やっぱりパンは固かったか!
「ココが魔導士団研究棟の食堂です。」
そう連れて来られた所は体育館の半分くらいの広さでバスケットでも出来るのではないか?と言うくらい広かった。
「おー!広ーい!」
「魔導士団だけでも100人以上いますからね、一度で全員来ることは有りませんが集まっても大丈夫なくらいには広いですね。」
半分は長テーブルがあり半分は6人座れるくらいのテーブルが複数ある、調理場は学校の教室よりも広い所に10人くらいの人が料理をしていた。
「さて、それでは注文を、チハルさんは苦手な食べ物とかはありますか?」
「んーーー基本何でも食べるから大丈夫だと思うけど何があるの?」
「肉や魚、あとはサラダとパンが付きますね、お肉で良いですか?」
「いいよー。」
「殿下は何にしますか?」
「俺も同じでいいぞ。」
ローレルは受付の所へ行き3人分の注文をし、部屋の窓側へ皆を促し待つ様に言った。
「出来たら取りに行くの?」
学食は番号札を貰い出来たら呼ばれて取りに行く、なんとなく普段使っている学食を思い出しつつローレルに聞いてみたのだが。
「そうですね、普通は札を貰いますので出来たら取りに行きますが、持ってきてくれますよ、私や殿下もいますからね。」
そりゃそうか、王子様に取りに来させるとかは無いよねと納得した。
「食事が終わったら私の職務室で、魔法の基本と発動出来そうな魔法の練習をしましょうか、殿下はどうされます?戻られますか?」
「あぁ、そうだな邪魔しても悪いだろうし一度戻って仕事をしてくる、チハルは明日もこっちに来るのか?」
「うーん、日曜は向こうで買い出しとか食事の準備するつもりだからそれ終わってから来ると思う。」
今日、明日の予定等を会話していると食事を持った給仕が来た。
「お待たせしました、本日のオススメローストチキンと野菜スープです。」
「ありがとう。」
ローレルはお礼を言い3人の前に食事が並ぶ、ローストチキンは皮目がしっかり焼かれた鶏モモのようで、スープは色の濃いニンジンのような物と葉野菜、あとは溶けかけているタマネギが入っていた、他はザワークラフトのようなサラダと丸いパンが付いていた。
「さぁ食べましょうか」
そう言いながら切られた鶏モモにフォークを刺し口に入れるローレル、エンハルトも肉から行くようだ、千春はパンを手に取り齧り付く。
「あ・・あがっ!(固っ!!!!!!)」
異世界と言えば黒パンと思っていたが普通のよりも焼けてるなーと言うくらいのパンで普通のパンかと思ったのだ、そして見た目もちょと大きいアンパンサイズだった為齧り付いてしまった。
「あっ、千切ってスープに付けるかチキンのソースを付けながら食べると良いですよ。」
「この世界のパンってこんなに固いの?」
「ええ、これはまだ千切れますから、市井のパンは薄く切って割る感じですよ。」
(・・・・マジか)
気を取り直して手で千切る、フランスパンよりも固いが千切れない事はないので、少し千切りスープに入れスプーンで食べてみる。
「・・・モグモグ・・・・うん、とても素材の味を生かしたスープですね。」
そう、スープは薄い塩スープに微かにハーブらしき香り、あとは野菜の甘味があるくらいだった。
そしてメインディッシュのローストチキンを食べてみる。
「うん、こちらも素材を生かした上品な味付けですね。」
「そうですね、こちらではコレが一般的な食事になります。」
「王宮の食事はどんな感じなんですか?」
「そうだな、食材が食堂よりも良い物を使っているが、味付けは同じようなもんだな。」
エンハルトはそう言いながらパンをチキンのソースに付け食べていた。
「えーっともしかして塩とか調味料って高価だったりします?」
「ええ、塩は岩塩が取れますが輸入で頼っている分もあり安くは無いですね、胡椒は貴族や大商人くらいの者が使うくらいで、砂糖は贅沢品になります。」
コレはもしかしなくても調味料販売チートが出来るのでは!?と心の中でニヤける千春。
「もしかしてチハルの世界は調味料が安く手に入るのか?」
千春が心の中でニヤけていたつもりが、思いっ切り顔に出ていたのを見てエンハルトが思わず聞いた。
「うん、普通に塩とか砂糖はキロ単位で買えるよ、私のお小遣いでも。」
「本当か!?買い取るから持ってきてくれ!」
「でも王国って海も有るってサフィーナが言ってたけど塩作んないの?」
サフィーナと話をしていた時に王国は海に面した領地が有るという事を聞いていた為、まさか塩が高いとは思っていなかったのである。
「あぁ、西にあるハース領は海に面しているが王国全体を賄う程の生産は出来てない、苦みも少しあるからな。」
「ふーん、って事は塩田とかニガリを取る方法とかはあんまり進んでないのかー、ググっとくね、明日ローレルさんに教えとくよ。」
「「え?」」
「私が塩持ってきても限界あるじゃん?作れた方が良くない?」
「そ、それは有難いのですがよろしいのですか?持ってきて頂くだけでもかなりの金額が手に入りますよ?」
ローレルもエンハルトも驚いて聞き返す、それはそうであろう、生きていく為に必要な塩の生産方法を、しかも精製方法まで教えてくれると言う、自分でそれを確立すれば大儲け所ではない情報である。
「いいよいいよ!それじゃ胡椒とか砂糖で儲けさせて貰おうかな!」
千春的には塩が無くても胡椒や砂糖が一つでもあれば儲けのネタは有る訳で何も問題無かった、生産するとしても、塩は海から幾らでも作れるが胡椒や砂糖は育てる所から始めなければならない。
「それじゃささっと食べて魔法のお勉強をいたしましょー!」
「そ、そうだな。」
「そうですね・・・。」
エンハルトもローレルもこの件は早急に陛下と宰相に話をし計画を進めなければならないと目で合図していた、それを気付かない千春はニコニコと味の薄いお昼を食べるのであった。
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エンハルトは二人と別れ足早に王城へ戻った、そして陛下に取り次ぎを行った、そして話を聞いた陛下と宰相は・・・。
「殿下・・・その話は・・・いや、先ほどの話も在りましたので嘘では無いのでしょう、明日ローレル殿からの詳細を確認し、南東エリアの穀倉地帯で試験的に連作障害の計画を組む予定でしたが・・・。」
「そうだな、塩田か、塩が安定して作れるとなれば王国としては願ったりだ、コレも明日詳細が分かるので有るのならハース領主を呼んで計画を組まなくてはならんな。」
宰相と国王はエンハルトからの報告で改めて計画を組む必要があると考えていた。
「うむ、エンハルトよこの件は了解した、ローレルと共にチハル嬢の対応を任せる何か有ればすぐに報告してくれ、今付けている侍女は二人だったな、このままチハル嬢の付き人を任せる様に執事長のセバスに話を付けておけ、あの部屋の隣を侍女の待機部屋として正式に改装して構わん、必要な物が有れば報告させる様に、取りあえずは以上だ。」
国王は千春の存在価値を引き上げた、それは王国の今後の発展に貢献どころの問題ではない、試験的に行う予定では有るが、その情報が嘘や間違いだとは到底思えないからである。
そしてその結果次第では千春に爵位を与えても良いと思っていた、いや、与えなければ成らないと思いなおした。
「承知しました。」
エンハルトは国王へそう伝え部屋を出る、国王からの勅命で千春の対応をするように言われたが、元からそのつもりで有ったが、第一王子と言う立場も有り、特定の女性に付きっ切りと言うのは問題があると思っていた、しかし国王の指示である、個人的にも千春が面白いと思っており今日も職務を部下に押し付け、ローレルと共に千春と行動していた、そして・・・。
「まずはセバスに連絡だな。」
これから何が起こるかワクワクしていた、そして自然と笑みが零れていた。
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