第21話 舞と光の家
「遠慮せずにゆっくり過ごしてね~」
舞は男を魅了するおっとりした口調で広季を自宅に歓迎する。
学校は定時通りに放課後へ突入し、広季は舞と共に彼女の自宅を訪問する。広季は舞の誘いを断れず、お邪魔する形になった。
玄関に靴は1足も見当たらなかった。光はまだ帰宅してないようだ。
舞は慣れた動作でローファーを脱ぐ。きれいにローファーのつま先や踵を揃える。育ちの良さが伝わり広季にとって好印象だった。広季も舞に倣い、靴をきれいに揃える。
「うちの部屋は2階にあるの」
舞は広季に自室を案内する。広季は舞の後ろを追う形になる。その際、2人は真っ白の階段を登る。階段には黒の手すりが設置される。バリアフリーなのだろうか。
「ここがうちの部屋なの」
舞は1つのドアを指さす。ドアには『舞』と記載されたドアプレートが掛けてある。一方、真隣にはドアプレートに『光💗』と記載されたドアが存在する。
(真隣は妹の部屋なんだな)
広季は嫌な感覚を覚えながらも、それをおくびに出さず舞の部屋へ入室する。
入室した直後、バラの香りが広季の鼻腔を刺激する。その香りが広季の気分をわずかに上げる。どうやら部屋の香りのようだ。
部屋にはベッド、四角の絨毯、緑のカーテン、勉強机、教科書などしかなかった。女性らしい道具としてはベッドにくまのぬいぐるみがあるくらいだ。
「適当に座ってね~。もちろんベッドでもいいよ~」
舞は意味深な笑みを浮かべ、手に持つスクールバッグを勉強机に置く。カタンッと勉強机とスクールバッグのぶつかる音が生まれる。
さすがにベッドに座るわけにもいかず、広季は適当に絨毯の上に座った。絨毯の心地よい感触が広季のお尻にじんわりと伝わる。
「中学からの知り合いだけど、うちの家に来たのは初めてよね?」
舞は軽やかにブレザーを脱ぎ、白のカッターシャツ姿になる。カッターシャツの胸部分はボリュームたっぷりに膨らむ。胸の大きさが制服を着ているときよりもさらに強調される。
広季は舞の色っぽさを視認し、緊張するように生唾を飲み込む。広季にとって舞のカッターシャツ姿は想像以上にエロかった。
「そうですね。元カノと家で遊んだ経験もありませんからね」
広季は光と付き合っていた短い期間を回顧する。キスはおろか1度も手すら握らなかった。向こうからあっさり別れも告げられた。広季にとってこの上ない苦い記憶だ。
「ダメだよ…。あんな悪い奴の話をしたら」
舞は広季の後ろに回り、不意打ちでいきなりバックハグした。
広季の背中にボインッと豊満な胸が密着した。より強いバラの香りが広季を容赦なく襲う。
広季はその香りに支配され、クラッとわずかに首を動かす。それほどの破壊力だった。
「すいません。そ、それと…」
広季は胸や身体が密着する事実を指摘しようとした。だが、途中で言葉を引っ込める。黙っている方が賢明だと思った。
「これ~。気になる~?」
舞は意図的にさらに胸を押し付け、抱きしめる両腕の力も高める。
「はぅ!?」
広季は思わずだらしない声を漏らす。柔らかい胸の感触をより背中に感じる。これでもかというほど。
だが不快ではなく幸せだった。広季のあそこはむくむく大きくなる。ほぼびんびん状態である。
「今度からうちの前で光ちゃんの話をしてはダメよ」
舞は広季の耳元で囁く。まるで耳に優しくキスするかのように。
広季は耳に吐息を吹き掛けられ、ビクッとわずかに身体を震わせる。
「ふふ。敏感なこと」
舞はご機嫌に妖艶な笑みを浮かべる。桜色の唇は色っぽく、への字に曲がる。
一方、隣の部屋。
光は虚ろな目でベッドに寝転がる。まるで疲れ切ったように。目は完全に死んでいる。
「ねえ、何かして欲しいことある?」
「いや…特には」
「遠慮しなくていいの。なんでも要望があればうちにお願いしてもいいのよ!」
壁越しから広季と舞のイチャイチャする会話が漏れ聞こえる。会話を聞くだけでその光景が想像できるほどに。
「もう…。今度はお姉ちゃんまで…」
光はベッドに潜り込み、縋るようにまくらを抱きしめる。まくらに何重の皺が寄る。まくらが苦しそうだ。
光は先ほどからうんざりなほど広季と舞のイチャイチャ会話を耳にする。明らかに舞が広季にアピールしていることも理解できた。
「まさか…。お姉ちゃんはもう私のことを見捨てたのかな。さっきだって私の話をするなと釘を刺してたし」
光は苦しそうに両拳を握り締める。それから怒りをぶつけるように親指の爪を噛む。その姿は美少女にも関わらず非常に見苦しい。
「それにしても森本君の身体の感触や匂いってすごい落ち着く。何か男の子って感じ。うちと全然違うの」
「何言ってるんですか。それに大丈夫ですか?汗臭くないですか?」
「ううん。大丈夫よ。全然問題ない。逆に心地よいくらいなの」
広季と舞は追い打ちを掛けるようにテンポ良く言葉を紡ぐ。光にイチャイチャを見せつけるかのように。その会話は光の心に反し、一切留まることを知らない。
光はその口撃に耐えるようにベッドの上で身体をUの字に丸める。その姿には哀愁と悲しさがプンプン漂う。
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