第2話 側妃?

 お父様から呼ばれた。


 ろくな話じゃないだろうな。


 あ~めんどくさい。


 仕方がないのでお父様の執務室の扉を叩いた。


「ロゼッタです」


「入れ」


 お父様の返事がしたので扉を開け中に入った。


 お父様は何やら難しい顔をしている。


「お話とは何でしょうか?」


「はぁ~っ」


 話をする前からため息をつくな!


「実はな、王家からお前に王太子の側妃にならないかと打診があった」


「側妃ですか?」


「そうだ、王太子殿下の側妃だ。王太子妃と結婚して2年になるがまだ子を成さないので側妃を娶ることになったそうだ」


 王太子といえば、2年前にシンバレット王国の王女と結婚したはずだ。

 王女は身体が弱く、公務にほとんど顔を出さないと聞いたことがある。確かに夜会などでも王女の姿は見たことがない。


「それでなぜ私なのですか? 公爵令嬢が側妃だなんて聞いたことがありませんわ」


「まぁ、普通はないわな。しかし、お前は婚約を破棄された傷者令嬢。もう、貰い手はない。老人の後添いになるか、訳ありの者しか娶ってくれないだろう」


 確かにそうだな。傷者令嬢なんて誰も娶りたくないだろう。


「しかも、おとなしく婚約破棄されていれば良かったものの、あの場であの者たちをやり込めて叩きのめしたであろう。正しいのには間違いないが、怖いとみんなに認識されてしまったのだ」


「冤罪で貶められるよりは、怖がられた方がましでしょう。慰謝料もがっぽりいただけましたし」


 私は悪役令嬢っぼくニヒっと笑った。


「確かに冤罪だと証明できたし、慰謝料は沢山入ってきたから、嫁になど行かなくても構わないのだが、王家からの申込みでは断ることはできないのだ」


「打診ですわよね?」


「打診でも、命令みたいなものだ」


 上手いこと言って厄介払いをするつもりなのだろう。


「お父様、正妃がいる以上、側妃は子供さえ産めばあとは何もしなくてよろしいですわよね?」


「まぁ、そうだな」


 これ、ラッキーかも?


 好きでもない男と閨をともにするのはいやだけど、王太子殿下には小さい頃遊んでもらったこともあるし、生理的に我慢できないわけじゃない。


 変なじじぃの後妻になるなら王太子の側妃ありかも?


 とりあえずひとり子供を産めばあとは無罪放免。好きなことをしても文句は言われないだろう。


 良い! 側妃良いわ!


「お父様、側妃になりますわ」


「えっ? 正気か?」


「正気ですわ。縁続きになればブロムヘキシン公爵家にもよろしいでしょう?」


 お父様は娘の慰謝料で大儲けし、その上王家とも縁続きになる。


 万々歳だろう。


 側妃なら気楽そうだしなぁ。


 今更公爵令嬢のプライドなんてないし、貰い手がないから側妃になったなんて言われてもどーってことはない。


 なってやろうじゃないの側妃。


 いやぁ、なんだか面白くなってきたかも?

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