昼の星

ピエレ

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 福岡天神のデパート七階に張られた幕には、金色の大きな文字が煌びやかに躍っていた。


【世界最高峰の快挙 祝 LS展金賞  野崎正太絵画展】

 

 晩秋の午後、首に黒いスカーフを巻いた青年が、その受付を訪れた。

 中肉中背、たまご型の顔に、寝ぐせが目立つ短い栗色の髪、二十代半ばに見える。服は寝起きのまま来たような、上下黒のジャージだ。

 受付のノートに名を記入すると、異様に見開いた目で若い受付嬢に尋ねた。

「野崎正太くんと中学時代同じクラスだった、田口浩といいます。正太くんか、妹の夏実さんは、ここにはいらっしゃいませんか?」

 彼の血走ったような狂気じみた眼力に呑み込まれ、受付の女性も、目を丸くして答えた。

「最終日の二十日になら、いらっしゃる予定ですよ」


 展示されていたのは、猫やカエル、鳥やバッタといった動物の絵ばかりだった。どれもが今にも絵の中から飛び出してきそうなくらい生命力が溢れていた。特に大きな瞳が強強と光るキジトラ猫の絵が多く、その一枚が世界的絵画展の最高賞を取ってマスコミに絶賛されたこともあって、同様の絵の数々に【売約済】の札が貼られていた。

「やっぱり、間違いなか・・」

 一つ一つの絵に釘付けになりながら、浩はつぶやいていた。

「テストに例えるなら、おれが、どれだけ努力して、百点の絵を描けたとしても、正太は鳥のようにそれを飛び越えて、百万点をもぎ取ってしまうとよ・・だけど、これらはどれも、おれが心底望んでいる絵じゃなか。正太の本当の絵の力は、こんなもんじゃなか。おれには分かる。あいつの絵に焼き焦がれて、ずっとずっと、それを追い求めてきたとやけん・・正太にこそ、人間の真実が描けるとよ。人間の奥底から発せられる、魂の絶叫を」












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