ヒモ男転生~前世でヤンデレ吸引器と呼ばれたヒモの俺が、異世界で美少女に養われる。無自覚にメンタルケアして感謝されているのだが~
水間ノボル@『序盤でボコられるクズ悪役貴
第1話 ヤンデレ彼女に刺されて異世界へ
「圭介(けいすけ)、浮気したでしょ!もう無理。一緒に死のう」
3年間同棲していた俺の彼女、美羽(みう)が、俺に包丁を向けた。
大学時代から付き合い始めて、社会人になって同棲を始めた。
黒髪ぱっつんで、身長は140センチ台で小さい。
目は猫のように愛くるしく、身体の割に胸が大きくて、俺のかわいい彼女だった……
「いや、待て。ただ友達と遊びに行っただけで……」
「友達と、こんなところいく?」
美羽はスマホのマップ画面を俺に突きつけた。
俺のスマホがラブホにあったことを示していた。
「なんでわかったんだ?」
俺は青ざめた。
「ゼワリーよ!」
ゼワリー……友達と位置情報を共有する、JKに人気のアプリだ。
もともと近くの友達を探すためのアプリだが、浮気防止のためにも使われる。ヤンデレ御用達のアプリだ。
「もしかして……こっそり俺のスマホに入れたのか?」
「圭介を信じられないから」
「勝手に入れるなんてひどいぜ」
「ひどいのはそっちでしょ!ヒモのくせに!」
たしかに浮気した俺が悪い。
しかも、美羽に養ってもらっているヒモの分際で……
だが、浮気したのにはワケがあった。
「いつもいつも束縛されて、俺も辛かった。1時間おきにライン送れとか、美羽以外の連絡先消したりとか、おしっこしてるところ見せろとか——」
ブス!
俺の腹に、包丁が突き刺さった。
「うっ……」
俺は床に倒れた。
めっちゃくちゃ痛え……
「大丈夫だよ。圭介。私もすぐに行くから……」
◇◇◇
「ここはどこだ……?」
一面真っ白の世界。
もしかして、これが死後の世界?
……生前はヤンデレやメンヘラに振り回される人生だった。
友達から「ヤンデレ吸引器」と呼ばれ、付き合う女子はみんな病んでいた。
なぜか「あなたは働かなくていいから」と言われ、強引に養ってくれるのだった。
そんなヒモの俺が、ヤンデレに刺されて死ぬとはな。
まあ……俺にふさわしい死に方だった。
「圭介よ。起きなさい」
白いローブを着た女性が立っていた。
とんがった耳に、ブロンドの髪と青い瞳。
もしかして……エルフ?
「いいえ。エルフではありません。女神のイシスです」
「おわ!なんでわかった!」
「女神はなんでもわかりますから」
どうやら目の前の女性は、女神様らしい。
やっぱりここは天国か……
「いいえ。天国ではありません。あなたは今から異世界へ行くのです」
「ああ、そうか。これから転生して異世界ファンタジーの始まりってやつか」
「まあ、そういうことです。今からあなたにスキルを授けます」
ここでどんなスキルを授かるかで、異世界生活の難易度が違ってくるんだろ?
このガチャに、なんとしても勝ちたい……
「うふふ。強いスキルがほしいのですね。特別にあなたには、チート級のスキルを授けましょう」
「マジで?」
「ええ、大マジです。あなたを気に入りました。特に顔が好きです」
俺の顔が好き……?
俺は典型的フツメンなのに。
本当にどこでにもいる、平凡な男のはずだが。
「無自覚系なのね!ますます気に入りました。普通ならナルシストになるところが、あなたは謙虚なのですね」
「あ、ありがとうございます……」
何を言っているのか全然わからん。
女神だから人間の理解を超えているんだろう。
「あなたに、全スキル解放コードを授けます。このスキルは、異世界に存在する全部のスキルを使うことができます」
「それって……」
「最強ってことです」
「よっしゃ!」
異世界に転生して、チートスキルを授かる。
無双しまくって、美少女とハーレム。
すげえワクワクする!
「早く異世界へ行きたそうですね」
「はい!」
「行ってらっしゃい♡」
異世界生活を満喫するぜ!
……しかしこの後、思いもよらない出来事が俺を待ち受けていた。
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