第5話 ネオデウス学園への入学 置き土産
ティリオ達は、シトリーのホームに来た。
シトリーのホームには
「アンタ達、やっと私の下に入る気になったのね」
と、エアリナがいた。
そう、ここはエアリナのホームでもある。
ティリオは微妙な顔で
「こちらの方にお呼ばれしただけだから」
と、隣にいるシトリーを示す。
エアリナは、シトリーをジーと見つめるとシトリーは苦笑して
「ちょっとご縁があってね…」
エアリナは腕を組み
「まあ、良いわ。ここを一回りして入る切っ掛けにしなさいよ」
ティリオの両脇にいるジュリアとナリルにアリルの三人は苦笑して、ナリルが
「入る事前提なの?」
エアリナは腕を組んだまま
「前も言った通り、アタシと組んだ方が絶対に無難よ」
譲らないエアリナにティリオは頭を痛くするも
「とにかく、このホームを見て回るのは良いよね」
エアリナは「ええ…」と了承はしてくれた。
◇◇◇◇◇
ティリア達は、シトリーのホームを案内されて進む。
そのホームの格納庫にマキナ達が並んでいた。
二十メートルの巨大な人型機体達をティリオは見上げ
「へぇ…ここの機体、いや…マキナはコンデンサー方式なんだね」
シトリーが隣で「ええ…」と頷きマキナ達の間接部分にある水晶体を指さし
「あれがセイクリッドっていう事象を操作するエネルギーを貯めておくコンデンサーなのよ。そのコンデンサーから各部位へ動きを起こす力と法則を送り込んで、マキナを動かすのよ」
シトリーのホームにあるマキナは、事象コントロールという空間の法則を操作するエネルギーを特別なコンデンサーに蓄えて動かす方式だ。
この方式を使えば部材は、その力に反応して動く素材で十分であり、様々な部位に面倒な機構を加える必要がない。
超高性能なミニ四駆みたいなマキナという事だ。
コンデンサーのクリスタルを各関節部分や背面と脚部のスラスターに備えるマキナ達の機体の中で一際に目立つマキナがある。
普通のマキナより一回り大きく、推進スラスターが多いマキナをティリオは見上げて
「これは…」
シトリーが
「これは、エアリナさんのマキナなのよ。前は…このマキナを使っていたけど」
と、視線を向ける先に両手足粉砕されて格納庫のカーゴで横になるマキナがあった。
ティリオは、粉砕されたようなエアリナの元マキナを見つめ
「もしかして…これは、負けて…」
シトリーが微妙な顔で
「それもそうなんだけど…どちらかって言うと…エアリナさんの持っている力にマキナが対応できなくなったって言った方が正しいわ」
ティリオは、どういう事だ?と思う。
前にエアリナを乗せてデュエロタクトをしていた時に、エアリナの操縦能力は高いとは言えない。まあ、基本的な動きは出来てはいたが…機体を壊す程の操縦能力があるとは思えない。
シトリーが
「エアリナさんの戦い方は、遠方からの長距離攻撃が得意なのよ。だから、このマキナもそのように仕上げてあって」
ティリオは、エアリナの元マキナを見つめると…確かに長距離砲のような部位が多くあった。
だが、それでも、機体がエアリナに耐えられなかったという事実に繋がるとは思えない。
好奇心から
「エアリナさんの力に機体が、マキナが耐えられなかった…その原因とは?」
シトリーはイタズラな笑みで
「ごめんね。そこは企業秘密」
ティリオは笑み
「そうですか…」
こうして、シトリーのホームを案内されて夜が過ぎていった。
◇◇◇◇◇
シトリーは、ティリオと話して分かった事がある。
それは、ティリオは自分と同じ技術系の人間であると…。
ティリオは、戦闘よりマキナに関する技術に興味と知識が深い。
現に自分達のホームにあるマキナに関してピンポイントな質問をされて答えに困ってしまう。
ティリオは、あのヴァナルガンド事変の英雄という影の功績がある。
なので、エアリナと同じ戦闘系統だと思っていたが…。
それは違うようだ。
むしろ、ティリオの嫁達ジュリアにアリルとナリルの方が戦闘に関して詳しい。
シトリーとティリオは対面で、飲み物を挟みながら
「それが私達のシェルメルム時空のマキナ技術なんだ…」
ティリオの左には静かにティリオと一緒にいる彼女達三人ジュリアとナリルとアリルがいる。
ティリオが頷きながら
「んん…そのマキナに使われている素材、メタトロン金属は…ナノテクノロジーの産物ですか?」
シトリーが頷き
「ええ…基本はネオデウスがベースだけど、ネオデウス素材では強すぎるから、そこからグレードダウンしたのが使われているって感じね」
ティリオとシトリーが言葉を交わしている。
端から見れば、とても良い雰囲気だ。
そこへ
「なに、仲良さそうに話しているのよ」
エアリナが来た。
シトリーが
「エアリナさん。ティリオくん、凄いわよ。こっちの技術を直ぐに理解してくれる程の技術者なのよ。その…」
エアリナがシトリーの何かを言いたい感じに
「何よ。アンタは、私の
シトリーが
「ティリオさんの技術を使えば、エアリナさんのマキナの欠点を補えるかもしれないわよ」
エアリナがティリオの顔を見つめ、ティリオの少し厳しめで大人びた顔に
「だ、そうだから。アンタ…ウチに入りなさいよ」
ティリオは、難しい顔をして
「それは…ちょっと…」
エアリナが鼻息を荒げて
「何よ。ケチね」
と、去ろうとした目の前に男が立つ。
エアリナが立ち止まり
「ちょっとアンタ邪魔」
と、言う前にティリオが飛び出した。
ティリオは両手に強大なエネルギーの爪を付加させて扉の壁を破壊して男に斬りかかる。
同時にジュリアとナリルとアリルの三人が、エアリナを自分達に引き入れつつ手にエネルギー刃の剣、エネルギーソードを握る。
壁を破壊してティリオの攻撃が男へ届き、男は両手にガトリング砲と一体化した盾を召喚して装備、ティリオの攻撃を防御した。
男が攻撃するティリオに微笑み
「相変わらず、無言で攻撃するのは止めてくれよ。なぁ…聖ゾロアスの寵愛を受けし君よ」
ティリオは殺気の顔を男に向けて
「黙れ、
男、スラッシャーは笑み
「おひさ、ティリオ・グレンテルくん」
◇◇◇◇◇
突然の事にシトリーとエアリナは呆然とするだけで、ティリオ達だけが反応する。
ティリオはスラッシャーに攻撃して、ジュリアとナリルとアリルはエネルギーソードを持ち、シトリーとエアリナの守護をする。
ガトリング砲の両手盾を持つスラッシャーが
「せっかく、入学祝いの挨拶に来たのに…コレって…」
ティリオのエネルギー双爪の攻撃をガトリング砲盾で防いでいる。
ティリオが殺気で
「うるさい。黙ってオレに倒されて捕まればいいんだよ」
スラッシャーが笑みながら
「おいおい、入学祝いを用意してやったんだ。ありがたく受け取れよ」
「はぁ?」とティリオは殺気の鬼迫をスラッシャーに向けていると、唐突に部屋の画面にデュエロタクトの様子が投影される。
新たなデュエロタクト。
それは二対二のマキナの戦いだ。
その対戦をしているのは、グランナのホームにいた。あの二人、ラドとシェルテのマキナが…。
ティリオは、その対戦画面を見て驚愕の顔をする。
その様子にスラッシャーが楽しげに
「という事さ。オレからの入学祝い、楽しんでくれ」
と、告げた後に背面から煙幕手榴弾が落ちて、妨害の煙に室内が包まれる。
強い刺激臭と、真っ白の目眩ましに、むせるシトリーとエアリナを、ジュリアとナリルとアリルの三人が急いで脱出させる。
スラッシャーとティリオは、スラッシャーのガトリング砲盾の攻撃をティリオは弾いて、スラッシャーのいた方向を斬るも、煙だけが切れた。
「クソ!」
と、ティリオは苛立ち外へ出る。
外では、ゴホゴホとむせているシトリーとエアリナを介抱するナリルとアリル。
ナリルとアリルの回復の魔力エネルギーで涙と咳が治まる二人の隣に警戒でいるジュリア。
エアリナが
「何なの! これ!」
と、立ち上がるそこへ、煙る施設からティリオが出てくる。
ティリオは、一切煙幕にやられていない。この程度は慣れている。
平然とするティリオにエアリナが掴みかかり
「アンタ! 何、やってんのよ!」
と、ティリオの襟を引っ張るも、またしてもエアリナの力が弱いので自分を釣り上げて足が浮く。
ティリオは鬼の顔で
「悪い。少し用事が出来た。帰る」
「ええ…」とエアリナは困惑が続き、ティリオから手を離して着地する。
シトリーが回復して
「ティリオくん。どういう事…?」
ティリオは、歩き出して
「後で説明する」
と、その後ろにジュリアとナリルとアリルが続いた。
◇◇◇◇◇
ラドとシェルテが乗るクガイベースのマキナ、風貌として鎧武者のマキナが、光輪を背負う滑らか装甲のマキナ二機と対峙する。
相手は、ファラドのホームの二名だ。
対戦による契約対価は、マキナの武装交換だ。これはデュエロタクトでは良くある契約対価で、勝者が敗者の装備の一部を貰う。
この契約対価のデュエロタクトの大半は、デュエロタクトのランキングを上げる為に行われる。
ラドとシェルテが戦うファクドの二名は、二人より上位のランキングにいるので、これで勝利すればラドとシェルテのランクが上がる。
そんな普通のランキング戦。
ラドとシェルテはスラッシャーから、とある装備を譲渡されていた。
それは、マキナの出力を一時的に上げるコンデンサーだ。
珍しい部品ではないが、このコンデンサーに使われている技術を目にすれば、目的のティリオが飛びついているぞ…とスラッシャーが。
ラドとシェルテは、ティリオを加える手段がない。
だからこそ、その譲渡を受けた。
グランナの為に少しでもティリオを自分達の方へ入れる手がかりが、どうしても欲しかったからだ。
ラドとシェルテのマキナ二機が、対戦相手と戦闘を開始する。
光輪を背負うゴールドジェネシスのマキナ二機から、光線が無数に降り注がれる。
それをラドとシェルテのクガイ式マキナが装甲の盾を使って防ぎつつ迫る。
二人の操縦センスは相当で、光線の軌道を先読みして回避しつつ、回避不能な光線は盾で防ぐ。
ゴールドジェネシスのマキナが距離を取ろうとするが、ラドが鎖のエネルギーを放ち足を絡め止める。
シェルテがそこへ攻撃を加える。
ゴールドジェネシスのマキナが周囲を引き剥がす力場を構築する。
空間を制御して放たれる斥力の力場に、クガイのマキナは後退する。
そこで、ラドとシェルテはスラッシャーのコンデンサーを作動させる。
スラッシャーの説明では、このコンデンサーは一定の力場のエネルギーを吸収して動力に変換する。
問題なく装置は作動しているが…グランナのホームの技術力では見つける事が出来ない仕掛けが施されていた。
コンデンサーの装置が作動して予定通りに動き、ゴールドジェネシスのマキナの斥力の力場を吸収して無効化していたが。
コンデンサーに仕掛けられた罠が作動した。
操縦席でシェルテが突然に操作を受け付けない状態に
「ラド、なんか、おかしい!」
ラドも通信で
「ああ…こっちの操縦を、逃げろ! シェルテ!」
シェルテは、急いで脱出装置を作動させてマキナの背面から操縦席が脱出艇となって射出される。
ラドは、間に合わなかった。
二人のマキナが歪に曲がり融合して光を放つと、その光が巨大化して二十メートルから五倍の百メートル級の光の巨人になる。
◇◇◇◇◇
シュルメルム宇宙工業学園の管理ルームでは怒号が飛び交う
「この反応は! ディスカードか!」
「そんなバカな! どうしてディスカードが、チェックは何をやっていたんだ!」
混乱する管理ルームに理事長ヴィルガメスが来て
「状況を説明しろ!」
職員がデュエロタクト中にディスカードが現れた事を説明しヴィルガメスが厳しい顔で
「なんて事だ…」
◇◇◇◇◇
デュエロタクトの最中、スラッシャーの仕掛けが発動する。
ラドは脱出できず、操縦席の目の前から光が降り注ぐ。
その光が天使達の姿となってラドを包んでしまった。
ラドのマキナと、脱出したシェルテのマキナが融合して光の巨人、ディスカードを形成する。
二十メートルのマキナを超える巨大な光の人が、両手を広げる。
そして、衝撃波と力の雄叫びを放つ。
百キロのシュルメルム宇宙工業学園が揺れる。
◇◇◇◇◇
デュエロタクトのラウンジでは、デュエロタクトを仕切っていたファクドとルビシャルが巨大立体画面に映るディスカードを睨んでいた。
レリスが
「早く逃げないの?」
ファクドが
「オレ達に出来る事は…」
レリスが
「無いよ。所詮、ぼく達は学生だ」
ルビシャルが腕を組み悔しそうな顔で
「そうね。私達は、まだ…子供だもんね」
ファクドが
「いや、一人…同じ学生でプロがいる」
と、告げて見つめる別の立体画面があった。
◇◇◇◇◇
暴威を放つディスカード。
それに向かって疾走する光、マキナがあった。
ティリオ、ジュリア、アリル、ナリルの四人が乗るゼウスリオンだ。
そのゼウスリオンの周囲には、ゼウスリオンから無線操縦されるV型の翼を持つ無人機ゼウスリオン達が併走する。
ファクドが言っていたプロとはティリオの事だ。
ディスカードがティリオのマキナ達に気付き、右手を伸ばしてそこから光線の雨を放射する。
ティリオ達のゼウスリオンは、超音速のまま直角の軌道を描いて全ての光線を回避する。
そしてディスカードに特攻する。
ティリオ達のゼウスリオンは、無人機ゼウスリオン達と有人のゼウスリオンと別れて、無人機ゼウスリオン達がV翼からエネルギーソードを伸ばしてディスカードを攻撃する。
その合間に、ティリオ達が乗るゼウスリオンが転移魔法で巨大砲身を召喚して、ドッキング。
巨大な光線を連射する。
無人機ゼウスリオン達の攻撃と、有人のゼウスリオンの光線攻撃でディスカードが怯む。
有人のゼウスリオンでティリオは、操縦を彼女達三人に任せて内部を調べる。
ラドが生存している事を探知する。
ティリオは鋭く
「内部に人がいる。やるぞ」
ジュリアとナリルとアリルは頷く。
攻撃されるディスカードは、全身から無数の光線を放射する。
無限のような光線の雨の中、ティリオ達は回避しながら新たな装備を召喚させる。
前方に装備召喚の魔方陣から巨大な両腕と翼の装備が現れて、それとティリオ達のゼウスリオンが合体する。
巨大なピストンとロケットエンジンのような噴射口が群生する翼と合体したゼウスリオンは、噴射口の翼から膨大な推力フレアを放ちディスカードへ向かう。
ディスカードは、向かってくるゼウスリオンへ全長百メートルサイズの光線を放つ。
それを巨大腕部と合体したゼウスリオンが光線を鉄拳で切り裂きながら迫る。
そして、腕部に備わるピストンの撃鉄を起こす。
ディスカードの胸部、ラドがいる部分へ撃鉄を伴った鉄拳をぶち込む。
百メートルサイズの光の巨人が浮き上がり、背面が膨れ上がってラドが乗る操縦席の小型艇を吐き出した。
ラドが乗る操縦艇を無人機ゼウスリオン達が回収して遠くへ全力避難させる。
ラドというコアを失ったディスカードが形状暴走して広がりデュエロタクトが行われたグランド大地を呑み込もうとする。
ティリオは最後の締めに入る。
「やるぞ、ジュリア、アリル、ナリル」
と、告げる事には、背中と操縦桿を握る両手から黄金の光の粒子が昇る。
その光の粒子達がティリオとアリル、ジュリア、ナリルと四人を繋ぐ。
そして、ティリオ達が乗るゼウスリオンに変化が起こる。
装甲が外れて背面でエネルギーの光線に繋がった翼になり、内部の機神が変化を始める。
白銀に染まり光の翼を伸ばす
白銀と輝く騎士のような機神は、両手と全身に光のエネルギーを収束させて暴走するディスカードへ突進、全身から白銀の光を放ってディスカードを攻撃。
ゼノディオスから放たれる白銀によってディスカードは蒸発して消滅した。
ディスカードを倒したそこにゼノディオスが佇んでいた。
◇◇◇◇◇
ディスカードを圧倒したティリオ達をデュエロタクトのラウンジの画面から見ていたファクドが
「やはり、プロの力は違うな…」
と、笑うファクドの顔には…。
◇◇◇◇◇
遠くで自分が放った罠のディスカードを倒したティリオをスラッシャーは見ていた。
「さすが、英雄の呪詛を持つ者。聖ゾロアスの加護を受ける存在だ。今後とも、利用させて貰うよ。聖帝の子。いや…
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