第2話 颯爽登場悪役令嬢⑥ ~ん~
「何逃げて来てるのこの役立たず」
「どうして私のパンツがわからないんですか?」
「いやあの……ごめんなさい」
シンシアの家に戻った俺は、女性陣に囲まれて正座していた。いやまぁ俺が悪いんだけど、君ら今日何もしてなかったよね本当。
「ま、今回は失敗でも次回があるわよ」
当のシンシアと言えば、あっけらかんとした態度でそう答える。一番怒ってそうだったので、少し意外な応対だった。
「その時はシンシアいないだろ」
「いえ……私もついて行こうかしら」
思わず耳を疑う。こんな珍道中にシンシアはついてくるというのか、どれだけ暇なんだ貴族の三女って。
「良いところでお預け喰らったからね。あの三人を手篭めにするまでついて行くわ」
それはまた随分と頼もしい動機だことで。
「それで、そちらの方はいかがなさいますか?」
セツナが顔を向けた先には、成り行きで連れてきていたアイリが座っていた。
「えっ、いや、あのあたしここに場違いったいうかなんかこんな豪華なお屋敷にお呼ばれしてなにか粗相とかしてないか不安ですあのあの」
こんな場所に来たのは初めてだったのだろう、さっきから手を震わせて周囲を見回してばっかりだ。
「アイラは観光客なんだから、どうするもこうするもないだろ」
「あっ、いえ! 出来れば皆さんとご一緒できれば……でもお金もあんまりないしあたしみたいな田舎者が迷惑かなって」
「大丈夫この二人もわたしの実家から見ればあばら家みたいなもの」
「フォローか悪口どっちかにして?」
レーヴェンの言葉に文句を言うが、彼女は笑顔を崩さない。本当厚かましくて参ってしまう。
「あら、そんな些細なこと気にするなら、旅の間わたくしの小間使いになって頂けないかしら? 家の使用人には刺激が強すぎるから連れて行きたくないのよね」
「あ、いいんべか!」
「ええ、よろしくねアイラ」
一気に表情が明るくなったアイラ。お前それ騙されてるぞさっきまでの光景見てただろと言いたくなったけど、やめた。それは俺が大人だからだ。
「ところでキール、わたし雇われの占い師だけど」
「そう言えばそういう設定だったね」
「ん」
レーヴェンが右手を差し出してくる。これはあれだね、遠回しじゃなく最短距離で金を要求してるんだろうね。そこでふと、思い出す。今日の戦利品が俺のポケットに詰まっていたという事に。
「……はいどうぞ」
というわけで勇者のパンツを彼女に手渡す。思い切り睨んできたがここは見てみぬ振りをして。
「さーて、次の目的地はどこかなっと」
ゆっくりと背筋を伸ばす。気絶しなかった今日の自分に、少しだけ自信をつけながら。
◆◆◆今回の獲得スキル◆◆◆
エピックスキル:スーパー執事
アーツ:馬車の心得 茶の心得 料理の心得 ひげの心得
事務処理 残飯処理 ムダ毛処理
スケジュール管理 シフト管理 金管理
レアスキル:暗殺者
アーツ:毒矢 ナイフの心得 急所狙い
見切り 壁登り ピッキング 忍び足 報酬釣り上げ
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