着物で花見!

「チハルが楽しそうな事をしてるようじゃ。」

「ロイロちゃん戻る?」

 ロイロが言うと、ユーリンが答える。


「そうじゃな、クラータ付いて来るか?」

「え!?」

「メグに挨拶すると言っておったじゃろ?」

「・・・はい、大丈夫でしょうか。」

「エイダン殿が話を付けた、問題無い。」

「・・・はい、御一緒させて頂きます。」

「ロイロ様、姫をよろしくお願い致します。」

「わかっておる、お前達も大人しくしておくんじゃぞ。」

 ロイロは男達に声を掛ける。


「・・・ところで、バンカはどうじゃ?」

「意識が戻りません。」

「ほっとけばそのうち目を覚ます、モートが問題無いと言っておったからの。」

 バンカはモートに連れられ戻って来たが、白目を向いたままピクリとも動かなかった。


「よし、クラータ儂の背に乗れ。」

 そう言うとロイロはドラゴンに変化する、クラータは恐るおそる背に乗ると合図を送る。


『行くぞ!』

 ロイロは大きく羽ばたき浮き上がる、そして王宮に向かった。



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「チハル、来たわよ。」

「いらっしゃいお母様!」

「・・・素敵ね。」

 千春は深い紺に花が散りばめられた着物、春恵は薄い水色に波紋のような模様が入っている、そして楽しそうにマルグリットを迎えた。


「チハルおねえちゃんきれい!」

「んふ~♪ありがとうユラ、ユラの着物もあるんだよ。」

 文恵は千春が小さな頃来ていた着物も持ってきていた。


「状態も良いからユラちゃんも着てみるかい?」

「うん!」

 ユラとマルグリット、付き人のエリーナ、アルベルは文恵に連れられ寝室に向かった。


「あ、来た来た。」

 千春はスマホを見ながら日本に戻ると頼子を迎えに行く。


「やほ~い、きったよぉーん。」

「らっしゃーい。」

「うわぉ!着物じゃん!」

「うん、ヨリも着る?」

「この前の有るんだよね?」

「あるある!」

「着ちゃおうかな!」

 キャッキャと楽し気に異世界に戻る千春と頼子、頼子はそのまま寝室に、ビェリーは応接室に向かいルプ達とキャッキャする。


「ビェリー、アレあるよな?」

「あるばーい、ついでにあっちの酒も持ってきたばーい。」

「でかした!」

「おぉー俺も買って来ればよかったな・・・今から買いに行くか?」

 源治は少し考えながら呟く。


「なに?おじぃちゃんお酒買いに行くの?」

「おう!」

「それなら配達してもらうよ、何が良いの?」

「配達?そんな事出来るのか?」

「できるよぉ~ん。」

 千春はポチポチスマホを弄ると画面を見せる。


「ほほぉ、この日本酒と芋焼酎をお願い出来るか?」

「チハル、ロイロが近づいてる、ウイスキーも頼んでくれ。」

「おっけ~。」

 酒を注文し少し待っているとユラと頼子が戻って来た。


「チハルおねえちゃんどう!?」

「きゃわ!」

 薄いピンクに可愛い花柄の着物を来たユラ、千春はスマホをカメラモードにし、パシャパシャと写真を撮る千春。


「私も撮ってよぉ~。」

 ベージュの生地に沢山の紫陽花が入った着物をぴらぴらと振りながら頼子が言う。


「へいへい。」

 千春は頼子とユラの写真を撮るとLIMEで皆に送る。


「お母様は?」

「今髪の毛結ってたよ、めっちゃビビるよ。」

「へ?」

「千春、メグさん来たわよ。」

 春恵が言うと扉が開かれる。


「うわぁぁお!」

「ね?凄くね?」

「・・・極妻!」

 千春は思わず言葉が出る、紫の着物に散りばめられた赤やピンクの花柄、ベージュと赤の帯、そして真っ赤な髪には綺麗に結い纏められている。


「どう?チハル。」

「綺麗です!」

「凄いわよね、キモノって。」

「いえ、お母様が綺麗です。」

「ありがとう。」

 少し照れながらお礼を言うマルグリット。


「御婆様このキモノの生地って何ですか?」

「これかい?絹だねぇ。」

「キヌ?」

「シルクなら通じるかねぇ。」

「はい、蜘蛛の糸ですね。」

「へ?」

 思わず声が出る文恵。


「こっちの絹って蚕じゃないんですか?」

「カイコ?」

「蛾の幼虫が作る繭なんですけど。」

「繭を作る魔物は居るわ、でも蜘蛛の糸なら取るのが楽じゃない?」

「こっちの蜘蛛ってどんなのですか?」

「えーっと、ユラくらいの大きさで森に大きな巣を作るの、一つの巣でこのキモノ1着分くらい取れるわ。」

「・・・想像しちゃった。」

「サブいぼ出たわ。」

 千春と頼子は腕をスリスリしながら言う。


「高いんですか?」

「高いわね、そこらの冒険者が着る鎧より高いわ。」

「ひぇぇ~・・・って冒険者の鎧値段知らない。」

「ま、千春ならいくらでも買えそうだけどねぇ~。」

 笑いながら頼子が言うと、LIMEの通知音が鳴る。


「・・・ミオ達来るって。」

「ミオとレナ?」

「うん、ソラ達も。」

「みんなで着物パーティーするかぁ。」

「何それ、何するの?」

「・・・抹茶でも飲む?」

 何も考えてなかった千春は適当に答える。


「チハル、仕立て屋を呼んで良いかしら?」

 マルグリットは千春と文恵を見ながら言う。


「着物作るんですか?」

「えぇ、素敵だわ、是非この国にも広めたいの、ダメかしら?」

「良いよね?おばぁちゃん。」

「構わないよ?」

「アルベル。」

「はい、直ぐに。」

 マルグリットは即アルベルに言うと、アルベルは直ぐに動いた。


「チーちゃんお友達も来るのかい?」

「うん!」

「それじゃ皆着物に着替えるんだねぇ。」

「おばぁちゃんも着替えたら?」

「お婆ちゃんはいいよ。」

「えー、みんなで着ようよー。」

 千春は援護射撃をお願いするように春恵を見る。


「お母さん、着ましょ。」

「しょうがないねぇ。」

「おばぁちゃんの着物は誕生日の時に持ってきてたヤツだよね!」

「ついでだから持ってきたけど、まさか着るとはね。」

 まんざらでもない様に文恵は微笑む。


「お手伝い致しますね。」

 サフィーナは文恵を連れ寝室に行く。


「さ~てと、おかぁさん着物でやる事って何があんの?」

「ん~、外でお花見?」

「お花見かぁ、もう葉桜だしなー、アイトネに言えばまた咲かせてくれるかな。」

『呼んだー!?』

「うわぁ!アイトネなんで着物着てんの?!」

『仲間外れヤだもん。』

「ヤだもんって・・・外で花見したいなーって話してたんだけど。」

『任せてー!』

「アイトネ様ぁ、そんなぽんぽん桜咲かせて大丈夫なんですか?」

 しょっちゅう桜を咲かせるアイトネに頼子が心配そうに問いかける。


『大丈夫よぉ~、必要なマナは私が送り込んでるし、この木って世界樹の種で育ってるから他の木とは違うもの♪』

 真っ赤な生地に大振りな花が咲き乱れた柄の着物を着たアイトネは、す~っと庭に出ると魔力を解放する。


『桜ちゃーん咲かせるわよー。』

「は~い♪」

 桜の精、桜が嬉しそうに返事をすると、桜の葉が消え蕾が現れる、そしてあっという間に満開の桜が咲く。


「・・・何でも有りだね。」

「流石女神だねぇ~。」

 千春と頼子は城の屋根ほどある桜の木を見上げながら呟いた。






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