ミスリル包丁出来てんじゃね?!

「アイトネさま~♪」

((・・・。))

「うん、多分聞こえてるね!」

 美桜はアイトネを呼びながら話す。


「アイトネー怒らないから~。」

 千春は優しくアイトネに声を掛ける。


『・・・はーい。』

「テンション低っ!!!」

 頼子達は少ししょんぼりしたアイトネを見ながら話す。


「はい!アイトネ、みんなに神託スキルつけましたか!」

『・・・はい。』

「何で?」

『ほら、あのー、見守ってあげたいから?』

「ありがとう、サイキョウの見守りだね!・・・他に何もしてない?」

『!?』

「・・・その反応なにかしてんね。」

『な~・・・にの事かしら?』

「いや、なんとなく聞いただけなんだけど。」

『かまをかけるなんてズルい!』

 拗ねるアイトネ、千春はクスクス笑う。


「でも私達の事を考えてしてくれてるんでしょ?感謝してるよ?」

『ありがとう。』

「で?なにしたの?」

『う゛・・・。』

「おかぁさーん、何か知ってる?」

「ん、知ってると言えば知ってるけどー・・・。」

「あ、知ってるんだ。」

 春恵は困った顔で笑みを浮かべる。


「言えないような事?」

『そんな事は無いわ、今は何も影響のない保護を掛けてるだけ。』

「へー、保護掛けてるんだ。」

『えぇ、チハル達に危害を加える事は出来ない加護よ。』

「あ、前から言ってたヤツ?私が要らないって言ってた。」

『そんな感じね。』

「で、『今は』って何?」

『・・・。』

 黙るアイトネ、千春はズイッとアイトネに詰めよる。


「アイトネ様ぁ~?」

『えっと・・・神の寵愛っていう加護付けてるだけよ、本当よ?』

「嘘だとは思って無いから、で、今じゃ無ければ後で影響有るの?」

『んー・・・そのうち説明するわ。』

「はい、千春、それくらいにしてあげてね、アイトネ様も困ってるわよ。」

 春恵はパンパンと手を叩き千春達に声を掛ける。


「アイトネ様、私もアイトネ様呼べるんです?」

 麗奈が言うと青空達もウンウンと頷きながらアイトネを見る。


『えぇ、呼んでくれたら飛んで行くわよ♪』

「聖女なの?」

 大愛が聞くとアイトネが続ける。


「ヨリと一緒で神託スキルを7で付けてるだけよ、聖女でも良いわよ?」

「「「「「だが断る!」」」」」

 皆は一斉に答える。


「どう考えても聖女って面倒事しか思いつかないわ。」

「ほんっとそれ、千春1人で充分だわ。」

「チハル見てたらねぇ~、聖魔法使えるようになるとしても要らないわ。」

 皆はそう言うと千春を見る、千春は少し悲しそうに頷く。


「もうね・・・面倒事しか無いんだよ。」

 某ボクシングマンガの主人公の様にソファーに座った千春は灰になったように項垂れる。


「ほらほら、千春その話は終わりましょ。」

「うん、アイトネ、程々にしてよね?」

『わかってるわ~♪』

「・・・。」

 これは分かって無いなぁと思いながらも千春はアイトネの言葉を受け入れる。


「ねぇ千春、思い出したんだけど。」

「何?ヨリ。」

「ミスリルの包丁ってさ。」

「あ。」

 千春は声を上げる。


「あー忘れてたか。」

「忘れてたわ。」

「ドワーフの?」

「うん。」

 麗奈に言われ頷く千春。


『ドワーフの街ね!送るわよ!』

「良いの?」

『もちろん♪』

 話が変わり元気になったアイトネは立ち上がる。


「それじゃ包丁取りに行きますかぁ。」

 千春も立ち上がり皆は服を着替え、ドワーフの国へ向かった。



--------------



「こんばんわ~。」

 千春はザイフォンの店に着くと、そーっと扉を開け声を掛ける。


「あー!!!」

 千春を見て店に居た女性が大きな声を上げる。


「フラワちゃんこんばんわぁ~。」

「こんばんは、王女ちゃんお爺ちゃんが待ってたよぉ?」

「うっ!ごめーん。」

「おじいちゃーん!!!」

 フラウは大声でザイフォンを呼びながら奥に消える、暫くするとザイフォンが出て来た。


「やっと来たか!」

「ごめんなさーい。」

「まぁ仕方ない、ジブラロールから遠いからな。」

「あ・・・えっと、はい!」

 一瞬で来れるという事は伏せ頷く千春。


「ほれ、出来てるぞ。」

 ザイフォンは4本の包丁を並べる。


「うわぁ!綺麗!」

 ミスリルで出来た包丁は綺麗に輝き柄の部分には細かい模様が刻まれていた。


「この持つ所凄いですね。」

「同じ鍛冶職人のヤツがな、包丁と言うナイフの事を聞いて一緒に作った、思ったよりも早く仕上がったもんでな。」

「有難うございます。」

「あとはコレだ。」

 牛刀と、出刃包丁と柳刃包丁、菜切り包丁に合わせて作った皮で出来た鞘を横に並べる。


「凄い!カバー付きだ!」

「おぉー、これは凄いね。」

 千春と頼子は鞘を手に取る。


「普通の革では簡単に切れちまうからな、コイツは地竜の革を使った。」

「え?地竜ですか!?」

「あぁ、先日大量に搬入されてな、どこぞの国で大量に地竜狩りされたらしい。」

「・・・。」

 千春はチラリとサフィーナを見ると頷く。


「アレかぁ!」

「ん?知ってるのか?」

「はい・・・それ私達・・・と言うかうちのドラゴンが狩ったやつです。」

「ドラゴン・・・そりゃ大量に狩れるわなぁ。」

 ガハハハと笑いながらザイフォンが答える。


「えっとお代は?」

「要らんと言っただろ。」

「えぇ~・・・それじゃぁこれを!」

 千春は商業ギルドに渡した地竜のお返しに貰った地竜の鞣した革をテーブルに置く。


「これお礼です!」

「おぉぉい!地竜の革か!」

「はい、商業ギルドに地竜ごと肉あげたら貰ったんですよ、ぶっちゃけ使わないんであげます。」

「おいおい、これだけあれば屋敷が建つぞ?」

「いやぁ~・・・屋敷要らないんで。」

 あはははと笑いながら答える千春、そしてナイフを受け取るとお礼を言う。


「それでは有難うございました。」

「おう、王女さん、その包丁を研ぐ時は持ってきな!遠くて来れないならちゃんとした鍛冶屋に渡せよ。」

「あ、はい、その時はお願いしますね。」

 お礼を言い店を出る千春達、外にはドワーフの兵が膝を突き待っていた。


「うぉっ!?」

「へ?なに?!」

「ドワーフさん!?」

 千春達は驚き後退る。


「ガーラムへようこそレナ様。」

「へ!?私!?」

 麗奈は名前を呼ばれ、上ずった声で答える。


「はい、地の神をお呼びできる聖女だと。」

「よっ!聖女様!」

「あー、もうレナも聖女だなぁ。」

「ナカーマ♪」

「やーめーてー!」

 ニコニコで言う頼子や千春、麗奈はうんざりした顔で答える。


「是非城へ御出で頂ければとお待ちしておりました。」

「・・・えぇ~?」

 麗奈は千春とサフィーナを見ると、2人は目を逸らす。


「ちょ、ねぇ、何か言ってよ!」

「いや、これ行く流れだよね。」

「ですね、私は何も言えません。」

「えー!アイトネ様ー!」

『は~い・・・あら、聖女の称号つける?』

 女神を呼ぶ麗奈、そして女神から直々に聖女の称号をと言われた麗奈を、ドワーフ達は目を見開き麗奈を見る。


「いらないですぅ!お城行って何するんですかぁ!?」

「国王陛下との謁見を。」

「あ、ゲルダム陛下と会うなら後日でお願いします、私ひとりじゃ無理!」

「ま、そうだよねーお母様とルクレツィアさん居た方が良いよね。」

「そりゃそうだ、私達だけで行ってもねぇ、包丁取りに来ただけだし。」

「そう言う事で!アイトネ様!」

『帰るの?』

「帰ります!それじゃ!王様によろしく言っておいてください!」

 麗奈はそう言うとアイトネと千春を見る、千春はアイトネに声を掛けると景色が変わった。


「はいただいま~っと。」

「はぁぁぁ!!!!!!もうドワーフの国行けないぃぃぃぃ!!!!」

「え、良いじゃん聖女じゃん?」

「アイトネ様、レナも聖女だってー。」

『そうねぇ~、もう聖女にしちゃいましょう。』

「いや!ほんっとやめてください!マジで!ねぇ!チハル!?何かいって!!!」

「・・・ナカーマ。」

 千春は嬉しそうに仲間判定を入れるが、やめてと懇願する麗奈にひとまずは回避される事になった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る