猫耳ママさん!
「こっち・・・です。」
マクリはダンジョンと逆の方に向かい、馬車は通れない程の道を歩いて行く。
「村じゃないの?」
「はい・・・です。」
「お母さん1人だけ?」
「はい、おかーさんの冒険者仲間の方が、食べ物とか待ってきてくれます・・・です。」
皆はマクリの後ろを歩く、マクリは皆を気にしながら歩いて行く、走って行きたいのを我慢している様に見える。
「もうすぐ・・・です。」
そう言うと木々の隙間から小さな家が見えた、マクリは我慢出来なかったのか家が見えると駆け足で扉に向かった。
「おかーさん!ただいま!」
扉を開け大きな声で声を掛けるマクリ、返事はない。
「お邪魔しまーす。」
サフィーナが先に入り、その後ろから声を掛けながら千春が入る、奥の部屋からマクリの声がする、サフィーナはその部屋に向かい皆もついて行くが広い部屋ではない、エンハルト達男性人は家の前で見ていた。
「この人がお母さんだね。」
猫耳の女性がベッドに横になり目を瞑っている、千春の声にも反応せず千春は心配になったが胸は上下に動いている。
「マクリちゃん代わってもらっていいかな?」
母親の横にしゃがみ、手を握るマクリと場所を代わり千春はアイテムボックスからジャムを取り出す。
「食べれるかな?」
「水で溶かして飲ませた方が良くない?」
頼子や青空達も母親の周りに来る。
「アレみたいなのないかな。」
「あれ?」
「病人に寝たまま飲ませる事が出来るやつ、病院にあんじゃん?」
「あー、マクリちゃんお水とかどうやって飲んでるの?お母さん。」
「ごはん食べる時は起きてくれます、まだ歩く事もなんとかできます・・・です。」
マクリは母親に声を掛けながら優しく揺らす。
「おかーさん。」
「・・・マクリ、何処に行ってたの?」
母親はマクリに微笑むと千春達に気付き驚いた顔をする。
「どちら様でしょうか。」
「え~っと・・・マクリちゃんのお友達です、病気と聞いて付いて来ました。」
「そうですか、申し訳ありませんおもてなしも出来ませんで。」
そう言うと母親は起き上がろうとする、マクリは手を貸し体を起こす。
「あの、いつからこの症状に?」
「1年以上になります。」
「何の病気か分かりますか?」
「いえ、探検から帰って来てから急に体が重くなり熱が引かないのです。」
溜息を吐きながら母親は言う、話すのも辛そうだ。
「あ、紹介が遅れました、私はチハルって言います。」
千春が言うと周りに居る頼子達も自己紹介をする。
「私はパトリと申します。」
フゥと息を吐き呟くように自己紹介をするパトリ。
「えっと、お母さんコレ食べれますか?」
千春はジャムが入った瓶にスプーンを入れ渡す。
「・・・ジャム?」
「はい、珍しい木の実で作ったジャムです、病気によく効くんですよ。」
笑みを浮かべながら千春は世界樹のジャムを渡す。
「・・・良いのですか?」
「はい、食べてみてください。」
屈託のない笑みを浮かべる千春にパトリは警戒する事もなくスプーンを取り、ジャムを口に入れる。
「美味しい。」
パトリはほんのりと笑みを浮かべる。
「どうです?」
「分かりません、少し体が楽になった気もしますが・・・。」
「これって直ぐに効果出るものなのかな?」
「どうだろう、これ使った事ないもんねぇ。」
「誰か分かるかな。」
「ちょっとアリンさんに聞いてくるわ。」
頼子はそう言うと玄関に居るアリンハンドの所に行く、頼子に言われアリンハンドが部屋に入って来た。
「どうですか?」
「ん~あんまり変化無いみたいなんだけど、直ぐに効果出ないの?」
「いえ、私もチハルさんから貰った物で病人に試しましたが、即効で治りました。」
「即効・・・効いてないんだよねぇ。」
「チハル、病気じゃないとか?」
「え?」
麗奈はパトリを見ながら呟く。
「ほら、探検から帰って来て発病したって言ってたじゃん。」
「うん、言ってたね、でも病気じゃ無かったら何だろ。」
「う~ん・・・あっ!」
「なに!?」
「呪いとか!」
「えー!呪い!?」
「いや分かんないよ?でも可能性としてさ。」
麗奈はう~んと考えながら呟く。
「うん、こういう時は。」
千春はそう言うとあの人を呼ぶ。
「アイトネ様~♪」
『な~に~?』
「ちょっと聞いて言い?」
『・・・えぇ、その子呪いに掛かってるわよ。』
「言う前に答える?」
『早いでしょ♪』
「早いついでに呪いの解除を教えてくださいアイトネ様ぁ~♪」
『なんで様付けるの?』
「なんとなく。」
『えっとねぇ、ルクレツィアちゃんと違って単純な呪いだからチハルの魔力で飛ばせるわよ。』
「は?私の魔力?」
『えぇ、聖女の魔力で消せるわね、ちょっと覗いて見たけど呪物の石碑を触ったみたいね。』
アイトネが言うとパトリは思い当たる節が有るのかハッとした顔をする。
「多分・・・いえ、きっとあの石碑です、触りました。」
『その石碑に触った物に呪いが無差別に掛かるようになってるわ、発動のタイミングはランダムだから気付きにくいみたいね。』
「それじゃ私はどうやったらいい?」
『ちょっとまってね。』
アイトネは千春の瞼をそっと触る。
「なに!?」
『少しだけ見える様にしたわ。』
アイトネに言われ千春はパトリを見ると腕から胸あたりまで黒い靄が掛かってる。
「うわぁ!なにこれ!?」
『呪いの瘴気よ、これを魔力で振り払う感じで消し飛ばしてみて。』
「はーい、パトリさんちょっとじッとしててくださいね。」
千春は手の平に魔力を溜める、そして魔力を押し出すように瘴気に当てる。
「うわぁ・・・おもしろっ。」
「千春面白がっちゃダメでしょ。」
「いや、ごめん、でもなんだろう、消臭剤吹きかけたら匂い消える所が見える感じで面白い。」
千春はそう言いながら手をフリフリして瘴気の靄を消していく。
「はい!消えたかな?」
アイトネに向かい言うと、アイトネはウンウンと笑みを浮かべている。
「パトリさん、もう大丈夫ですよ。」
「・・・軽いです、凄い、貴女は何者・・失礼しました、どういった方で?そしてそのお方は?」
パトリは千春に向かい座り直す、そしてアイトネを見つめる。
「えっと、この人・・人?は、女神のアイトネ様、私はこの女神様に強制的に聖女にされた可哀そうな女の子です。」
『チハル・・・言い方。』
「冗談だよ。」
笑いながら千春はアイトネに謝る、するとパトリは頭を下げる。
「有難うございます、この御恩どうお返しさせて頂ければ宜しいでしょうか。」
深々と頭を下げるパトリ。
「いや、お返しとか要りませんよ。」
『私はチハルからお菓子もらうから私も要らないわ♪』
「うん、アイトネには美味しいお菓子あげるね。」
『♪』
2人のやり取りを呆けて見ているパトリ。
「・・・あ!おかーさん!私ダイア様にお仕えする事になったの!」
思い出したようにマクリがパトリに言う。
「え!?何をするの?」
驚くパトリ、千春達はオークションの事は話さず侍女メイドとして雇う事を説明する。
「宜しいのですか?王女殿下様で御座いますよね?」
「あ、バレました?」
「はい、聖女様の噂はお聞きしておりますので。」
「ありゃ~、話変わりますけど旦那様は?」
「薬を探すと家を出て・・・戻っていません。」
「えぇぇ、どれくらい戻ってないんです?」
「私が発病して教会に治療をして頂いたのですが、効果が無くその後すぐに旅立ちました。」
「・・・ちなみに旦那様って石碑触りました?」
「・・・はい。」
「あちゃぁ・・・。」
千春はアイトネを見る、アイトネは直ぐに意味が分かり首を横に振る。
「そっか、えっと・・・うーん。」
「お気になさらず、あの人もどこかで呪いが発動してしまったのでしょう。」
寂しそうに呟くが、パトリはマクリを見る、そして頭に手を乗せる。
「大丈夫です、私がこの子を育てますので。」
そう言うと立てかけられた弓を見るパトリ。
「あーそれなんですけど、これマクリちゃんお母さんに渡す?」
「はい!」
大愛は金貨の入った袋をアイテムボックスのポシェットから取り出し渡す。
「うっ・・・重っ!こ、これはマクリちゃんをお預かりするお金です。」
ダイアは微笑みながら説明する、パトリは袋の重さに驚く。
「それ10㎏あるからねぇ。」
「病み上がりの人には持てないよ。」
「そうそう、そこらへん置いときなよ。」
青空達が言うと、大愛は「そだね。」とベッドの横にドスンと置く。
「こ・・・これは?」
「えっと、マクリちゃんのお給金10年分前払いです。」
「そんな!これ金貨ですよね!?10年で稼げる金額ではありません!」
「いえ、稼げちゃうんです、私達一応貴族なので給料高いんですよー。」
適当に言う千春達、そしてサフィーナが話しかける。
「私達がしっかりサポート致しますので、お母様は心配されなくても大丈夫ですよ。」
「はい!私達もちゃんと教えますから!」
「モリアンは直ぐに教えられる側になるわよ?」
「私もおしえますぅ!」
サフィーナが言うとモリアンも手を上げる、しかしサリナは冷めた目でモリアンを見る、ラルカも手を上げピョンピョンと跳ねる。
「パトリさん、言われた通り私は王女です、外に王子殿下も居ます、私達が責任を持ってお預かりしますからご心配されないで下さい。」
「・・・はい、マクリ大丈夫?」
「うん、頑張って働くよ!」
マクリは元気になった母親を見て嬉しそうに返事をする、パトリはもう一度マクリの頭を撫で千春を見る。
「この子をよろしくお願い致します。」
「はい、ちゃんとお休みもあげますから、送り迎えつきで家に帰って来させますね。」
「千春送り迎えって?」
「ん、ドラゴン1人くらい良いでしょ。」
「ドラゴンかい!」
「あー護衛にもなるし良いかもね。」
「勝手に決めて良いの?」
「いんじゃね?王女様だし。」
「なんならリリに送ってもらっても良いじゃん?」
「レナと一緒にあっち行く事有るじゃん、ドラゴンが確実だって、いっぱい居るし。」
千春達は好き勝手に話を進める、マクリは何の話か分からずキョトンとしているが、パトリはドラゴンと聞き目を見開き驚く、その姿をサフィーナ達はクスクスと笑いながら見ていた。
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