒しておけ。」
2人は黙々と言われた通りに歩く、そして。
「杖から。」
帽子を被った男に声を掛ける。
「何が聞きたい。」
「聖女の詳細だ。」
「何処まで聞いている?」
「噂の聖女が5人、1人は王女、2人はその友達の貴族、あと2人は同じく友達だと。」
「それで?」
「出来れば聖女と接触したい、話をする事は出来るか?」
「・・・命は何個持ってる?」
「・・・無理か?」
「無理・・・ではないな。」
「本当か!?」
「ただ資格が問われる。」
「何の資格だ!?俺達に出来る事か?」
「1つ聞いても良いか?」
「なんだ?」
「お前達の目的は?」
「・・・聖女に国を・・・いや、姫を助けてもらいたい。」
男は苦しそうに、言葉を絞り出す様に呟く、帽子の男はニヤリと笑い手を出すと。
「金貨1枚。」
「・・・コレで良いか。」
「へぇ~、珍しい金貨だな・・・この先を出て通りから左に行け、少し歩けばフランクフルトを売る女が居る、そこで『帽子』からと言え。」
帽子の男はそう言うと手を払う様に動かし男達を追い払う、男2人は黙って通りを出る、そして左に曲がり歩いて行った。
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