インパイ族の天丼祭り!

「こちらで御座います。」

 豪華な扉の前でナラーシャが止まり扉を開ける。


「チハルちゃん!いらっしゃい!」

「ティスケリーさん、お久しぶりでーす!」

 ティスケリーは扉が開くとソファーから立ち上がり千春に挨拶をする。


「どうしたんですか?」

「・・・えっとぉ、この人達にテンドンを食べさせて欲しいの!」

「・・・フリエンツでも食べれるって聞きましたけど。」

「違うのよ!ジブラロールの!チハルちゃんのテンドンを食べさせて欲しいの!」

「えぇ~味違います?」

「違うわ!」

 ティスケリーは興奮気味に言うと、3人の男達が立ち上がる。


「ティス、落ち着け。」

「この方がジブラロール王女殿下か。」

「幼いな、料理が出来るのか?」

 男達はそう言うと挨拶を交わす。


「ティスケリーが失礼した、私はティスケリーの夫、アンソルと申します。」

 ティスを落ち着かせようとする男はアンソルと名乗りティスケリーの手を取る。


「娘が迷惑をかけて申し訳ない、私はティスケリーの父、ラウンロートと申す。」

「儂はアンソルの父、ソルギットだ、お見知りおきを。」

 申し訳なさそうに頭を下げる男3人。


「え~っと、どういう事かな?」

「千春あれじゃん?ティスケリーさんが掟破ってジブラロールに良く来てるから。」

「それしか考えらんないよね、掟より天丼な人だもん。」

「あー、だからこの人達に天丼食べさせたいのか。」

 頼子達は考察しつつティスケリーを見ると頷いている。


「ま、ティスケリーさんには色々お世話になってるし作りましょっかね。」

「チハルちゃん大好き!」

 ティスケリーは豊満な胸を千春に押し付け顔を埋める。


「ぐっ・・・ぐるぢぃ・・・でぃすげりぃさぁぁぁん。」

「しぬしぬ!チハルが窒息死する!」

 美桜はそう言うと2人を引きはがす。


「ふぃぃ、ありがとミオ、それじゃ天丼で良いんだよね?」

「あれ!あの丸いやつも!」

「あーかき揚げね、それも作るから安心して。」

 千春が言うとJK達と侍女軍団はエプロンを取り出す、ナラーシャは本当に申し訳ないと言う顔をしながら厨房へ案内する。


「申し訳ありません・・・。」

「大丈夫大丈夫!どうせ晩御飯作るつもりでしたから。」

「材料どうするのー?」

 頼子はエプロンを装着しながら付いて行く。


「食材でしたら大丈夫です!思いつく材料を揃えて起きました!」

 ナラーシャはそう言うと厨房の大きな箱を開く、冷蔵庫になっているようだ。


「おぉぉ!すごい!」

「もう切り身にしてある!」

「これ貝だね、おー貝柱もでけぇ!」

「これなんの魚なんだろ。」

 青空達も冷蔵庫をのぞき込みながら呟く。


「コンロは5個か、1つはタレ用、あとは全部油を温めようか。」

 アイテムボックスから大きな鍋を取り出す千春、サフィーナは勝手知ってる様に油を取り出し鍋に入れる。


「千春、私は衣作るよ。」

「うぃっす、サフィー衣冷やしておいてね。」

「はーい。」

「それじゃ材料の準備しましょっかね~。」

 千春はエビや貝柱、白身の魚を並べて行く。


「エビは任せろい!」

「ほい、ミオ頼んだー。」

「貝柱でかくね?」

「ホタテくらいのサイズに揃えようか。」

「それは私がやるわ。」

 麗奈は貝柱を受け取ると切り分けて行く。


「ねぇチハル野菜もいるよね?」

「いる、茄子モドキとカボチャモドキあるからスライスしてもらえる?」

「うぃーっす。」

 青空達に野菜を渡すと切りそろえて行く。


「それじゃ私はタレを煮込みましょっかね。」

 醤油とみりん、そして出汁を取り出す。


「千春、麺つゆ使わないの?」

「ジブラロールの味付けをご所望ですから~♪」

 千春は昆布から作った出汁を温めながら調味料を入れて行く。


「チハル!大根!大根おろしいる!」

「あー、ロイロがお酒呑みながら食べるか、モリー。」

「はーい!」

「これおろしといて。」

 千春は日本から持ってきた大根とおろし金を渡す。


「・・・はい。」

 立派な大根を手にするモリアン、そしておろし金を持つ。


「モリー、上と下で分けてね。」

「はい?分けるんです?」

「うん、上の方は優しくすり下ろして子供達用ね、下は思いっきりガシガシすりおろしてロイロ達用で。」

「何が違うんです?」

「辛さが変わるんだよ。」

「へぇ~、了解しましたー。」

「すり方で辛さ変わるんだ。」

「うん、辛い方が良い時は憎しみを込めておろせばいいよ。」

「おぼえとくわ。」

 頼子はケラケラ笑いながら手を動かす、そして油も温まり次々と投入される材料。


「チハル、ご飯よそいますね。」

「はーい。」

 アイテムボックスから取り出された土鍋を開けると湯気が上がり真っ白なご飯が現れる。


「ティスケリーさんの旦那さん達に出してあげてー。」

「はーい。」

 サフィーナは丼にご飯をよそうと、天ぷらを綺麗に盛り付け千春特製の天つゆをかけて行く。


「お持ちしますね。」

 サリナはカートに乗せるとアンソル達の所へ持って行く。


「お箸とスプーン、フォーク、どちらでもお使い下さい。」

「私は箸で大丈夫よ!」

 ティスケリーは天丼と箸を受け取る、アンソル達男3人は綺麗に盛り付けられた天ぷらを見て止まっていた。


「これがテンドン。」

「街で食べた物とは全然違うな。」

「そうだな、まったくの別物だ。」

「ほら!早く食べて!分かるから!」

 ティスケリーはニコニコしながら進める、男達はフォークで天ぷらを刺す。


「ちょっとまって!」

「なんだ!食べろとか待てとか。」

「食べる前に言う言葉があるの!」

「ん?祈りの言葉か?」

「似たようなものだけど違うの、『いただきます』って言って。」

「それだけか?」

「そう、これだけよ。」

 ティスケリーが言うと、男達は挨拶を言う。


「「「いただきます。」」」

 そしてフォークに刺さる天ぷらを口に入れる。


「!」

「・・・。」

「!?」

「どうよ。」

 ドヤ顔で言うティスケリー。


「うまい。」

「これは美味い。」

「美味しいな、これがテンドンか。」

「そう!これを食べに私はジブラロールに行ってるのよ。」

 フフン!と鼻を鳴らし胸を張るティスケリー、しかし男達はティスケリーを見ず天丼を見る、そして天丼を口に掻き込んだ。



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「どう~?ティスケリーパパさん達。」

「物凄い勢いで食べてます。」

「あははは、こりゃおかわり確定かなぁ。」

「でしょうね、少なくともティスケリーさんは10杯くらい行くでしょう?」

 呆れた様に言うサフィーナは次の天丼を作る。


「次は子供達に、ヨリ、そっちの天ぷらはそのままロイロ達にお願い。」

「りょ~♪」

「うちらの分残るか?」

 大愛が心配そうに呟くが、テーブルには次々と材料が準備されていた。


「いや、これ残るっしょ。」

「こんだけ食べつくすのは無理じゃん?」

「残ったら私がアイテムボックス入れるから問題無いよ。」

「いや残らないね!」

「残るっしょー。」

「ほほう?私は無くなる方にこのポテチを賭ける!」

「のった!残る方にきのこの山だ!」

 青空と大愛は賭けを始める。


「ほら、次揚げるよー!」

「ほーい。」

「千春、野菜系他にあるー?」

「んーキノコでいいなら有るよ。」

「いいね、出してー。」

 千春はアイテムボックスから黄色いキノコを出す。


「でた!イエローファンガス君!」

「元気に動いておる!」

「ヨリ、魔石はとっといてね!弾にするから。」

「リョ!」

 インパイ族4人はそれぞれ10杯以上の天丼を食べ、ペット達も酒の肴にと食べまくる、そして天ぷらはすべて食べつくした。





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