第11話 えらい話になってきたな

 護衛が元サン侯爵令息の側に行き、短刀を持っている手を捻り上げた。それを合図にするかのように騎士がなだれ込んできた。


 令息たちが騎士に拘束される。


 私はその光景をただただ見ていた、


「ロゼッタ! 助けてくれ~!」


 知らん。


「妃殿下、囮にするような真似をして申し訳ございません。しかし、何か行動を起こさないと捕らえることができないのです」


「大丈夫ですわ。お見事でした。あの者たちはどうなるのですか?」


「平民が妃殿下を罵倒し、危害を加えようとしたのです。もう二度と殿下のお目を汚すことはありますまい。そういうことです」


 そういうことか。


 護衛についていた騎士は私に頭を下げた。


 それにしても令息たちは、ミア嬢に平民には興味がないと言われたから、また貴族に戻ればミア嬢は自分のところに戻ってくると思ったのか?


 そんなことを言われた時点で騙されていたと気がつかないのか?


 愚かだな。


 それほど愛していたのだろうか?


「お嬢様、ミアは男爵令嬢から平民になりましたが、今は裕福な平民をターゲットにしているらしいですよ。侍女ネットワークでは豪商の子息にへばりついているともっぱらの噂です」


 たくましいな。


 まぁ、誰にも迷惑をかけなければそれもいいんじゃない。


 私は馬鹿と婚約破棄できたのだからミア嬢には感謝しなくちゃな。


 平身低頭謝る護衛騎士に護られながら私たちは何ごともなかったように部屋に戻った。


 部屋に入ると侍女たちはすでに待機している。


 やっと湯浴みだ。


 ニコルにドレスを脱がされ、コルセットを外され、髪を解かれた。


 あ~、生き返るわ。


 お湯に入ったあと、マッサージされる。ずっと高いヒールで立ちっぱなしだったので脚がパンパンだ。


 マッサージが痛いわ。


 薄くお化粧をされ、色っぽい夜着を着せられた。


「お嬢様、頑張ってくださいましね」


 ニコルはヘラヘラしながら部屋から出て行った。


 あとはゴリクマ待ちか。



 どれくらいたったのだろう? 私はうたた寝をしていたようだ。


 コンコン


 ノックの音が聞こえる。


「入ってもいいだろうか?」


 ゴリクマ来たな。


「はい」


 私が返事をするとテディ様が難しい顔をして寝室に入ってきた。


 しかし、私の姿を見るなり顔を真っ赤にしているようだ。


「ロゼ、何か羽織ってくれないだろうか。目のやり場に困る」


 なんだ。すぐ脱がせるんじゃないんだな。私はガウンを羽織った。


「ロゼ、話を聞いてほしい」

 

 話? なんの話だろう? やっと正妃様の話をしてくれるのだろうか?


「実はロゼに隠していたことがあるんだ」


 テディ様は私の目をしっかり見る。


「弟を人質に取られているんだ」


 人質?


 弟?


 まさか、留学している末のロベルト殿下のことか?


 なんかえらい話になってきたなぁ。


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