叫ぶ野菜!

「千春!マンドラゴラ取りに行こ!」

 頼子がアリンハンドの所から戻って来ると千春に声を掛ける。


「マンドラゴラ?ってあの抜いたら叫ぶヤツ?」

「そ!そのまんまマンドラゴラってあるらしいよ!」

「えー叫び声聞いたら死ぬって言うじゃん。」

「大丈夫!ほら。」

 頼子はそう言うと手を見せる。


「・・・耳栓?」

「そ!耳栓してたら大丈夫だってさ♪」

「まぁ・・・そうだね、って本当に大丈夫なの?」

「うん、アリンさんもコレで抜いたって言ってたし。」

「実証済かぁ、んじゃ良いか、で?何処にあるの?マンドラゴラ。」

「森。」

「・・・の?」

「どっか。」

「・・・サフィー、ヨリが使えない子になったー。」

 千春は困った顔でサフィーナの方を見ると、顎に手を当て何かを考えている。


「サフィー?」

「あ、ごめんなさい、確か学園の実習で見つけた事があったの。」

「へぇ、で、抜いたの?」

「そのまま放置したわよ、本当に叫び声聞いたら死ぬもの。」

「耳栓持ってなかったんだ。」

「えぇ、取りに行くなら準備してましたけれど、実習の時だったから。」

「ふぅん、ほら、なんか耳に詰めておけばよかったんじゃない?」

「それじゃダメなのよ、ほら、ヨリの持ってる耳栓見て。」

 千春は頼子の手にある耳栓を手に取る。


「ん?これ魔道具なの?」

「らしいよ、完全に音をシャットアウトする魔道具だってさ。」

「ね、その耳栓が無いと手で押さえた程度じゃ効果は半減以下、最悪死ぬわよ。」

「やっべぇ・・・え?本当に大丈夫なの?」

「・・・多分。」

「ちょっとぉ!ヨリ本当に大丈夫!?」

 千春が頼子に言うと、モリアンが話しかける。


「チハルさん大丈夫ですよ、私も採った事有りますから。」

「私もありますっ!」

 モリアンが言うとラルカも手を上げる。


「あーラルカは色々収獲してそう、モリーはなんで?」

「アルバイトです!」

「命がけのアルバイトとか嫌だなぁ。」

「思い出したわ、確か森に入って西側の草原を抜けた所で見たわ。」

「でもそれ何年も前だよね?抜かれてんじゃない?」

「多分大丈夫だと思うわ、森と草原の境目で人目に付かない所だったもの。」

「へぇ・・・なんでそんな人目に付かない所で見つけたの?」

「・・・ちょっとお花摘みを・・・ね?」

「あ、うん、そうだよね、無いよねアレ。」

 察した千春は話題を変える。


「ヨリ、マンドラゴラなんて採ってどうすんの?」

「ん?いや、別に?」

「はぃ?」

「いや、アリンさんに聞いてさ、面白そうって話してたら耳栓くれてさ、行くっきゃないっしょ。」

「・・・いや、意味わからん。」

「分かれよー。」

「そもそもこの寒さで枯れてっかもしれないじゃん?」

「大丈夫!年中採れるらしい!」

「チッ。」

「舌打ちすんなし。」

「さーむーいーじゃーん!」

「はい、これあげるから。」

「なにこれー。」

「携帯暖房魔道具。」

「準備いいなおい!」

 そう言いながらも受け取ると魔力を通す。


「おぉぉおぉ!あったけぇ~♪」

「さ、行こうか。」

「マジか、サフィー良い?」

「良いですよ、護衛はどうしましょうか?」

 サフィーナはそう言うとルプとビェリーが動く。


「よし、行くか。」

「叫ぶ野菜やろ?楽しみやん?」

 楽しそうに言うルプとビェリー。


「イロハ行くにゃ?」

「一緒に行って良いの?」

「いいよー、イロハも行く?」

「行くわー。」

「それじゃ吾輩もいくにゃ。」

 和人形の彩葉、猫又の三珠も楽しそうだ。


「あとはサフィーとモリー、サリナとラルカかな?」

「マクリも連れて行きましょう。」

 確認しているとサフィーナがマクリもと言う。


「なんで?大丈夫?」

「マンドラゴラって猫が好きな匂いらしいのよ、多分役に立つわよ。」

「・・・マタタビかな?」

「ミタマがんばって。」

「頑張るにゃ!」

 三珠は彩葉に答えると頼子が影から大量の耳栓を取り出す。


「はーいみんな配るけど今付けないでね、何も聞こえなくなるから。」

「へぇちょっと付けて良い?」

 千春は耳栓を付けると頼子を見る、頼子は口をパクパクさせている。


「おぉ!何も聞こえない!すげぇ!」

「いや、喋ってないし。」

「聞こえるじゃん!!!」

「魔力通した?」

「あ、忘れてたわ、もう一回!」

 千春は耳に手を当て魔力を通すと音が消えた。


「おおおお!本当に無音だ!」

「・・・・・。」

「また口パクじゃないよね?」

 千春が言うと頼子がウンウンと頷く、そして耳栓を外すと音が聞こえた。


「聞こえないっしょ。」

「うん、まったくの無音!すっごいなんか怖かった。」

「わかるー、それじゃ行こうか。」

 頼子が言うと皆は外に出る、そして箒に跨ると地面を蹴って空へ上がる。


「サフィー道案内よろ~♪」

「了解、それじゃ付いて来て下さいね。」

 サフィーナは千春に答えると、王都の上を通る。


「今日王都人多いね。」

「祭りが近いですからねぇ~。」

「モリー、祭りって何?」

「王国の建国祭ですよ?」

「・・・聞いてない。」

「あ、そうですよねぇ!知ってると思ってました!」

「王国の人間で知らない人は居ませんからね、失念してました。」

 サフィーナも千春を見ながら謝る。


「建国祭かぁ、何するんだろ。」

「大道芸とか剣技大会とか色々ありますよー。」

「へぇ、いつあるの?」

「1小月くらいですね。」

「1小月って10日だっけ。」

「はい、もう色々準備してる所も有りますから今からでも楽しめますよ。」

「マンドラゴラ取ってる場合じゃないじゃん。」

 千春は頼子を見る。


「マンドラゴラ収獲し終わったら行けば良いじゃんよ。」

「まぁね。」

 サフィーナが先頭になり王都を抜けると街道が有る、所々に商人や旅人、馬車が王都に向かっている。


「おぉ~♪人来てるね~♪」

「千春の旅館も人来るんじゃない?」

「来るかなぁ。」

「もう王族の者くらいしか入れませんよ、予約で1大月先まで予約で埋まってますから。」

「え?そんなに?!」

「はい、商業ギルドが窓口になってます、フリエンツ王国のマリーナ様、ティスケリー様の予約は固定で他の部屋はチハルや王族が泊まれる1部屋が確保されてますね。」

「閑古鳥鳴いてたらどうしようと思ってたけど、杞憂だったか。」

 話をしていると森の上を通る、ルプの背にビェリーと三珠、彩葉が乗り千春の横を空を蹴りながら走っている。


「美味そうな猪が居るな。」

「お土産に狩って行くのも良いばい?」

「ビェリー誰にお土産なのそれ?」

「吾輩たちの弁当にゃ。」

 4人は下を見ながら楽しそうに話す。


「千春すぐ追いつくから先に行っててくれ。」

「ほーい、いってら~。」

 ルプ達はそのまま森に降りて行った。


「今日は猪とマンドラゴラ料理かなぁ。」

「マンドラゴラ料理ってどんなの?」

「わかんね、取り敢えず採って見ないとわかんないよ。」

 千春達は森を抜けると草原と言われていた平地へと向かって行った。







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