夏祭り!②
「アリンさんこっちだよー。」
「は、はい、うわぁぁ。」
「楽しい?」
「凄いです。」
「語彙力死んでるなぁ。」
アリンハンドの手を引きながら頼子は出店の前をどんどん進んでいく。
「ヨリ、場所決まっとん?」
「ある程度ね、って良い所取れるかなぁ。」
「今なー。」
「うん?どうしたのビェリー。」
「宇迦之御魂様から声とどいたんやけど。」
「え?ウカ様?なんて?」
「場所取りするならこっちおいでって言っとーんやけど。」
ビェリーは子供の姿で林の方を指差す。
「あっちって何も無いよね?」
「ウカ様とはこちらの女神様でしたか?」
「うん、そうなの、アリンさん行ってみようか。」
3人はビェリーの指す方へ向かう。
「ココやね、結界あるけん手繋いで。」
ビェリーは2人の手を取り先へ進むと木で出来た小さな鳥居が幾つも並んでいる。
「すっご、何ここ?」
「稲荷神社の1つやね、この先やけん。」
鳥居を進むと開けた場所に神社があった、そこには軒先に寛ぐ宇迦之御魂が居た。
「いらっしゃい、花火を見に来たんでしょう?」
「はい、ここは?」
「私の社の一つよ、別荘みたいなものね。」
頼子は来た道の方を見るとかなりの高台に来ていた。
「え?こんなに登ってないよね?」
「あの鳥居に仕掛けがあるの、皆もココで花火を見れば良いわよ。」
「来てたの知ってたんですか?」
「コンが居るでしょう?あの子が見聞きしている事は分かるわよ。」
「あー、そう言えばそうでした。」
「花火が始まるまで時間があるわ、祭りを楽しんでらっしゃいな。」
宇迦之御魂は微笑み杯を口に当て夏祭りの方へ視線を移す、頼子とアリンハンドは来た道を戻り出店を見て回る事にした。
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「コン?」
「はい?」
「どうしたの?ぼーっとして。」
美桜とエーデルは急におとなしくなったコンを見る。
「宇迦之御魂大神様からお声が掛かりました。」
「なんて?」
「花火を見るのかと聞かれまして。ヨリさんとビェリーが場所取りしてる事をお伝えしましたら神社に呼ぶとの事で。」
「ココ神社あったっけ?」
「有りますけれど認識出来ません、結界が有りますので。」
「へぇ、そこで見るの?花火。」
「そうなるかと、また連絡あると思います。」
「オッケー、それじゃそれまで遊ぼう。」
美桜は2人を連れ歩く。
「ミオさんこの赤い魚は?」
「金魚だよ。」
「食べるんですか?」
「食べないよ!?飼うんだよ。」
「魚をですか?」
「可愛いでしょ?」
「魚を可愛いと思った事は無いですが、そう言われると小さくて可愛いかもしれません。」
エーデルは赤や黒、そしてカラフルな錦鯉の稚魚を見ながら呟く。
「私金魚すくい苦手なんだよね。」
「僕出来ますよ?」
「マ?ちょっとやってみる?」
「はい!」
美桜がお金を払うと、コンはポイを受け取りしゃがんで金魚を見る。
「ミオさんどれが良いですか?」
「狙ったの取れるの?」
「はい、多分取れます。」
「この大きいのいける?」
美桜はあからかに大きな金魚を指差すと、コンはポイを水に沈めそっと寄せていく。
「全部水に浸けちゃったら破れないの?」
「はい、こうやって・・・。」
そっと水面に浮かせ斜めにすくい、ポイから水を流し出しながら金魚を器に入れる。
「獲れました!」
「上手い!すごっ!」
「坊主うまいな!プロか?」
「えへへー。」
店主にも褒められ、次を狙うコン。
「2匹持って帰って良いからな、頑張れよ坊主。」
店主は笑みを浮かべコンに言うと、コンはまた大きな金魚を掬い上げる。
「おおー!コンすごっ!」
「上手ですね。」
袋に一匹ずつ入れてもらい、コンと美桜が受け取り、金魚を見せ合うとニッコリ笑う。
「よーし、金魚のお礼に肉串を買ってあげよう!」
「わーい!」
「肉ですか、楽しみですね。」
美桜は食事が出来るスペースのある出店に行くと注文をする。
「エーデルさん何が良いです?」
「んー、選べないですね、どれも美味しそうです。」
「コンは?」
「この肉が良いです!」
「ハラミね、おじさんハラミ4本、タン3本下さい!」
「あいよ、食べていくかい?」
「はい!」
「座って待っててくれ、焼けたら持っていくよ。」
コンはそれを聞き、テコテコと空いている席に座る。
「エーデルさんココ座りましょう!」
「ミオさん良いんですか?」
「うん、座ってて、飲み物買って来るから。」
エーデルを席に促し、美桜は飲み物を買う。
「はい、エーデルさん、コンはジュースで我慢してね、流石に外でショタがビールはまずいから。」
「はーい。」
「いただきます。」
エーデルはビール、コンはコーラを飲む、そして肉串が来ると、2人はガッツリと食いつく。
「コレは上手い。」
「おいひいでふ!」
「ゆっくり食べなぁ。」
ハラミを食べているとおじさんがタンを持って来る。
「はい、奥さんタン焼けたよ。」
「おっ!?奥さん!?」
「おー、息子さん良い食べっぷりだなぁ美味しいかい。」
「美味しいです!」
「そりゃぁ良かった、ゆっくりして良いからな、喉に詰まらせるなよ?」
おじさんはワハハと笑いまた肉を焼き出す。
「奥さん・・・奥さん・・・ふぇっ。」
串を持った手を顔の前にやり、顔を真っ赤にしながらプルプル震える美桜をコンとエーデルは笑みを浮かべまた肉串に齧り付いた。
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「ホーキンさん?」
「はい!大丈夫です。」
日も暮れ空には星が見えるはずだが、店の明かりで星はほとんど見えず、この時間に人の量、ホーキンは戸惑いを隠せなかった。
「少し休みましょうか。」
麗奈は休憩出来るベンチを指差すと、ホーキンの手を引き座る。
「すみません。」
「何がです?」
「私が驚き過ぎてレナさんが楽しめてないのではと。」
「だーいじょうぶですよ、楽しんでますから、リリは楽しめてる?」
「勿論ですわ!陽気な空気は大好きですもの!」
姿を消しているが、麗奈の周りを飛んでいるのが分かる麗奈は笑みを浮かべる。
「ちょっと待ってて下さいね。」
浴衣姿の後ろ姿を見送るホーキンは苦笑いをする。
「子爵家嫡子、第一騎士団副隊長とあろうものが・・・女性1人エスコートも出来ぬとは情けない。」
ホーキンは頭を下げ呟く。
「気にする事ないわよーん、異世界ですものー、勝手が違うのは当たり前じゃない?」
「リリ殿、一緒に行かれなかったので?」
「こっちを知ってるレナより何も知らない貴方を置いていく方が心配ですわっ。」
リリはホーキンの肩に乗ると溜息を吐く。
「こっちで飛ぶと疲れますわー。」
「魔力の関係ですか?」
「えぇ、少しくらいなら飛べるんだけどねっ。」
リリと話し、ホーキンは笑みを浮かべる、ふと前を向くと手にコップと果物を串に刺した物を持った麗奈が見えた、しかし様子がおかしく、困った顔をしている、すると2人の男が笑みを浮かべ麗奈に話しかけていた。
「人が待ってるので!」
「良いじゃん、友達も一緒でも良いからさ。」
「かわいーね、車あるしドライブでも良いからさ、遊ぼうよ。」
「結構です!」
「なー、イイじゃん、奢るからさ!」
男は麗奈に手を伸ばすが、届く前に腕を掴まれる。
「何をしている。」
「ホーキンさん!」
「チッ、男いんのかよ。」
「何故断っているのに手を出す。」
「うっせーよおっさん、手離せや!」
男は腕を握られたままホーキンに蹴りを入れようとする、しかし足は当たらず男の見ている視界は一回転する。
「え?」
「・・・おとなしく帰れ。」
「は、はい。」
「レナさん大丈夫ですか?」
ホーキンが手を離すと、男達はすぐさま走り去る、ホーキンは麗奈に振り向き声を掛けると麗奈は抱きついてきた。
「レナさん!?」
「・・・カッコいいなぁもう!」
「いえ、エスコートも出来ない、しがない男です。」
「いんや!カッコいい!」
「・・・ありがとうございます。」
「惚れた女性一人守る為に英雄になった人間が居たわねぇそう言えば。」
リリはポツリと呟く。
「英雄ですか。」
「えぇ、貴族らしい事はな~んにも出来なかったらしいわよ?それなのに、どこかの王様になったって聞いたけど。」
「・・・ジブラロールの初代国王、エルダル・アル・ジブラロール。」
「あ~そんな名前だったかも?」
「そんな偉い人じゃなくて良いの!ホーキンさんは私の英雄だからね、ほら、これ買って来たから食べよう!ホーキンさんはビールね、そっちで言うエールだよ。」
麗奈はそう言うとまたベンチまでホーキンを連れて行き、リリと一緒に冷やしパイナップルを食べながらまったりと過ごした。
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