花火!

「うっは!綺麗!」

「鳥居?」

 朱色の木で出来た鳥居が幾つも並んだ道を、千春達は歩いて行く。


「すぐ着くよ。」

 頼子はアリンハンドとビェリーと並んで先頭を歩く。


「いらっしゃいませ。」

 狐耳の巫女が頼子に声を掛ける。


「皆んな連れてきました。」

「はい、此方へどうぞ。」

 狐耳巫女はニッコリ微笑み庭へ促すと、宇迦之御魂が出迎える。


「いらっしゃい、異世界の住人達よ、妾は宇迦之御魂じゃ。」

「お呼び頂き有難うございます。」

 エンハルトは宇迦之御魂に頭を下げてお礼を言う。


「構わんよ、ウチの子が世話になっておる、今日は楽しむが良いぞ。」

 笑みを浮かべ、エンハルトに答える。


「ウカ様いつもと話し方違いますね。」

「あら、最初くらい神様っぽく挨拶した方が良くない?」

「そう言えば最初に私が呼んじゃった時もそんな感じでしたね。」

「そうね、営業用だもの。」

「神様も営業するんだ。」

「ウカ様夜店のご飯食べます?」

「頂くわ、テーブルに並べましょう。」

 宇迦之御魂が言うと、数人の巫女が庭にテーブルと椅子を並べて準備をする、皆狐耳だ。


「巫女さん皆んな狐さん?」

「そうよ。」

「コンはなんでショタっこなんです?」

「・・・可愛いから。」

「「「確かに!」」」

 千春と宇迦之御魂の話を聞いていた美桜達は即答で同意する。


ドーン!


「始まった!」

 轟音と共に夜空に咲く満開の花、千春達は花火に目を向ける。


「・・・これは。」

「これが花火だよ、ハルト。」

「・・・・・・・。」

 言葉を失い花火を見るエンハルト、気付けば皆が花火に釘付けになっていた。


「・・・綺麗。」

 サフィーナは屋台の食事を並べるのも忘れて呟く、次々と打ち上がる花火、皆は驚き、笑顔になり見続ける、千春も花火を見るが、皆の感情とは違い悲しそうな顔をする。


「チハル。」

「ウカ様。」

「花火は楽しく見るものよ。」

「すみません。」

「謝らなくても良いわ、でも過去に囚われてはダメよ?今を大切にしなさい、ほら。」

 宇迦之御魂は視線を移すと、エンハルトが千春を見つめている。


「・・・。」

 エンハルトは微笑みながら千春に手を差し出す、千春はその手を取り横に並ぶと、エンハルトは千春の涙を拭う。


「大丈夫か?」

「うん、大丈夫。」

 千春はエンハルトに笑顔で返すと、大きく息を吸う。


「たーまやー!!!!!!!!」

 千春が叫ぶと、頼子達も声を上げる。


「かーぎやー!!!!!!!」

「たーまやーーー!!!!!!!」

「かぎやーーーーーーー!!!!!!」

 母と見た最後の花火を、そして目の前に咲く大輪の花火に思いをぶつける様に千春は叫んだ。


「要らぬ心配じゃったか。」

 ロイロは腰に手を当て千春とエンハルトを見る、2人は手を繋ぎ花火を見ている。


「あぁ、ハルトが居れば大丈夫だろ。」

「ちと寂しいのぅ。」

「そうか?ロイロと話している時は楽しそうだぞ?」

「そう言うルプもじゃろ、寝る時なんぞルプを枕にした時は安心しきっとる。」

「アレは俺の役得だからな。」

 千春の感情が分かる2人は落ち着いた千春を見ながら笑みを浮かべた。


-----------------



「はぁ、綺麗だったねー。」

「やっぱ凄いわ。」

「ねー、ここすっごい見えるね。」

 青空達はステル達と並んでたこ焼きを食べながら話す。


「素晴らしい物でした。」

「えぇ、もう目が離せず見惚れてしまいましたよ。」

「感動しました、今日の事は忘れる事が出来ません。」

 ステル、トラディ、ハチェットはウンウンと頷く。


「何言ってるんですか、夏は始まったばかりですよ?また見に行けますから。」

「そうそう、海辺の花火大会もあるよね。」

「あるねー、あっちの方が近いんじゃない?」

「こんな催しがまだあるのですか?!」

「この時期は毎週どっかでバンバン花火上がってますよー。」

 日葵が言うとハチェットは目を見開いて驚く。


「はなびすごかった!」

「ドーンってなるとお腹までひびいてきたわ!」

「はい!すごかったです!」

「綺麗でした、また見たいです。」

「すごかったのです!」

 お子ちゃま達はまだ興奮おさまらずワイワイとはしゃいでいる。


「ハルト楽しめた?」

「勿論だ、文句の付けようがない。」

「そりゃよござんした。」

「アリンさんずっと黙って見てたねー。」

「ヨリさん、当たり前ですよ、あんなに凄い物を間近で見れたのですよ、こちらの世界がまた好きになりました。」

「ふーん、世界だけ?」

「・・・ここで言わせないで下さい。」

「チッ。」

「ヨリ、イチャイチャしたいなら2人の時にやってくんない?」

「千春がそれ言う?さっきすっごいイチャイチャしてたくせに。」

「・・・見られてたか。」

 千春と頼子はそう言うとクスクス笑う。


「んー、さけも美味いのぅ、宇迦之御魂よ良い時間をありがとう。」

「ウカで良いわ、良かったら来年もいらっしゃいな。」

「お言葉に甘えようかのぅ、問題は帰りのたくしーと言うヤツじゃなぁ。」

 ロイロは嫌そうな顔をして空を仰ぐ。


「あら、タクシー苦手なの?」

「ふむ、アレはダメなヤツじゃのぅ。」

「それなら帰りは送ってあげるわ、ルプの居た神社で良いかしら?」

「それは助かる!」

 ロイロは嬉しそうに宇迦之御魂に礼を言う。


「チハル!帰りはウカ殿が送ってくれるそうじゃぞ!」

「マ?良いんですか?」

「構わないわよ、コンを見てもらってるもの、そのお礼よ。」

「ありがとう御座います!」

 ビェリーが影に片付けをすると、皆は帰る準備を終わらせる。


「どうやって帰るんですか?」

「んー、簡単に言うなら転移門ね、私達が神社間を移動する方法よ、その鳥居の道を戻るだけ。」

「ありがとう御座います、それじゃ帰ろっか。」

 皆は宇迦之御魂に礼をすると、鳥居の道を歩く。


「コレで帰れるの?」

 美桜はコンに問いかける。


「はい、このまま歩けば着きます。」

「誰でも使える訳じゃないよね?」

「はい、でもごく稀に入ってしまう人も居ますね。」

「マジで?」

「遠く離れた所に移動してしまう人もいます、いわゆる神隠しと言われるヤツです。」

「へぇ、あ、抜けた。」

 鳥居を抜けると、千春家の近くにあるルプの神社の鳥居を抜けた所に出た。


「誰も居ない様なので幻術解きますね。」

「え?幻術かかってたの?」

「宇迦之御魂大神様が人に見えない様にしていました。」

「至れり尽くせりですにゃー。」

 千春達は神社を出ると歩いて家に戻る、ビェリーとルプはカラスの土地神に、祭りのお土産を渡し戻って来た。


「はい!お疲れ様でした!」

「おつかれ~♪」

「楽しかったぁ!」

「それじゃあっちに戻ってモリー達にお土産あげよう!」

「食いかけと残り物だけどなー。」

「シーっ!!!!それ絶対言っちゃダメだからね!」

「へーい♪」

 千春は皆を異世界に送ると、ビェリーが次々と屋台の食事を並べて行く、そして居残り組へ振る舞った。








 

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