ドッペルゲンガー?!
とある平日の昼間、千春は日本に戻り学校へ行っているが、王宮には千春の姿があった。
(チハル王女はこの時間別の部屋に閉じこもり姿を見せることはない・・・。)
千春の姿をした女は可愛いドレスを身に纏い廊下を歩く。
(ここね。)
扉の前に立つ女はそっとドアノブに手をやる、そしてゆっくり扉を開くと侍女がいびきをかいて寝ていた。
(え?ココよね?何この侍女・・・たしかモリアンだったわよね?)
そっとドアを閉める女、辺りを見回し他に人がいない事を確認すると、寝室の方へ向かう。
(この部屋は何かしら。)
うっすらと光る魔法陣に照らされた不思議な扉、その扉は閉められている、扉を見回すが、裏には何もなく扉だけが立ててあった。
(何かの魔法かしら、警報でも鳴ったら面倒ね。)
次の部屋の扉を開く女、そこには王女の寝室らしい大きなベッド、沢山並んだクローゼット、更に奥にも部屋があるようだ。
(流石王女殿下ね、素敵な寝室だわ。)
女は奥の扉を開く、脱衣所が有り浴室があった。
「ココには何も無さそうね、チハル王女の秘密なんてどうやって調べるのよ。」
そう呟くと女は寝室に戻る、そして門の部屋を通り応接室にそっと戻る。
「ふわぁぁぁ・・・あれ?チハルはんおかえりなふぁぁぁい。」
伸びをしながら挨拶をするモリアン。
(確かモリーって呼んでたはず。)
「ただいまモリー。」
「学園は終わったんですか?」
(学園!?学園に行ってるなんて聞いてないわよ!?)
女は平静を装いながらも答える。
「えぇ、早退したの。」
「・・・。」
(何故黙るの?)
「何か変な物食べました?」
「食べてないわよ!?」
(チハル王女はかなりくだけた話し方をするはず、王族、いえ、貴族としても緩いはずよね!?)
「あ!分かりました!貴族ごっこですね!?」
モリアンはポンと手を打ち言う。
「そ、そうなの!どうかしら!?」
「うーん、もうちょっとですねぇ、貴族令嬢でしたら高笑いしても良いんじゃないですぅ?」
無茶振りするモリアンに女はキョトンとした顔をする。
「お茶入れますね!そうそう!マチルの実があるんですよ、チハルさん好きですよね!」
そう言うとモリアンは厨房に移動する。
(マチルの実なんて、チハル王女は庶民的な果物が好きなのね。)
女はなんとか誤魔化すことが出来ホッとする、そしてソファーに座るとモリアンは切ったマチルの実を置く。
「どうぞ〜♪サフィーより上手では無いですけど。」
千春に化けた女の前にお茶を淹れる。
「ありがとう。」
女はマチルの実をパクリと口に入れる、ほんのり甘いが酸味が強く軽く渋みも感じる、市井ではごく普通に食べられている食べ物だ。
「美味しいですかぁ?」
「えぇ、美味しいわよ。」
ニッコリと微笑む女、モリアンもニッコリと微笑む、すると扉のノックが鳴る。
(来客!?)
「は~い。」
モリアンが扉を開けると、狼の耳を動かしながら獣人が入って来る。
「ルクレツィアさんいらっしゃいませ~♪」
「あら?チハルちゃんもう帰って来たの?」
「えぇ、早退したの。」
「・・・へ?」
ルクレツィアはモリアンを見る、そしてキョロキョロと見まわす。
「ルプ様は?」
「今日はあっちですよ~。」
「そう・・・ふぅん。」
ルクレツィアは千春の姿をした女をジッと見ると、フッと笑みを浮かべた。
「そう、また来るわ。」
「は~い。」
扉を閉めるモリアン、そして女の方を見るとニコッと笑う。
「チハルさんお昼食べましたぁ?」
「いえ、まだよ?」
「何か作ります?」
(そう言えばチハル王女は料理が物凄く上手って・・・私は作れないわよ!?)
「えっと・・・食堂に行こうかな?」
「今行くと混んでますよぉ?」
「あー、え~っと・・・あまりお腹空いてないから。」
「そうなんです?」
モリアンは時計を見るともうすぐ12時を指す所だ。
「モリー、食べて来て良いわよ。」
「良いんですか?それじゃ部隊の子呼びますね。」
「いえ!大丈夫!1人で居たいから!少し1人にさせて頂戴!」
「わっかりました~♪それじゃお昼いってきまぁす!」
モリアンはそう言うと扉を開け出て行った。
「・・・はぁ、あの子がアホっぽくて良かったわ、サフィーナって侍女が居ない時間を確認して来たのに。」
ブツブツと呟きながら女は立ち上がる、そして部屋の引き出しや棚を見て回る。
「・・・何も無い。」
棚やテーブル、他にも収納があるが、ほぼ何も入っていなかった。
「物が無さすぎじゃない?」
呟きながら女は大きなテーブルの前に立つ。
「人形ね・・・綺麗。」
女は日本人形を見ながら呟く、そして目線を逸らした瞬間人形が動いた気がした。
「!?」
直ぐに人形を見るが、人形は動かない。
「気のせい・・・かしら。」
女は人形から離れ、また部屋を物色する、しかし何も見つからなかった。
「メモどころか生活用品すら最低限しか無いわ。」
普段使いどころか、必要品はすべて千春とサフィーナ、そしてモリアン達の魔道具のアイテムボックスに収納されていた。
「・・・やはり聞いて行くしか無いのかしら、このままでは帰れないわ。」
女は考える。
「モリアンって子に聞けば・・・いえ、もうここには何も無い、侍女に偽装スキルで変身した方が効率が良さそうよね。」
「ただいま戻りましたぁ!!!!」
「うわぁ!ビックリした!」
「あれ?チハルさん何してたんですかぁ?」
「え?ちょっと歩いていただけよ?」
「そうなんですか、お散歩でもされますか?」
「そうね、天気も良いしちょっと散歩してくるわ。」
女はそう言うと庭に出る、するとドラゴンが飛来してきた。
「ど・・・ドラゴン!」
ドラゴンは地上に降りると人型に変化する。
「ロイロさんお帰りなさーい。」
「うむ・・・モリー、このチハルは・・・。」
ロイロがモリアンに話しかけながら言葉を止める。
「チハルさんが散歩したいそうですよ、いつもみたいに空の散歩なんてどうですかぁ?」
「ほう?そうじゃなぁ、チハル、背中に乗れ。」
「へ?」
ロイロはドラゴンの姿に戻ると首を下げる。
『ほれ、いつもの様に空の散歩じゃ、好きじゃろ?』
「え・・・えぇ・・・お願いするわ。」
おそるおそる女はロイロの背に乗る、ロイロはモリアンを見てニヤリと笑う、モリアンも悪戯顔でニヤリと笑う。
『そぉれ行くぞぉ!』
ロイロはそう言うと地面を蹴る、以前モリアンを乗せアクロバット飛行した時と同じ様に。
「きゃぁぁぁぁぁ!!!!!!」
大きな声を出しながら遠ざかるロイロと女、モリアンは手に付けた通信機で話をする。
「チハルさん姿の不審者、現在ロイロさんと空の散歩中で~す。」
『了解、もうすぐ戻るわ。』
「はーい、サフィー、まってま~す。」
フフン♪とモリアンはしてやった感バリバリで空を見上げながら満足そうにしていた。
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