ガチムチやん
コンコンコン
「はーい、どうぞー。」
「失礼します。」
ローレルとエンハルト王子、そして文官のような人が一人入ってきた。
「お待たせ致しました、準備が宜しければ移動致しましょう。」
文官がお辞儀をし、そう促す。
「はい、大丈夫です。」
「では、行きましょうか。」
ローレルも促してくれる
部屋を出て数分、魔導士団の棟から少し開けた所で千春は目を見開いた、そこには御伽噺か何かに出てくる中世のお城と言わんばかりの建物が有ったからだ。
「ふぉぁぁ!!」
思わず出てきた言葉に男三人は微笑み千春を見ていた。
「もうすぐ着きますので。」
文官がそう言いながら前を歩く。
「王様と会うんですよね?」
「あぁ、一応この件に関しては緘口令が出ているから大っぴらな謁見とかでは無い、緊張しなくてもいい。」
エンハルト王子はそう言いながら千春に微笑む。
「王様とか・・・マナーとかわからないんですが!大丈夫ですか?無礼者!とか言われませんか?」
「はっはっはっは!大丈夫だ、ちゃんと話してあるから、普通に年上のおっさんと話すくらいでいいぞ、今日は内々での話だからな、父上もそう言う事はあまり気にしないタイプだ、まぁ会ってみればわかる。」
大笑いしながら王子は言うが、校長先生と話するだけでも緊張するのに・・・と、お城を見て王様と会うという実感が湧いてしまいプチパニックになってしまった。
そして城に入り廊下を数回曲がった、他よりも豪華な扉の前に兵士が二人立っていた。
「チハル様を御連れしました。」
文官がそう言うと兵士がドアをノックし中へお伺いをする、そして返事があり中へ促された、中には二人の男性が待っていた、一人はロマンスグレーで渋いオジサマ、もう一人は・・・筋肉モリモリなガチムチオヤジだった。
「お越しいただき有難うございます、此方はエイダン・アル・ジブラロール陛下で御座います、私は宰相と務めさせていただいておりますルーカス・クラークと申します。」
ロマンスグレー、クラークが紹介をしてくれたが、千春の頭の中は「え????」である、まさかのガチムチオヤジが国王陛下だとは思っていなかった。
「エイダン・アル・ジブラロールだ、異世界の少女よ。」
「あ?え?藤井千春です、あ、苗字が藤井で名前が千春ですっ!」
急に話しかけられ緊張がパニックに変わったが、何とか名乗る事は出来た。
「ハッハッハ!そんなに緊張しなくても良い、異世界と言うものがどういう物なのか興味が有るのでな、少し話をさせて貰えんか。」
陛下はそう言いながら笑顔で千春を見つめていた。
「では、こちらへお座り下さい。」
と、宰相が3人掛けほどのソファーを促す、千春はお辞儀をしながらチョコンと座り、右にはローレルが、正面にエンハルト王子、左に国王陛下が一人上座に座る、宰相様は陛下の隣で立っている。
「まずは、この度王国の者が面倒な事を引き起こそうとした事で迷惑を掛けた、大事にはならなんだがお嬢さんに迷惑を掛けた事には変わらん、何か詫びになる物でもと思うのだが。」
「いえ!大丈夫です!クローゼット閉めたら大丈夫なので!・・・あ、でもコチラの世界も興味があるのでよろしければ遊びに来るくらいは許していただければと、魔法とか興味あるので!」
「ふむ・・・こちらとしても異世界に興味がある、色々と話を聞いてみたいのでな、場所が場所だからある程度の制限は掛けさせてもらうが、取り敢えずローレル、お嬢さんの後見人として面倒を見てくれ。」
「はい、承ります。」
陛下はローレルにそう言い、ローレルもそれに担う。
「でだ、早速だがそちらの世界は、どう言った世界なのだ?」
「えー、まず魔法と言う物は無いです、代わりに科学と言う物がありまして・・・。」
千春は地球という広範囲ではなく「日本と言う国」での文化、義務教育で習う理科、数学、社会等を解りやすく、それこそ小学校レベルで習う事を話した、何故雨が降るのか、火はなぜ燃えるのか、民主主義は軽く流し算数から掛け算割り算等を、本当にわかりやすーーーーく。
「「「「・・・・・・」」」」
「あれ?」
4人が目を見開き無言で見つめていた、説明していると驚く姿が面白く、つい千春も調子に乗ってしまった為、科学あたりからは反応が無くても一人で喋りつくしたのであった。
「う、うむ、そのカガクと言う物は凄い事は解った、ただ理解が追いつかぬ。」
異世界ではガソリンという内燃機関で鉄の塊に乗って高速移動するとか言われても想像もつかないだろう。
「それよりも麦の連作障害と言う話に戻るが、その対策が解っていると言うのは本当か?」
「はい、同じ物を植え続けると同じ栄養素ばかり取って偏っちゃうので、肥料を入れるとか違う植物を一度間に入れるとか、あとはクローバーとか・・・植えると良かった・・・はずです、もし宜しければ詳しく調べておきましょうか?家に帰ってググってみますんで。」
流石に習ったとは言え詳しく覚えていない千春、ただ異世界と言えば連作障害は有るだろうなと話の中に入れたが思った以上に食いついてしまい、説明できなくなって来たのであった。
「よろしく頼む、では後日人を向かわせるのでローレルに詳細を伝えてもらってもいいか?」
「はい、明日にでも教えておきますので!」
陛下が頭を下げそうな程の勢いでお願いしてきた為、ついやる気になってしまった千春は悪くない、期待されるのは大好きだからしょうがない、それがググれば数秒で検索出来たとしてもだ。
「そ・・・そんなに早く調べれるのですか?」
宰相が驚きを隠さず聞いてくる、何を当たり前な、数秒ですよと思いながら「はい!」と千春は答える。
「で、では、後日・・いや明日魔導士団棟に人を向かわせますのでローレル殿宜しくお願いします。」
「はい、分りました詳細を纏めておきますので明日の午後1鐘(15時)の頃にでもお願いします」
宰相とローレルの話も終わり今後の話は詰めてから後日と言う事でお開きになった。
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「いやはや、チハルさんの国は凄いですね、私としては義務教育で9年も勉強出来るとは、知識も豊富になり新しい技術も増えていくわけですよねぇ、」
はぁ・・・と羨ましいと言わんばかりの顔で上を見上げるローレルだが千春は空笑いであった、勉強は好きではない千春にとって学問が羨ましいと言う気持ちが分からなかった。
「黙って聞いていたが、確かにチハルの知識や向こうの技術や知恵には興味が出るな、こちらの世界でも応用出来れば、平民や農民の生活も改善出来る事が多そうだ。」
「そだねー、こっちの世界は良く知らないから色々見せてもらって何か出来そうな事は教えていければ良いかなー、でも気を付けないとねー、ノーベルさんも言っていた!『この世の中で悪用されないものはない』ってね、ローレルさんと王子様はちゃんとソコは押さえて平和に使ってね。」
ローレルとエンハルトは真面目な顔をして千春に頷くのであった。
「で!お昼過ぎてんだけど!おなか減った!一回帰ってなんか食べてくるよ、その後魔法教えてよね!」
「あ、それでしたら研究棟の食堂でお昼どうですか?」
「え?マジで?食べたい食べたい!美味しいの?」
「んー普通ですね、可も無く不可も無く。」
「えーそこは美味しいって言うの食べさせてよ。」
ローレルと千春はもう食堂で食べる気満々だ。
「それじゃ俺も今日は一緒に食べるかな。」
エンハルトは王宮に行けば食事は有るが、今日は付き合うらしい、そして3人はワイワイ言いながら魔導士団研究棟の食堂へ向かう、そう千春が初めて食べる異世界の食事だ。
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