未来の奥様はトラブルメーカー!
「殿下、アリンハンド魔導士団長が来られました。」
「入ってくれ。」
エンハルトは職務室の机で書類から目を離さず答える。
「エンハルト殿下、呼ばれましたが用事ですか?」
「あー、まぁそんな感じだ。」
頬杖をついたまま書類に印を押し、次を見る。
「忙しそうですね、それで?用事とは?」
「・・・遺跡の方はどうなっている?」
「魔道師団と騎士団の護衛で探索しています、まだ探索は終わってませんね。」
「チハルは?」
「既に戻られましたねぇ。」
アリンハンドの返事にため息を吐くエンハルト。
「はぁ・・・で、遺跡の権利は?」
「はい、チハルさんは即答で放棄されました。」
「はぁぁぁ・・・アリン、お前遺跡担当な。」
「嫌です。」
「・・・王子殿下の命令だが?」
「嫌です。」
「本来なら発見者から国が権利を買い取るなりするんだが。」
「そうですね。」
「そうなると貴族が食い付くんだ、その対応なんてする暇ねぇんだよ。」
だんだん言葉遣いが荒くなるエンハルトにアリンハンドは苦笑いする。
「それにしても書類多すぎませんか?」
「こっちの山はぜーーーーんぶチハルの案件だ。」
書類の山をポンポンと叩きながら呟き、一番上の紙をアリンハンドに渡す。
「・・・温泉旅館の資材清算書ですか。」
「あぁ、もうすぐ建つらしい。」
「なぜコレがハルトの所に?」
「本来なら宰相とその部下が決済するんだが・・・タイキ殿が戻って来ているからな、忙しくて手が回らないらしい、チハル関連の物は全部俺に来た。」
「あ~~~、少し話を聞きましたが、凄い沢山計画書作ってましたね。」
「タイキ殿の計画は是非にでも進めたいからな、協力するしかないだろう。」
「まぁ未来の奥様ですからね。」
「ルーカスにも同じ事を言われたよ、それを言われたら断れないだろう?」
苦笑いしながらエンハルトは書類に手を付ける。
「ま、そう言う事だ、遺跡の方は任せたぞ。」
「嫌だと言いましたが・・・仕方ありませんね。」
「仕方ないわけないだろう、そもそも遺跡に行く事になったのはヨリの発言らしいじゃないか。」
「うっ・・・そ、そうでしたか?」
「ヨリが暇だと言って、女神アイトネが遺跡に連れて行ったと聞いている、お前の未来の奥様が原因だろう?」
「・・・はい、遺跡の方は承りました。」
「よろしく。」
一つ荷が下りたエンハルトはふと開いた窓を見る。
「今日は過ごしやすいな。」
「えぇ、天気も良いですし温かいですねぇ。」
「・・・今日は飛空艇の飛ぶ予定有ったか?」
エンハルトは目を細めながら遠くの空を見る。
「いえ、飛空艇の予定は聞いてませんので分かりませんが、タイキ様がテスト飛行でもしているのでは?」
2人は窓の方へ行くと空を見る。
「・・・飛空艇じゃないな。」
「はい、まず色が違います、それに大きさが・・・かなり大きいですね。」
エンハルトとアリンハンドがそう言うと、ドラゴン達が竜騎士を乗せ飛び立つ所だった。
「魔物か?」
「ど、どうでしょうか、ドラゴンと比べてもかなりの大きさですよ!?」
空をゆっくりと王都に向かって飛ぶ物は、ゴンドラの様な物を吊り下げている、まさに飛行船の様な風体だ。
「竜騎士団が近くまで行ったが攻撃はしていないな。」
「敵ではないようですね。」
「何故あんな物が有るんだ。」
「さぁ・・・ってあの上の所・・・動いてますよ!?」
「なんだと?」
飛行船の上部分を2人が見ると、後部が揺れて動いている。
「クジラだな。」
「クジラですね。」
「アレは空を飛ぶ物なのか?」
「いえ、海に居るものですから、飛ぶとは聞いた事がありませんね。」
ドラゴンと竜騎士達に案内されるようにグングンと近づくクジラの飛行船は近くまで来ると空中で止まった。
「街が混乱するぞ?」
「大丈夫じゃないですか?」
「何故そう思う?」
「ほら、うすうす感じてませんか?アレの原因に誰が関わってるか。」
「・・・考えないようにしてたんだがなぁ、アリンもそう思うか?」
「まぁ~十中八九間違いないと思いますけどねぇ。」
「で、それと街の混乱に関係があるのか?」
「あんなのが王都に来て落ち着いているハルトと同じですよ。」
「お前他人事みたいに言ってるがなぁ、お前の相方も大概だからな?」
「そんな事・・・無いですよね?」
アハハと笑いアリンハンドは返すがそれ以上は言えなかった。
「でも今更ですからねぇ。」
「・・・慣れって怖いな。」
「はい、私もそう思います。」
「よし、あそこはドラゴンの庭だな、行くぞ。」
「了解です。」
2人は窓から離れ、クジラが着陸するであろうドラゴンの憩いの場に急いで移動する事にした。
--------------
「クジラだねぇ。」
千春は部屋から出ると空を見上げる。
「何人分のクジラ肉取れるかなぁ。」
頼子はクジラを見ながら呟く。
「チハル、フリエンツ王国からの船じゃ、マリーナとガゥアンが乗っておったわ。」
飛行船が近づき、いち早く気付いたロイロは人型のまま飛び上がり偵察し、帰って来た。
「あのクジラ生きてるの?」
「あー見た目はクジラじゃが種族的にはドラゴン側じゃぞ。」
「そなの?」
「あぁ、儂はドラゴンが来たと思って行ったんじゃがな。」
「千春見に行かない?」
「よし、近くに行こう!」
千春と頼子は箒を取り出しクジラに向かって飛んで行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます